アンケート・面接調査での適正なデータ収集方法とは?
臨床現場での疑問を出発点に研究発表まで,初めて研究にトライする人でも具体的な方法が楽しくわかりやすく学べる.
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目次
CONTENTS
著者プロフィール
はじめに
研究ってどうやって行うの?
第Ⅰ章 研究目的を設定しよう!
A 問題意識の持ち方と問題提起の方法
臨床現場で直面している問題は?/問題の解決にどのような調査が必要?
B 先行研究を調べてみよう!
系統的レビューとは?/叙述的レビューとは?/データベースを利用した文献検索法
C 文献検索結果を表にまとめよう!
表にまとめる利点とは?/Excelを利用してまとめる方法
D 研究意義を明確に!
研究意義とは?/先行研究の結果から問題を解決できるかどうかの判断とその根拠/先行研究の結果から問題を解決できない場合
E 研究目的も明確に!
先行研究からわからなかったことに的を絞って仮説を立てる場合/先行研究がない場合
第Ⅱ章 量的研究・質的研究 どちらを選ぶ?
量的研究と質的研究の違いは?/それぞれの手法が目指すところとは?/それぞれの手法のメリット・デメリット/量的研究と質的研究の関係/量的研究と質的研究のどちらを選ぶかの基準
第Ⅲ章 研究計画書を作成しよう!
A どうして研究計画書を作成するの?
B 研究計画書に含むべき項目
研究デザイン/調査対象者/データの集積方法/予定している統計解析・質的分析法/調査対象者数はどれくらい必要か?/事務局を設置するか?/調査員・スタッフの確保をどうするか?/謝金の有無と支払い法/調査研究時および終了後のデータの扱い方
C 倫理委員会への申請・審査・承認とインフォームド・コンセントは必要?
第Ⅳ章 アンケート・面接調査で使う質問紙・インタビューガイドを作成しよう!
A 質問紙・インタビューガイド作成の前に理解しておきたいポイント
回答者の心のなかと質問紙上の回答は全く一緒なのかを知るために〜古典的テスト理論〜/より質の高い質問紙作成のために〜心理統計学的特性〜/正確に答えてもらうために〜社会的望ましさ〜
B アンケート調査で使う質問紙を作成しよう!
何を明らかにしたいのかを明確に!/明らかにしたい事項の「概念」を定義づけよう!/質問文を作成しよう!/質問形式を決めよう!〜効果的な質問形式を選ぶには〜/回答形式を決めよう!〜単一項目にする? 複数項目にする?〜/回答の選択肢の表記方法を設定しよう!/複数の質問文を作成しよう!/質問項目の順番を決めよう!/記入例を作成しよう!/回答記入法の説明文を作成しよう!/パイロットテストを実施しよう!
C 面接調査で使うインタビューガイドを作成しよう!
何を明らかにしたいか?/質問文を作成しよう!/質問形式を決めよう!〜効果的な質問形式を選ぶには〜/質問文の順番を決めよう!/面接形態とインタビューガイド/実際のインタビューガイドの例/パイロットテストを実施しよう!
第Ⅴ章 実際にアンケート・面接調査をしてみよう!
A アンケート調査の流れ・ポイント
調査の手順/注意すべきポイント
B 面接調査の流れ・ポイント
調査の手順/注意すべきポイント
第Ⅵ章 回答結果(データ)を整理しよう!
A アンケート調査から得られた回答の整理法
データのエラーチェックをしよう!
B 面接調査から得られた回答の整理法
テープ起こしをしよう!/コーディングを行おう!/コーディング単位を決定しよう!/実際にコーディングを行ってみよう!/分析過程・分析結果の管理・保存法
第Ⅶ章 結果を統計解析・質的分析してみよう!
A アンケート調査を行った場合 → 統計解析を行おう!
統計解析は何のために行うの?/統計解析の行い方〜いろいろな統計解析の紹介〜/解析結果を解釈しよう!/統計ソフトを活用しよう!
B 面接調査を行った場合 → 質的分析を行おう!
質的分析は何のために行うの?/質的分析の行い方 /分析結果の信頼性を高めるためには/質的分析を解釈しよう!/分析ソフトを活用しよう!
第Ⅷ章 研究を発表しよう!
A 学会で口頭発表しよう!
スライドをつくろう!/どのように話すとよいか?/質疑への答え方
B 学会でポスター発表しよう!
効果的なポスターのつくり方/どのように話すとよいか?/質疑への答え方
C 論文を投稿しよう!
投稿雑誌を選ぼう!/雑誌の投稿規定を確認しよう!/論文の書き方と基本構造は?/その他の留意点
D 研究協力者への報告
付 録
1 研究協力の依頼文(見本:郵送調査用)
2 同意書(見本:録音記録する面接調査用)
3 質問紙見本
4 逐語録(見本:個人面接)
MEMO
レビューを執筆するときの利点
メタアナリシスとは?
「どちらが科学的?」論争とは?
「研究結果を評価する指標は共通か?」論争とは?
重複して分析してはだめ!〜排反の法則〜
どうなったら新情報が得られなくなる?〜飽和の法則〜
ポスター(A4サイズ)は複数用意しよう!
COLUMN
研究助成金を得る方法〜申請しないでむしろ共同研究者,研究協力者になる〜
全く根拠のない有意水準(significance level)のp<0.05
INDEX
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序文
■ はじめに ■
看護・医療分野では日常的にアンケート調査研究が行われています.大規模な面接調査研究はそれほど多くありませんが,小規模な面接調査研究は決して少なくありません.今後,このようなアンケート・面接調査研究がますます増えていくことが予想されます.
しかし,この分野でのアンケートや面接調査研究の進め方に関する指南書,マニュアルは意外と少ないのです.このような調査研究を始めるにあたって,きちんと科学的に行おうとしても参照する専門書が見あたらず,多くのアンケート調査はすでに行われたものを参考に,見よう見まねで行われているのが現状です.このため,せっかくの研究が質の低いものとなってしまっているのをよく目にします.「少しの手引き,助言があればとてもよい研究になるのに」と,そのたびにとても惜しく思っていました.そこで,看護・保健あるいは社会科学分野の研究をこれから始めようとされている医療・保健・福祉従事者,若手研究者,学生向けに入門書があればという思いから生まれたのが本書です.すでに調査研究の経験をある程度積まれた方にも補習として役立つよう配慮しました.
本書の構成に沿って読み進めていただくと,研究の流れが把握でき,そのまま実行に移せる仕組みになっています.現場での疑問の種を育て研究テーマを見つけだすことから始まり,それを研究可能な形にする準備段階,続いてデータ収集,データ整理と解析を行う実施段階,そして研究成果の発表を行う最終段階までを解説しました.ある程度経験のある方は各段階を個別に参照することも可能です.
駆け足での解説という感もありますが,専門的な詳細部分は各章末にあげた参考文献を参照していただくことにして,本書では各段階でのポイントに焦点を絞りました.初学者向けということで,できるだけ専門用語の使用は避けるよう努めましたが,どうしても必要あるいは内容が難しい箇所には側注で説明を加え,読みやすさに配慮しました.また,研究過程がイメージしやすいように図や画像を活用しています.
そして,本書の際だった特徴は,量的研究と質的研究の両手法を比較できるよう工夫したこと,筆者らが実際に使用した質問紙・インタビューガイドを示してその作成方法について詳細に解説したこと,実際に使用した調査依頼文,同意書,質問紙,面接調査で得たデータを付録として収めたこと,データ整理や統計解析および結果解釈をするうえで見落とされやすい注意点に言及したことです.
初学者向けとはいえ,本書には筆者らが実際に行った大規模および小規模のアンケート調査研究と面接調査研究を通じて得たノウハウが詰め込まれています.皆さんにとって本書が研究との出会いになり,またさらなる発展の礎になりましたら,筆者としてはこの上ない幸せです.
2010年11月
土屋 雅子
齋藤 友博
研究ってどうやって行うの?
はじめに,“臨床現場での皆さんの疑問をどのように膨らませて研究テーマを見つけていくのか”という研究の第一歩から“研究成果の発表”までのプロセスをフローチャートで紹介します.
研究の準備段階として,第Ⅰ章で,臨床現場での皆さんの疑問をどのように膨らませて研究テーマを探しだすのか,過去に行われている研究の調べ方,皆さんの研究テーマおよび研究の意義とは何か,研究目的設定の仕方などを紹介します.そして,第Ⅱ章では,研究目的にみあった研究手法の選び方について述べます.第Ⅲ章では,皆さんが設定した研究目的を実行可能な形へと変換させる,研究計画書の作成についてふれます.そのなかで,研究デザインの選び方,調査対象者の選定の仕方,データ集積方法(アンケート調査や面接調査),倫理的配慮など,どのような項目を事前に決定する必要があるのか,またそれらを決定するための必要な知識について学びます.また,第Ⅳ章では本書の副題にもなっています,調査道具としての「質問紙」「インタビューガイド」の作成方法について詳しく紹介します.そして,実際に調査を実施するにあたり用意すべき書類(研究協力の依頼文,同意書,質問紙)の見本を付録1~3に載せてあります.
調査実施段階として,第Ⅴ章では,アンケート調査・面接調査を行う際の注意事項をあげてあります.
調査結果をまとめる段階として,第Ⅵ章では,収集したデータの整理法(数量化データ・文字テキストデータ)について,付録3・4に掲載されている質問紙の見本・逐語録の見本を使用して解説しています.そして,第Ⅶ章では,数量化データ・文字テキストデータを分析・解釈するにあたっての注意点を述べています.最後に,第Ⅷ章では,皆さんの研究成果の発表の場を学会発表・論文発表に分け,それぞれのポイントをまとめました.さらに調査対象者への報告についても言及しています.
本書は研究立案から結果発表までを順を追って説明しています.はじめから最後まで目を通して,全体の流れを見てもいいですし,皆さんが必要な章・節を集中的に読んでもよいでしょう.