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筋強直性ジストロフィー 改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:筋強直性ジストロフィー 改訂第2版
患者と家族のためのガイドブック

カーディフ大学

ピーター・ハーパー  著

国立病院機構東埼玉病院院長

川井 充 (かわい みつる) 訳

国立精神・神経医療研究センター病院神経内科医長

大矢 寧(おおや やすし) 訳

改訂第2版 A5判 並製 123頁 2015年12月25日発行

ISBN9784787822352

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定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
  

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筋強直性ジストロフィーの患者とその家族の方々向け解説書の改訂第2版.新たに「筋強直性ジストロフィー2型」の章が追加されたほか,”Key points”が加えられるなどよりわかりやすい構成となった.日本版では初版と同様に,イギリス・カーディフ大学の医学遺伝学者であり,筋強直性ジストロフィーの権威であるハーパー教授による原著の,診察室での説明のようなわかりやすい文体の雰囲気を伝えるように翻訳した.

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目次

改訂第2版発刊によせて
改訂第2版への訳者まえがき
初版への訳者まえがき
改訂第2版への序文
改訂第2版へのまえがきと謝辞
初版へのまえがき

第1章 筋強直性ジストロフィーとは?
 A まったくあるいはほとんど何も知らない人への情報
 B 病名の由来
 C おもにどのようなことで困るか
 D 先天性筋強直症(トムゼン病に関するメモ)

第2章 筋の症状と筋強直性ジストロフィー
 A 診断をつけること―それを患者はどのようにみているか
 B 筋力低下の影響
 C 検査

第3章 将来の見通し
 A 家族のパターン
 B どうすると悪くなり,どうするとよくなるか?

第4章 筋肉だけの病気ではない
 A もっと広範囲の筋強直性ジストロフィーの影響
 B 心臓
 C 胸と肺
 D 嚥下の問題
 E 腹痛と腸管の問題
 F 眼の問題
 G 眠気とこれに関係する症状
 H ホルモンの問題

第5章 筋強直性ジストロフィーの子ども
 A 先天性筋強直性ジストロフィーの診断
 B 次の2~3年
 C 思春期およびそれ以後
 D 小児期発症の筋強直性ジストロフィー

第6章 筋強直性ジストロフィー2型

第7章 家族の問題と遺伝のリスク
 A 遺伝に関するひとこと
 B 病気のある親に生まれた子どもたち
 C 健康な親戚のリスク
 D 筋強直性ジストロフィーの遺伝子検査
 E 発症前の検査
 F 子どもに対する遺伝子検査実施
 G 祖父母や年長の血縁者
 H 妊娠中の検査実施
 I 着床前遺伝子診断

第8章 研究での進歩
 A 筋強直性ジストロフィーの原因について何が本当にわかっているのか

第9章 支援と情報
 A 家族と友人からの支援
 B 支援団体(サポートグループ)
 C 範囲がより広い筋ジストロフィーの協会
 D ほかの役立つ団体
 E インターネットと情報

第10章 現在での対処と治療
 A 筋症状
 B 家庭での補助用具
 C 医学的な(内科的な)問題
 D 外科手術と麻酔
 E 出産
 F 対応全般

第11章 未来―筋強直性ジストロフィーの効果的な予防と治癒に向けて
 A 理解することと研究
 B 研究のどの進歩が治療に至る可能性が高いのか?
 C 今,臨床試験を準備すること

第12章 結び

付録1 支援団体と組織

付録2 筋強直性ジストロフィーにおける麻酔での問題

付録3 筋強直性ジストロフィーのケア・カード

文 献
索 引
訳者略歴

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序文

■改訂第2版発刊によせて

 私は筋強直性ジストロフィーの患者です。発症したときは,とても不安でした。聞き覚えのない病名,しかも難病。「どうせ治らないし,病院なんて行かなくてもいいや」と自暴自棄になりかけたときに,この本に出会い衝撃を受けました。私の知りたいことが書いてある。「自分のための本なの?」と思ったくらいです。読みながら涙がにじみました。暗闇の中に光が射し込んだ,そんな気持ちがして何度も繰り返し読みました。
 この本を読み,お医者様に頼り切るだけではなく,患者自身と家族がこの病気を正しく理解し,正しく病院を選択し,専門の医師から適切な医療と詳しい説明を受けなければならないと痛感しました。私は「このままではいけない,動こう!」と,決めました。そして今は,幸運にも国立精神・神経医療研究センター病院に通院し,専門のすばらしい先生に診察していただいています。
 病気にただ怯えるのではなく,進むべき道を示してくれるこの本を,すべての患者と家族,特に発症したての方にぜひ読んでいただきたいと願います。きっと役立つと思います。
 最後に,改訂第2版を書いてくださったピーター・ハーパー先生と日本語版を発行してくださった川井 充先生,大矢 寧先生,診断と治療社のみなさまに深く感謝を申し上げます。

籏野あかね
筋強直性ジストロフィー患者会(DM—family)設立発起人


■改訂第2版への訳者まえがき

 ハーパー博士による筋強直性ジストロフィーの患者・家族向け解説書“Myotonic Dystrophy”が刊行されて13年,その日本語版が刊行されて10年の歳月が流れました。日本語版も多くの皆さまに読まれ,支持されてきましたが,増刷されることがなくなり,この「まえがき」を書いている2015年11月の時点では購入できない状態が続いています。これに代わる日本語で書かれた優れた患者向け解説書が現れなかったために,2009年に同じ著者による第2版が出版されているにもかかわらず,2015年の時点で日本語版の古書がインターネット上で1万円を超える価格で取引されているという話を最近耳にし,心が痛んでおりました。遅きに失するとの批判は免れぬものの,日本語版を世に送るのは出版社と訳者の責務ではないかと考え,診断と治療社に電話をしました。この10年の間にこの病気の発病の機序解明は大きく進み,長年の夢であった治療薬の開発研究も進んでいます。しかし,現在なお多くの患者と家族の皆さまがこの病気に悩んでいることは変わりありません。また,医療や日常生活上の注意などの点から皆さまにお伝えすべき実際面の情報は,それほど変わっているわけではありません。原著者が新しい版を準備しているわけではないという点を確認したうえで,診断と治療社は私たちの意をくんで第2版の日本語訳の出版を決定してくれました。

 著者の第2版へのまえがきにもありますように改訂された部分は「2型筋強直性ジストロフィー」の章が追加されたことを除くと,決して多くはありません。初版同様,診察室での説明のようにとてもわかりやすく書かれています。訳のほうはその雰囲気をこわさないように努めましたが,その結果,微妙なニュアンスを伝えるために日本語が不自然になっているところがあります。また,初版の至らなかったところを編集者とのやりとりで変更したところも少なくありません。日本の医療事情はイギリスとは異なっていますので,訳注で説明をこころみましたが,具体的なことは主治医にご確認いただきたいと思います。

 最後に,私たちの願いを聞き届けていただき,改訂作業を根気よくサポートしてくださった,診断と治療社,堀江康弘,土橋幸代,横手寛昭の諸氏に深甚なる感謝の意を表します。

2015年11月 訳者を代表して
川井 充


■初版への訳者まえがき

 本書の原著者であるPeter S Harper博士は,長年ウェールズの首都カーディフにあるウェールズ大学医学部医学遺伝学研究所の教授を務めてこられた医学遺伝学者です(ウェールズ大学医学部は2004年にカーディフ大学と合併)。彼は,遺伝性神経疾患,特に筋強直性ジストロフィーとハンチントン病を中心に多くの研究を行う一方,臨床遺伝学の専門家として遺伝カウンセリングにもかかわってこられました。1979年に初版,1989年に第2版,2001年に第3版と二十余年にわたって版を重ねた専門家向けの名著『筋強直性ジストロフィー』(邦訳はされていません)の著者としても知られています。本書は,筋強直性ジストロフィーについて,この病気の権威である著者が,患者とその家族の方々を対象にわかりやすく解説したものです。文章は,目の前の患者や家族の方に語りかけているようにやさしく,思いやりにあふれています。特に第6章(第2版の7章)の「家族の問題と遺伝のリスク」の部分は特に多く紙面を費やして力を入れて書かれており,彼が長年携わってきた遺伝カウンセリングの診療場面が目に浮かぶようです。
 私が偶然本書を手にしたとき,この病気に関する患者,家族向けのガイドブックとして大変優れたものであると思いました。診断と治療社の編集部長である久次武司氏にお会いしたとき,この本を日本の患者とその家族の方々のために翻訳し出版することができないかとご相談したところ,快諾が得られました。全体を訳し終わってみると,訳者がイギリスの医療の事情がわからず多少不明確なところ,必ずしも日本の医療事情と合わないところが一部に存在しますが,日本の患者と家族の方々にとって大いに役に立つものであると確信できました。原文のわかりやすい文体を保つため,できるだけ翻訳調にならないように心掛けましたが,そのようになっているかどうかは読者の皆様の判断にお任せしたいと思います。
 最後に,本書の日本語版の出版にあたりご尽力をいただきました診断と治療社の久次武司氏と,編集でお世話になりました原口由佳氏に感謝を捧げます。

2004年12月 訳者を代表して
川井 充


■改訂第2版への序文

 1985年に私の夫と12歳の息子が筋強直性ジストロフィーと診断されたときに,この『ザ・ファクト』の本が手元にあればよかったのに,と思います。
 私は,9年間にわたって日々の生活に問題を抱えていた息子の診断がつき,ほっとした気持ちで診察室から出てきました。
 息子と,さらに同じ受診で同じ病気とわかった夫の診断名をもらったとき,私はどこに行ったら聞いたこともないこの病気についてもっと情報を得ることができるか見当がつきませんでした。それから,夫と息子は病院での写真撮影のためにさっとつれていかれました。後日,当時私は地域の助産師をしていたので,仕事をしていた出生前クリニックに行きました。同じところで仕事をしていた私の信頼する家庭医の先生が筋強直性ジストロフィーについてもっと情報を得るためにある医学書を調べてくれました。この病気について書かれた部分はたったの4行で,わけのわからない医学用語だらけでした。
 このようにお話は,この『ザ・ファクト』の本につながってきます。
 この本を筋強直性ジストロフィーの診断を受けたばかりのご家族にお薦めすることができるので,今は私はわくわくしています。彼らが自分でこの病気について読むことができ,この本を詳しく読んで,関心をもっているテーマ,たとえば「なぜ私の子どもは筋強直性ジストロフィーをもって生まれてきたのか?」とか「なぜ私はいつも疲れやすいのか?」などについて調べることができるからです。
 答えは私たちがすべて理解できる言葉で書かれています。筋強直性ジストロフィーに関係する疑問が何であれ,この『ザ・ファクト』の本に答えが見つかるでしょう。
 図表はみやすく,見出しは適切な情報を見つけるのに役立ち,文章はわかりやすい―この本は読者に,どのようにしたらいくつかの筋強直性ジストロフィーの合併症を避けることができるかについての理解を助け,そうした合併症が,私たちの生命にどのように影響するかを説明しています。
 高名な教授が,筋強直性ジストロフィーをもつ家族のために本を書くことの必要性を理解しておられたのだろうということは,私にとって驚きであります。ハーパー教授がこの本を利用できるようにしてくださったこと,そして,世界中の筋強直性ジストロフィーをもつ人びとを助けるという彼の生涯の仕事に対して,心よりの感謝を捧げます。

マーガレット・ボウラー S. R. N. S. C. M.
ナショナルコーディネーター
イギリス 筋強直性ジストロフィーサポートグループ


■改訂第2版へのまえがきと謝辞

 皆さんがこの本が役に立つことがわかってくださって,また英語を話さない人びとのためにいくつかの言語に翻訳されることができるようになって,うれしく思います。この新しい版を準備するなかで,私は必要がないかぎり変更を加えることを避けてきました。しかし,特に2型の筋強直性ジストロフィーをもっと目立たせるようにしました。それは私がはじめにこの本を書いたときにはまだあいまいにしか定義されていなかったのです。また関係ある新しい進歩は書き込むように試みました。
 私のカーディフ大学のすべての同僚,特にマーク・ロジャース博士の助力と支援に対して感謝をささげたいと思います。なかでもマーガレット・ボウラー,シャノン・ロード,マギー・ワールの諸氏の原稿に対する価値あるコメントと追加の資料の示唆に対して,ミチェル・マシューのタイピングとテキストの整理に対して感謝します。筋ジストロフィーキャンペーン(イギリス)とMuscular Dystrophy Association(MDA,アメリカ)Association Française contre les myophathies(AFM,フランス)そして筋強直性ジストロフィーサポートグループの助言と年余にわたるカーディフ筋センターに対する財政的支援に対しても感謝します。また,ジョアンヌ・リチャーズの原稿の再構築に対しても感謝します。
 2009年は筋強直性ジストロフィーの百周年にあたります。有効な治療を本当に約束するべく,研究成果が増え,臨床家と研究者の双方がそれに対して興味を示すのをみることはすばらしいことです。

ピーター・ハーパー
カーディフ
2009年


■初版へのまえがき

 この本を書こうと思いついたのは,もっと大きな本『筋強直性ジストロフィー』第3版を書き終えてまもなくでした。その本は専門家(主として医師と科学者)のために書かれています。しかし,その本の以前の版が出たとき,何人かの患者や家族のメンバーがその本のある部分は彼らにも役に立つというのを聞きました。(大幅に遅れましたが)その本が完成した現在,私はもっと対象を絞った筋強直性ジストロフィーの家族向けの本が必要であるということを意識しました。そして,私がそのような本を作ろうとするべきであると考えました。
 もしかしたら,インターネットやその他の情報源から得られる情報があるので,このようなタイプの本を作ることは必ずしも必要でないという議論があるかもしれません。しかし,私はどちらかというとそうではない思います。多分,私は古いタイプの人間なのでしょう。しかし,大部分の必要な情報は,しっかりした形の本にまとまっているほうがよいのです。短くて読みやすければ,特にそうなのです。
 ちょうどよいタイミングでした。なぜなら,すでに上記の大きい本を書く仕事をしていましたので,細かいところまで私の頭に入っておりましたし,大きい本の校正刷りも手元にありました。ウェールズの海岸から遠くはなれた島で,電話や電気やその他すべての現代生活の邪魔のない休暇をとる機会もありました。
 そんなわけで,平穏と静寂に寄り添うものとして,海とアザラシと鳥だけを背景に,私はこの短い本を書き終えました。筋強直性ジストロフィーの患者とその家族の方々が,この本を役に立つと思ってくださることを望みます。

ピーター・ハーパー
バーゼイ島(Ynys Ennlli)にて
2001年夏