PT・OTのための
臨床実習で役立つリハビリテーション基本実技 PT版診断と治療社 | 書籍詳細:臨床実習で役立つリハビリテーション基本実技 PT版
川崎医療福祉大学 学長
椿原 彰夫 (つばはら あきお) 責任編集
川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科 教授
國安 勝司 (くにやす かつし) 編集
川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科 特任教授
渡邉 進(わたなべ すすむ) 編集
初版 B5判 並製 144頁 2016年10月25日発行
ISBN9784787822338
定価:2,750円(本体価格2,500円+税)冊
臨床実習で必要なPTの必須知識や施術のポイントを350点のイラストとともに見開き2ページで解説.現場でやるべきこと・やってはいけないことが一目で理解でき,学生や初学者にとってすぐに役立つ一冊.
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目次
発行によせて…椿原彰夫
はじめに…國安勝司
実習前の準備…渡邉 進
第1章 基本的運動療法
A 関節可動域運動
1 他動運動…石田 弘
2 筋の伸張…石田 弘
B 筋力増強運動
1 自動介助運動,自動運動…石田 弘
2 徒手抵抗運動…石田 弘
3 器具を用いた運動…石田 弘
4 等尺性運動…石田 弘
5 体重を利用した運動…石田 弘
C 各種治療体操
1 腰痛症…末廣忠延
2 五十肩…伊藤智崇
3 側彎症…伊藤智崇
4 脊椎圧迫骨折…伊藤智崇
第2章 疾患・障害別運動療法
A 運動器疾患
1 骨折
①運動療法の基礎…小原謙一
②大腿骨頸部骨折…小原謙一
③下腿骨骨折…小原謙一
④脊椎圧迫骨折…小原謙一
2 関節リウマチ
①運動療法…小原謙一
②ADL,環境…小原謙一
3 変形性関節症
①股関節…小原謙一
②膝関節…小原謙一
4 スポーツ障害
①前十字靱帯損傷…末廣忠延
②足関節捻挫…末廣忠延
5 末梢神経障害
①正中神経…高橋 尚
②腓骨神経…高橋 尚
B 脳障害
1 脳血管障害
①神経筋促通法…大坂 裕
②起居移乗動作…大坂 裕
③バランストレーニング…大坂 裕
④歩行…大坂 裕
⑤階段昇降…大坂 裕
⑥車イス駆動・ADL…大坂 裕
2 パーキンソン病…木村大輔
3 小脳性運動失調…木村大輔
C 脊髄損傷
1 対麻痺
①起居動作…國安勝司
②立位・歩行…國安勝司
2 四肢麻痺
①起居動作 肘伸展不能レベル…國安勝司
②起居動作 肘伸展可能レベル…國安勝司
D 小児疾患・障害
1 脳性麻痺
①痙直型…矢吹眞弓
②アテトーゼ型…矢吹眞弓
2 進行性筋ジストロフィー…矢吹眞弓
E 切断・義足
1 下腿切断
①下腿切断の理学療法…吉村洋輔
②下腿切断の義足…吉村洋輔
2 大腿切断
①大腿切断の理学療法…吉村洋輔
②大腿切断の義足…吉村洋輔
F 呼吸器疾患
1 慢性閉塞性肺疾患
①呼吸機能評価…千野根勝行
②呼吸理学療法…千野根勝行
2 周術期呼吸理学療法…千野根勝行
第3章 物理療法
A 温熱療法・寒冷療法
1 ホットパック…藤田大介
2 極超短波…藤田大介
3 超音波…藤田大介
4 コールドパック・アイスマッサージ…藤田大介
B 電気刺激
1 経皮的電気神経刺激(TENS)…伊藤智崇
2 治療的電気刺激(TES)…伊藤智崇
第4章 リスク管理
1 感染予防(標準予防策)…鈴木啓太
2 リハビリテーション中止基準…高橋 尚
3 その他疾患…千野根勝行
第5章 資料
1 評価法一覧…鈴木啓太
2 検査値・心電図…鈴木啓太
索引
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序文
発行によせて
わが国における「社会保障の2025年問題」を目前に控えて,地域包括ケアシステムをはじめとする高齢者対策が急務となっています.団塊の世代のすべてが後期高齢者となる2025年以降には,社会保障費の増大のみならず,認知症患者の増加や介護の担い手の不足,老老介護,孤独死,介護疲れによる自殺・殺人の問題が深刻化すると予想されています.後期高齢者の介護予防を達成する手段や,いかに自立支援を促進して介護量を減少させるかは,理学療法士・作業療法士の手に委ねられていると言っても過言ではありません.
リハビリテーションは,従来,医療から福祉への社会復帰の過程とされてきましたが,今や社会参加や機能維持,QOL(quality of life,生活の質)の向上を含む広い概念を包含することとなり,訪問リハビリテーションや通所リハビリテーション(デイケア)の重要性が提唱されるようになりました.しかし,急性期や回復期の医療におけるリハビリテーションが疎かにされると,満足な生活期を獲得することはできません.したがって,どの時期においても療法士の高い技量が求められています.
療法士を目指す学生に対してはリハビリテーションの基礎知識が重要との思いで,平成19年に「PT・OT・ST・ナースを目指す人のためのリハビリテーション総論」(椿原彰夫/編著,診断と治療社)の初版を発刊いたしました.リハビリテーションのアウトラインや基礎的な評価法・治療法は理解できると自負しておりますが,この教科書のみで療法士が機能訓練を実践することは不可能です.療法士には知識のみでなく,しっかりとした技術が必要で,学生時代の臨床実習が不可欠です.近年,実習期間中に患者さんに触れる機会を与えられなかったという学生の存在を耳にするようになりましたが,そのような学生が療法士の資格を取得したとしても機能訓練を担当する資格はありません.このような現象が生じた原因は定かではありませんが,実習のイメージを抱けない学生に患者さんを触らせることが危険であるとすれば,そのための教科書が必要となります.そんな思いで執筆されたのが本書です.イラストを見ることによって確実に臨床実習に馴染め,疑問を解決できるように配慮しています.本書は難解な文章を用いずに理解して頂けるように,視覚的にイメージすることをコンセプトとしています.それによって,臨床実習において容易に技術向上に結びつくことを目標としています.本書を片手に臨床実習に取り組み,それが多くの障害者や高齢者の力になれることを強く期待しています.
椿原彰夫
はじめに
昭和41年に理学療法士国家試験が施行され,現在,理学療法士免許取得者は12万人を超えています.養成校の数も全国で250校を超え,毎年1万人以上の理学療法士が誕生しています.養成課程は3年もしくは4年制であるため,4万人に近い学生が学校で,1万人以上が臨床現場で教育を受けています.このような状況のため,学生向けの基礎科目,専門科目に関連した書籍が最近数多く発刊されています.しかし,それらの数多くの書籍を前にすると学生はどの本を読んだらいいのかと迷っているのも現状です.また,医学,診断技術,治療技術の進歩により,理学療法士に求められる知識・技術は非常に高度になっているため,内容が難しく十分に理解ができていないのも事実です.私が学生の頃と比べ,非常に多くの知識が要求されていますが,学生のうちに身につけられる知識・技術は限られたものです.
本書では,学生が臨床実習で必要となる理学療法の基本,各疾患・障害に対する理学療法の基本知識・技術のうちポイントを絞った内容を記載しました.また一部に,必ず待ち受ける国家試験のためのヒントも盛り込んでいます.
まず,治療法・疾患の解説を行い,実施する前に確認しておきたいことを示し,多くのイラストや図表を使用し実際に行う手技の注意点を示しています.さらに,必要となる評価・観察のポイントを示し,関連した領域の国家試験対策も載せています.
執筆者は本校で理学療法専門科目を教えている教員です.各項目でポイントを絞り,イラストや図表でわかりやすく,さらに文字数をできるだけ少なく,見開き2ページ内に収めるという条件にしたのですが,これが思った以上に難しい作業となりました.学生に知っておいてほしいことはたくさんありますし,多くのイラストも必要となり,さらに十分な解説も加えるとなると,本書の数倍のぺージ数が必要となります.そのなかで,絞りに絞った内容とし,学生が臨床実習に出たときの基本知識や実技が確認できるものとなるようにしました.実際の臨床実習の場面においては本書のみでは情報量が足りないとは思いますが,最低限おさえておきたいことを確認し,現場で活用してくださることを期待しています.
2016年9月
國安勝司