大好評書籍の改訂第3版.現在一番のトピックスである甲状腺機能低下症と妊娠の項を追加してさらに充実!本書は研修医・実地医家のための甲状腺疾患診療ガイドブックとして2004年に旧版が出版されて以降エビデンスの充実を図り,甲状腺を専門にしていない実地医家だけでなく内分泌専門医を目指す医師にも必読の1冊に.「診断フローチャート」や「患者さんに説明するためのリーフレット」など,現場で役立つエッセンスを満載!
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目次
第1章 診 断
I 甲状腺疾患を見逃さないように
1 診察の際には,甲状腺の触診を行う
2 甲状腺機能異常の症状,所見から疑う
3 説明のつかない一般検査値の異常をみたときに疑う
4 甲状腺機能異常をスクリーニングしておきたいときは,TSHの測定を行う
Evidence 1 一般外来で見逃してはいけない甲状腺疾患の頻度
Evidence 2 TSHが正常範囲にあれば甲状腺機能は正常としても問題はないか
Memo 1 バセドウ病患者の初発症状は性と年齢で異なる
Memo 2 甲状腺機能低下症患者が病院を受診する理由
Memo 3 一般外来で甲状腺機能異常を発見するきっかけとなった症状,所見
第2章 鑑別診断
I 甲状腺疾患を疑ったときのアプローチ
(甲状腺疾患 診断フローチャート)
Evidence 1 診断フローチャートが簡単でよい理由は?
Memo 1 甲状腺腫の性状を知るために甲状腺超音波検査を施行したほうがよい理由は?
II TSH感度以下,FT4高値あるいは正常の場合
Evidence 1 TSH受容体抗体(TRAb)の選び方と読み方
Evidence 2 尿中ヨード排泄量測定によるバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別
Evidence 3 血中FT3/FT4比によるバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別
Memo 1 バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別のポイント
Memo 2 バセドウ病と妊娠性甲状腺機能亢進症の鑑別のポイント
III TSH高値,FT4低値あるいは正常の場合
Evidence 1 抗甲状腺抗体が陽性であれば橋本病といえるのか
Evidence 2 橋本病診断のためにはどの抗体を選べばよいか
Memo 1 橋本病とその診断基準
IV TSH正常,FT4正常の場合
Evidence 1 腫瘍性疾患の診断は超音波検査と穿刺吸引細胞診で十分か
Memo 1 腺腫様甲状腺腫とは?
V 診断フローチャートにあてはまらない場合,TSHとFT4に乖離がみられた場合
Memo 1 小児と妊娠中のFT3,FT4,TSH値
Memo 2 測定系に干渉する物質の有無についての検索法
Memo 3 SITSH:診断の進め方
VI 甲状腺に“疼痛”がある場合
VII 甲状腺機能検査に異常はあるが,甲状腺疾患が見つからない場合
― NTIではないか,薬物の影響ではないか ―
Memo 1 様々なNTIにおける血中甲状腺ホルモン値の変動
Memo 2 甲状腺ホルモン値に変動を与える可能性のある薬物
第3章 治 療
I バセドウ病/甲状腺機能亢進症
A バセドウ病患者を診たときどう考えるか
Memo 1 三大治療法の比較
B 緊急を要する例(クリーゼを含む)の治療
C 抗甲状腺薬治療
Evidence 1 投与期間と再発率の関係
Evidence 2 ATD治療開始後6カ月のTRAbとバセドウ病の予後との関係
Evidence 3 治療中止時期決定に関する考え方とTRAbの有用性
Evidence 4 ATD中止後甲状腺ホルモンの上昇をみたときバセドウ病の再発か
一過性甲状腺中毒症かの鑑別におけるTRAb測定の有用性
Evidence 5 ATD治療2年間で中止の目安に入ったものと入らなかったものの予後
Memo 1 ATDの選択
Memo 2 ATDの初期投与量
Memo 3 ATDの投与量調節のコツ
Memo 4 ATDとT4製剤の併用(block and replace)療法
Memo 5 なかなか寛解しない患者さんをみたときは,ストレスやうつに注意
D 抗甲状腺薬で副作用が出た場合の対応
1 薬疹が出た場合
2 肝障害が出た場合
3 白血球が減少した場合
4 関節痛が起こった場合
5 発熱,紅斑,筋肉痛,紫斑,低血糖,咳嗽,呼吸困難,血尿,蛋白尿などの症状がある場合
6 その他
Memo 1 副作用と間違えられやすい症状
E 抗甲状腺薬を使用できない場合のバセドウ病の治療
Memo 1 ATDを使用できない患者でRI治療を選んだ場合,クリーゼ発症の危険は?
F アイソトープ治療,手術についてもっておくべき知識と適応
G アイソトープ治療
―機能低下を狙う場合,正常を狙う場合の実際の方法(目標別131I内用療法)―
Memo 1 131I投与量の決め方
Memo 2 RI治療前の注意事項
Memo 3 RI治療後の注意事項と再治療の時期
H 無機ヨード治療
Memo 1 バセドウ病に対する無機ヨード治療成績
I 妊娠,出産の管理
Memo 1 抗甲状腺薬(ATD)の催奇形性について
Memo 2 RI治療後,手術後の妊娠にみられる胎児甲状腺機能亢進症
Memo 3 妊娠を希望しているが,甲状腺機能のコントロールに大量のATDが必要な場合の治療方針
Memo 4 将来妊娠を希望するTRAb高値のバセドウ病患者に対するRI治療
― 胎児ないし新生児甲状腺機能亢進症について ―
II バセドウ病/眼症
Memo 1 MRIによる眼症の病態・活動性の評価
Memo 2 静脈内グルココルチコイド投与(ステロイドパルス療法),放射線治療法
Memo 3 眼瞼後退に対する点眼治療
Memo 4 眼症患者の甲状腺機能亢進症に対する治療
III 甲状腺機能低下症
Memo 1 適正投与量の決め方
Memo 2 甲状腺ホルモンの必要量に変化を与える物質や状態
Memo 3 阻害型抗体陽性の甲状腺機能低下症患者の妊娠に対する対応
Memo 4 粘液水腫性昏睡の治療
IV 潜在性甲状腺機能異常症
A 潜在性甲状腺機能低下症の診かた
Memo 1 潜在性甲状腺機能低下症(SCH)の診断は,年齢を考慮する必要がある
Memo 2 SCHの自然経過
Memo 3 SCHでは認知機能の低下など甲状腺機能低下症の症状は出るのか,また治療でよくなるのか
Memo 4 SCHを放置しておくと虚血性心疾患や心不全の発症が増えるのか
B 潜在性甲状腺機能亢進症の診かた
Memo 1 潜在性甲状腺機能亢進症の臨床的意義
V 橋本病
Memo 1 甲状腺機能正常の橋本病の予後
Memo 2 橋本病患者を経過観察するうえでの注意点
Memo 3 橋本病と妊娠で注意すべき点は
Memo 4 橋本病患者の経過観察はどのくらいの間隔で行えばよいか
Memo 5 妊娠中の甲状腺機能の管理目標
Memo 6 一過性甲状腺機能低下症と永続性甲状腺機能低下症の鑑別法
VI 甲状腺機能低下症,橋本病の妊娠前・妊娠中・産後の管理
Evidence 1 甲状腺機能低下症と児の精神機能発達
Evidence 2 潜在性甲状腺機能低下症と妊娠合併症,妊娠の転帰
Evidence 3 妊娠すると甲状腺ホルモンの必要量が増加する
Memo 1 甲状腺機能低下症のスクリーニングは必要か
Memo 2 スクリーニングに関して米国臨床内分泌学会,米国甲状腺学会の甲状腺機能低下症ガイドラインでは
VII 無痛性甲状腺炎
VIII 亜急性甲状腺炎
Memo 1 患者さんへの説明
IX 単純性甲状腺腫
X 急性化膿性甲状腺炎
XI バセドウ病以外の甲状腺機能亢進症,機能性結節性甲状腺腫,妊娠性甲状腺機能亢進症
Memo 1 機能性結節性甲状腺腫の131I内用療法:ATDによる前治療の可否
XII SITSHを診たときの対応
XIII Nonthyroidal Illness(NTI)をどうするか
XIV 甲状腺に結節ができている場合
Memo 1 細胞診で鑑別困難(クラスIII)が出たときの考え方
Memo 2 甲状腺微小乳頭癌の考え方
Memo 3 甲状腺癌術後の経過観察の方法(再発の監視)
Memo 4 甲状腺癌術後の経過観察においてTSHはどのレベルにコントロールすべきか
第4章 検 査
I 甲状腺超音波検査
1 走査手順
2 検査の進め方
Memo 1 腫瘍の良性・悪性の判断基準
3 代表的な超音波像
4 カラードプラ
Evidence 1 カラードプラを併用した濾胞癌の診断
Evidence 2 カラードプラによるバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別
II 穿刺吸引細胞診
Memo 1 超音波ガイド下穿刺(交差法)のコツ
第5章 甲状腺疾患診断ガイドライン
I バセドウ病の診断ガイドライン2013
II 甲状腺機能低下症の診断ガイドライン2013
III 無痛性甲状腺炎の診断ガイドライン2013
IV 慢性甲状腺炎(橋本病)の診断ガイドライン2013
V 亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン2013
VI 粘液水腫性昏睡診断基準(3次案)
XII 『甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)』(2012年5月作成)
第6章 患者さんに説明するためのリーフレット
患者さんに説明するためのリーフレット
1 バセドウ病
2 橋本病,甲状腺機能低下症
3 結節性甲状腺腫
略語集
索 引
甲状腺疾患診断フローチャート(巻末とじこみ)
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序文
改訂第3版 序 文
甲状腺疾患診療の実践書を書き始めて10年,今回が3回目の改訂である.この本は,患者を目の前にした時の対応について,実際的な方法をできるだけわかりやすく書くことを目的としている.そして,一貫した流れで診療が行えるようにすることが読者にとって最も重要な点と考えて,すべての章を一人で書き上げてきた.お陰で想像をはるかに超える多くの先生方に読んでいただくことができ,感謝している.そのことをモチベーションに,今回はもう一度最初から徹底して見なおしをして改訂を行った.
パーフェクトガイド改訂第2版からわずか3年しか経っておらず,この間に甲状腺内科診療においては新薬も新しい検査法も出ていないにもかかわらず,書き終わってみて,よくこれだけ改訂するところがあったと驚いている.診療そのものに劇的な変化があったわけではないが,エビデンスが蓄積され,診断,治療に対するアプローチがより整理されてきたからであろう.
おもな改訂のポイントとその理由を表にまとめた.
改訂のポイント | 理由 |
甲状腺機能低下症と妊娠の項を新しく作成 | 妊娠を希望している患者では,ごく軽度の甲状腺機能低下症(TSHが基準値内でも2.5μU/mL以上のもの)が問題とされることが多く,現在の一番のトピックスである |
甲状腺結節を見たときの対応の仕方 | 日本甲状腺学会から甲状腺結節取扱いガイドラインが出されて,甲状腺の結節を見たときのアプローチが整理されてきた |
バセドウ病眼症の見方 | 欧米からガイドラインが発表され,日本甲状腺学会の考え方も整理されてきた |
潜在性甲状腺機能異常症を見たときの対応の仕方 | 非常に多くの論文が発表され,治療に関するエビデンスが蓄積されてきた |
穿刺吸引細胞診の実際の仕方 | すみれ甲状腺グループが試行錯誤して,現時点で最も実際的な方法をまとめてみた |