糖尿病専門医を志す後期研修医を対象に,マスターすべき糖尿病の知識はもちろん,医師としての心構えや患者,スタッフとのコミュニケーション,各種書類の書き方まで,臨床現場で役立つ169のエッセンスをまとめた.また,医師の経験談やアドバイスをコラムとして69本収録.専門医のカリキュラムも参考に最新の情報を盛り込み、4年ぶりに全面改訂.
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目次
第1章 糖尿病研修でのアドバイス
A これから糖尿病科医を目指すひとに
1.糖尿病科医・専門医を目指す若手医師へのメッセージ 門脇 孝
2.糖尿病専門医を志す医師に求められる力 黒瀬 健,清野 裕
B 糖尿病研修の概要
糖尿病専門医への道 柴 輝男
C 勉強のしかた
1.役立つホームページ・文献検索 浜野久美子
2.論文の読み方・書き方 寺内康夫
3.糖尿病学会に入ろう 植木浩二郎,鈴木 亮
4.内科認定医・専門医取得のための症例報告,剖検,手術報告 蔵野 信
5.糖尿病専門医にとって研究とは何か 戸邉一之
6.倫理行動規範 山内敏正,鈴木 亮,植木浩二郎,門脇 孝
7.女性医師への支援プログラム 藤城 緑
D 医療現場でのコミュニケーション
1.医療面接と医師のとるべき態度 花房俊昭
2.外来診療 花房俊昭
3.インフォームド・コンセント 原 一雄
4.地域連携 林 道夫
5.他科との連携 佐倉 宏
6.チーム医療 関根里恵,窪田直人
7.パス(クリニカルパス) 三谷康二,貴田岡正史
E 糖尿病における医師と医療スタッフの関係
1.医療スタッフとの関係 中村直登
2.管理栄養士による指導 津田謹輔
3.糖尿病療養指導士 小泉順二
第2章 糖尿病とは
A 糖尿病の疾患概念と病態
1.糖尿病の定義 松井久未子,谷澤幸生
2.診断基準 伊藤千賀子
3.血糖調節機構 藤本新平,稲垣暢也
4.糖毒性 野見山 崇,河盛隆造
5.糖尿病と脂質代謝異常 羽田裕亮,山内敏正,門脇 孝
B 糖尿病の疫学
1.糖尿病の発症率と有病率 森本 彩,田嶼尚子
2.糖尿病合併症の定義・分類・疫学 羽田勝計
3.糖尿病患者の死因と死亡率 中村二郎
4.重要な大規模臨床研究 高橋 友乃,小田原雅人
5.糖尿病対策の現状 南川一夫,春日雅人
C 糖尿病・糖代謝異常の成因と分類
1.1型糖尿病 及川洋一,島田 朗
2.2型糖尿病 諏訪哲也,堀川幸男,武田 純
3.二次性糖尿病(その他特定の機序,疾患によるもの) 池上博司
4.遺伝子異常による糖尿病 古田浩人,南條輝志男
5.糖尿病遺伝子の(遺伝因子)同定の方法,その結果の解釈 安田和基
6.妊娠糖尿病(GDM) 佐中眞由実
7.低血糖症 鈴木 亮
8.清涼飲料水ケトーシス 山田研太郎
D 生活習慣病における位置づけ
1.生活習慣病としての糖尿病 植木浩二郎,鈴木 亮
2.境界型・IGTの取り扱い 河津捷二
E その他の糖代謝異常
その他の糖代謝異常 岩橋博見,下村伊一郎
第3章 検 査
1.血糖値・糖負荷試験,持続血糖モニター 柱本 満
2.インスリン 長坂昌一郎
3.Cペプチド(血清,尿) 戸邉一之
4.プロインスリン 池上博司
5.グルカゴン 河盛 段
6.ヘモグロビンA1c(HbA1c) 桑 克彦
7.グリコアルブミン 絵本正憲
8.1,5-アンヒドログルシトール 松久宗英
9.クレアチニン,eGFR, シスタチンC 北田宗弘,古家大祐
10.血清脂質,リポ蛋白 菅野洋子
11.インスリン自己抗体 及川洋一,島田 朗
12.GAD抗体 芳川篤志,今川彰久
13.インスリン受容体抗体 堀江一郎
14.IA-2抗体,ZnT8抗体,その他の抗体 阿比留教生
15.血中ケトン体,尿中ケトン体 鴫山文華,弘世貴久
16.尿糖検査 藤田直也,田中祐司
17.尿蛋白,尿中アルブミン,その他の尿パラメータ,尿沈渣 四方賢一,小寺 亮
18.アルギニン負荷試験 金澤昭雄
19.インスリン感受性の評価 松田昌文
20.生理学的検査の活用 片上直人
21.糖尿病の画像診断 山崎義光
第4章 治 療
A 治療方法の概要
■初診時の治療方針の立て方 出雲博子
B 食事療法
1.食事療法の理論 羽倉稜子
2.総エネルギー・各栄養素の設定 羽倉稜子
3.食品交換表の活用 本田佳子
4.合併症の食事療法 本田佳子
5.カーボカウント 津田謹輔
C 運動療法
1.運動の理論 佐藤文彦,田村好史,河盛隆造
2.運動療法の指導法 佐藤文彦,田村好史,河盛隆造
D 薬物療法(経口糖尿病薬)
1.経口薬の選択法 出雲博子
2.ビグアナイド薬 根本憲一
3.インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬) 浦風雅春,戸邉一之
4.DPP-4阻害薬 原田範雄,稲垣暢也
5.インスリン分泌促進薬(SU薬,グリニド系薬) 大杉 満
6.α-グルコシダーゼ阻害薬 鴫山文華,弘世貴久
7.選択的SGLT2阻害薬 戸邉一之
8.肥満症治療薬 宮崎 滋
9.民間療法とその問題点 宮川高一
E インクレチン関連注射薬
■GLP-1受容体作動薬 石川素子,山田祐一郎
F インスリンによる治療
1.インスリン療法の適応 大杉 満
2.血糖自己測定 平田昭彦,富永真琴
3.インスリン製剤の種類と特徴 松田昌文
4.インスリン治療の外来導入および管理 出雲博子
5.入院中のインスリン療法 渡邉隆宏,綿田裕孝
6.CSII療法 波多野 恵,川村智行
第5章 合併症の治療と管理
A急性合併症
1.糖尿病ケトアシドーシス 東 宏一郎,丸山太郎
2.高浸透圧高血糖症候群 加藤 研
3.治療に伴う低血糖 小杉圭右
4.乳酸アシドーシス 野村 誠
B慢性合併症
1.網膜症(内科) 柴 輝男
2.網膜症(眼科) 佐藤幸裕
3.腎症(糖尿病内科) 赤井裕輝
4.腎症(腎臓内科) 椿原美治
5.神経障害(自律神経) 馬場正之
6.神経障害(末梢神経) 中島英太郎
7.糖尿病足病変とフットケア 河野茂夫
8.大血管障害(脳) 福永隆三
9.大血管障害(心臓) 知久正明,平山篤志
10.感染症 児玉憲一,江川克哉
11.肥満症 南 勲,小川佳宏
12.高血圧 濱田真宏,今西政仁
13.脂質異常症(成因・分類・診断) 岡崎啓明,高瀬 暁,平 美乃
14.脂質異常症(治療) 高原典子
15.NASH,NAFLD 太田嗣人
16.認知症 井口登與志
17.骨病変 細井雅之
18.歯周病 成瀬桂子
第6章 特別な配慮を必要とするケース
A 糖尿病と妊娠
1.糖尿病患者の妊娠について 穴澤園子
2.糖尿病合併妊娠中の管理 佐中眞由実
3.周産期の児合併症と血糖管理 杉山 隆,出雲博子
B 小児糖尿病
1.小児1型糖尿病 杉原茂孝
2.小児2型糖尿病 浦上達彦
3.合併症 高谷竜三
4.生活指導 波多野 恵,川村智行
5. 患児・家族への支援 武田 倬
C 高齢者糖尿病
1.高齢者糖尿病の特徴 荒木 厚
2.高齢者糖尿病の治療の目標 中野博司
3.高齢者糖尿病の治療における留意点 吉井秀徳
D 特殊な病態における糖尿病治療
1.外科手術,ICUでの管理 根本昌実,佐々木 敬
2.高カロリー輸液,経管栄養 松谷 朗
3.心筋梗塞 柳澤克之
4.重篤な感染症 松岡 孝
5.副腎皮質ホルモン投与 松木道裕
6.シックデイ(sick day) 吉岡成人
7.肝疾患 竹下有美枝,篁 俊成
8.膵疾患 田尻祐司
9.胃切除 加藤浩之,田中 逸
10.悪性腫瘍における血糖管理 林 道夫
11.増殖網膜症における血糖管理 宮田 哲
12.腎不全における血糖管理 森川秋月
13.神経障害における血糖管理 寺田雅彦
14.認知障害,精神疾患における血糖管理 河村孝彦
15.災害時の糖尿病治療 佐藤 譲
第7章 患者教育と患者との関わり方
A 患者教育
1.予防医学と健康管理 福島光夫,稲垣暢也,谷口 中,清野 裕
2.患者教育の目的と重要性 朝比奈崇介
3.尿糖・血糖自己測定 的場圭一郎,宇都宮一典
4.糖尿病教室 黒瀬 健
5.小児糖尿病キャンプ 高池浩子,内潟安子
B 糖尿病患者の心理的問題へのアプローチ
1.糖尿病科医にとっての心理行動学的アプローチの意義と重要性 石井 均
2.1型糖尿病の心理的問題 出雲博子
3.重症低血糖の心理的問題 出雲博子
4.重症合併症の心理的問題 石井 均
5.精神科疾患の合併 伊集院 将
6.糖尿病の遺伝カウンセリング 原 一雄
第8章 知っておくべき知識と制度
1.医師と法律 古川俊治
2.個人情報保護 松井健志
3.リスクマネジメント 河野龍太郎
4.医療保険制度 松本義幸
5.院内感染対策 朝野和典
6.糖尿病診療に関わる諸制度 佐倉 宏
7.糖尿病のある生活に関わる諸課題 武田 倬
8.各種団体との関係 黒瀬 健
第9章 医療文書の書き方
1.診療録(カルテ) 花房俊昭
2.電子カルテ 宮崎睦子,谷澤幸生
3.処方せん 宮崎睦子,谷澤幸生
4.指示せん 宮崎睦子,谷澤幸生
5.食事せん 宮崎睦子,谷澤幸生
6.説明書・同意書,入院診療計画書 宮崎睦子,谷澤幸生
7.診断書 吉岡成人
8.紹介状(診療情報提供書) 吉岡成人
9.紹介医師への返信 吉岡成人
10.英文診断書・紹介状 大杉 満
11.退院サマリー 田中治彦
12.死亡診断書 勝山修行,大杉 満
付 録
1.最新の糖尿病研究1(エピゲノム研究) 脇 裕典,山内敏正,門脇 孝
2.最新の糖尿病研究2(膵・膵島移植) 豊田健太郎,稲垣暢也
3.糖尿病の治療薬(カラー) 尾崎淳子,松原和夫
4.インスリン注射・血糖自己測定の実際―図解― 渥美義仁
索 引
和文索引
欧文索引
◆Column
世界の糖尿病学会 鈴木 亮
内科認定医の更新 蔵野 信
虚弱(Frailty):高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が増し,
Adverse Health Outcome(障害,施設入所,死亡)を起こしやすい状態 林 道夫
最初に診察した医師が患者の運命を大きく変える 佐倉 宏
地域で独自に認定している糖尿病認定指導士(LCDE) 小泉順二
エンパワーメント 小泉順二
連携と顔のみえるコミュ二ケーションの重要性 小泉順二
糖毒性は火事 野見山 崇 ,河盛隆造
有病率・発症率とは 森本 彩,田嶼尚子
Tokyo Study 及川洋一,島田 朗
「遺伝カウンセリング」のいま 安田和基
POCT血糖測定器 柱本 満
自動車運転と低血糖 鈴木 亮
インスリノーマの鑑別診断 長坂昌一郎
グリコアルブミン(GA)とHbA1cの換算式 絵本正憲
1÷血清クレアチニン値(1/Cr)の変化の視覚化 北田宗弘,古家大祐
糖尿病におけるグルカゴン分泌異常の機序 河盛 段
インスリン自己抗体の陽性率 及川洋一,島田 朗
血中グルカゴン測定のワークフロー 河盛 段
グルカゴノーマ(グルカゴン産生腫瘍) 河盛 段
インスリンとグルカゴンとの関係 河盛 段
尿糖検査の勧め方 藤田直也,田中祐司
膵β細胞の機能評価方法 金澤昭雄
インスリンクランプ法で糖代謝の推計 松田昌文
Matsuda Indexの計算方法 松田昌文
インスリンの1単位 松田昌文
ischemic preconditioning 大杉 満
α-GIを飲み忘れたら... 鴫山文華,弘世貴久
民間療法を信じて治療を中断し,合併症に至った痛恨の1例 宮川高一
アメリカにおける糖尿病専門医のトレーニング 出雲博子
HHSとDKAの比較と違い 東 宏一郎,丸山太郎
DKAのまぎらわしい血液検査所見 東 宏一郎,丸山太郎
ケトアシドーシスの鑑別所見 東 宏一郎,丸山太郎
低血糖昏睡による救急患者 小杉圭右
夜間低血糖 小杉圭右
きっかけ:最初の寛解例 赤井祐輝
「自覚症状がないから眼科受診は不要」は非常に危険! 佐藤幸裕
足の観察の重要性 馬場正之
病気を憎んで人を憎まず 濱田真宏,今西政仁
知っておいてほしい脳梗塞の話題:NVAF vs NOAC 福永隆三
SGLT2阻害薬と尿路感染症と性器感染症 児玉憲一,江川克哉
治療薬と体重 南 勲
家庭血圧の測定 濱田真宏,今西政仁
コンコーダンスとアドヒアランス 濱田真宏,今西政仁
若年のFH(ヘテロ接合体)の診断はむずかしい 岡崎啓明,高瀬 暁,平 美乃
糖尿病治療薬と骨折のメタ解析 細井雅之
劇症1型糖尿病と妊娠 杉山 隆
小児糖尿病患児の会 杉原茂孝
『小学校4年生の自閉症の娘がサマーキャンプに参加しました!』 武田 倬
1型糖尿病のインスリン療法とカーボカウント 波多野 恵,川村智行
手術前後にはSGLT2阻害薬を中止しよう 根本昌実,佐々木 敬
スライディングスケール 松谷 朗
血糖コントロールの開始時期 柳澤克之
糖尿病と膵癌 田尻祐司
血糖上昇係数 加藤浩之,田中 逸
血糖コントロール指標としてのHbA1c 宮田 哲
内科-眼科間の連携ツール 宮田 哲
ManualとArt 森川秋月
PDCAサイクル 朝比奈崇介
OGTTが推奨される場合 福島光夫
血糖自己測定(SMBG)の歴史 的場圭一郎,宇都宮一典
糖尿病教室の重要性の認識 黒瀬 健
診療報酬の影響 松本義幸
糖尿病と認知症 佐倉 宏
信頼関係を築くことが大事 武田 倬
匿名化と同意の関係 松井健志
Problem List(問題リスト)作成の原則 花房俊昭
最高の食事療法 宮崎睦子,谷澤幸生
糖尿病食の例 宮崎睦子,谷澤幸生
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序文
シリーズ総監修の序
「研修ノート」は,下記「研修医ノート」シリーズを全面的に刷新し,新シリーズとし
て刊行するものである.
旧シリーズ「研修医ノート」は内科研修医のためのテキストとして1993年に出版された.
その後,循環器,産婦人科,小児科,呼吸器,消化器,皮膚科など,診療科別に「研修医
ノート」が相次いで刊行された.いずれも一般のマニュアルとは異なり,「手技の基礎」だ
けではなく「医師としての心得」や「患者とのコミュニケーション」などの基本,あるい
は「書類の書き方」,「保険制度」など,重要な事項でありながら平素は学ぶ機会の少ない
事項を取り上げ,卒後間もない若手医師のための指導書として好評を博してきた.
しかしながら,時代の変化により研修医に要求される内容は大きく変化した.”医療崩壊”
が社会問題となるなかで,研修教育の充実はますます重要となりつつある.さらに医療へ
の信頼回復や医療安全のためには,患者やスタッフとのコミュニケーションの改善が必須
であることはいうまでもない.
このような状況に鑑み,「研修医ノート」シリーズのあり方を再検討し,「研修ノート」
の名のもとに,新シリーズとして刊行することとした.読者対象は後期研修医とし,専門
分野の決定後に直面するさまざまな問題に対する考え方と対応を示すことにより,医師と
して歩んでいくうえでの”道標”となることを目的としている.
本シリーズでは,全人的教育に必要な「医の基本」を記述すること,最新の知見を十分
に反映し,若い読者向けに視覚的情報を増やしつつも,分量はコンパクトとした.編集・
執筆に当たっては,後期研修医の実態に即して,必要かつ不可欠な内容を盛り込んでいた
だくようお願いした.”全国の若手医師の必読書”として,本シリーズが,長く読み継がれ
ることを願っている.
終わりにご執筆いただいた諸先生に心より感謝を申し上げます.
2014年10月吉日
自治医科大学学長
永井良三
編集の序
「研修医ノート」は1993年以来,内科研修医のためのテキストとして診療科別に企画・
出版され多くの研修医に読み継がれております.永井良三先生の監修のもと2009年に新た
に生まれ変わった「研修ノートシリーズ」に,2010年「糖尿病研修ノート」を上梓しまし
た.
現在,わが国の糖尿病患者数は約950万人,予備群は約1,050万人であわせて約2,100
万人といわれており,有病者数は戦後で30倍以上に増加しています.合併症までも含めた
社会的影響の大きさを考えれば,糖尿病診療の向上は,ますます重要かつ社会的責務とな
っているといえます.
本書のおもな読者層である後期研修医に必要な内容と,知っておくべき知識は何か,そ
れは「現場に即した内容」=「実践の手引き」に他なりません.糖尿病診療に携わる医師に
とって必要不可欠な能力の一つは,まず「患者とのコミュニケーション技術」です.患者
自身の生活改善が治療の重要な部分を占めるため,医師の技術や知識に加えて,患者を的
確に動機付けすることのできる幅広い人間性とコミュニケーション技術が,スキルとして
要求されるのです.
また,さらに糖尿病診療で欠かせないのが,他科や医療スタッフとの「多職種連携」=「チ
ーム医療」です.病院の診療システム全体や,他科の知識レベルと診療の実際を踏まえ,
さらに看護師・栄養士・糖尿病療養指導士など多くの医療スタッフの業務の現場を考慮し
た上での円滑な多職種のコミュニケーションが必要とされます.
そして糖尿病診療に最も特徴的な点は,その急速な「進歩」です.糖尿病の成因の解明
や根本治療,予防法開発に向けて,常日頃から最新情報に広くアンテナをはっておくこと
が重要となります.
本改訂版では,この4年間の糖尿病診療にかかわる進歩を取り込み,アップデートを行
いました.いくつかの例をあげれば,HbA1cの国際標準化,糖尿病の治療目標の改訂,糖
尿病腎症病期分類の改訂,SGLT2阻害薬や新しいインスリン,GLP?1受容体製剤の登場,
専門医制度改革,そして研究倫理についての日本糖尿病学会の倫理行動規範の策定などで
す.
本書には,現場に即した先輩の具体的なアドバイスが細部にわたって掲載されています.
編集陣には,糖尿病診療の分野で活躍する臨床家であり教育者・研究者でもある優秀な先
生方を,また執筆陣には,全国的にも実績のある臨床施設でご活躍の先生方をお迎えしま
した.ご多忙の折,誠にありがとうございました.この場をお借りして深謝申し上げます.
本書がより多くの若い医師の助けとなり,医師としての見識と技術を涵養する糧となる
こと,そしてこれからの糖尿病診療に多くの志ある方々が加わってくれることを祈ってや
みません.
2014年10月吉日
編集者を代表して
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授
門脇 孝