東大病院で新生児医療に携わる医師たちが,「現場でこんなマニュアルがあったら欲しい!」というコンセプトのもとに編集された新生児診療マニュアルが登場.具体的な商品名や投与法を記した処方例をちりばめ,また,必要なエビデンスと各種ガイドラインの内容,標準化のために医師間で調整した治療内容を,持ち運びしやすい新書サイズに盛り込んだ,ベッドサイドでまさに即戦力となる診療マニュアルです.
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目次
発刊に寄せて 岡 明
序 文 高橋尚人
執筆者一覧
第1章 一般管理
A 新生児蘇生・搬送
1 新生児蘇生法 高橋尚人
2 新生児搬送法 西村 力
B 産科新生児管理
1 産科新生児室での小児科入院の取り扱い 西村 力
2 ハイリスク母体からの児 西村 力
3 胎児異常の児 西村 力
4 新生児症候 西村 力
5 新生児疾患 西村 力
6 プレネイタル・ビジット 土田晋也
7 マス・スクリーニング 西村 力
8 自動聴性脳幹反応(AABR) 土田晋也
9 ビタミンK内服法 西村 力
10 シナジス®(在胎36週未満のシナジス®適応児) 土田晋也
11 点 眼 高橋尚人
C 入院時管理
1 NICU/GCUに入院すべき児 垣内五月
2 入院時ルーチン検査 垣内五月
3 入院時処置 垣内五月
D 入院中基本管理
1 感染対策 井上毅信
2 輸液管理 田中広輔
3 栄養管理(経腸栄養) 大島拓也
4 保育器管理 井上毅信
5 一般検査 田中広輔
第2章 主な疾患
A 新生児仮死
1 新生児仮死 井上毅信
2 低酸素性虚血性脳症(HIE) 井上毅信
B 呼吸器疾患
1 無呼吸発作 土田晋也
2 呼吸窮迫症候群(RDS) 田中広輔
3 慢性肺疾患(CLD) 田中広輔
4 エアリーク 田中広輔
5 胎便吸引症候群(MAS) 田中広輔
6 新生児一過性多呼吸(TTN) 田中広輔
C 循環器疾患
1 未熟児動脈管開存症(PDA) 垣内五月
2 新生児遷延性肺高血圧症(PPHN) 垣内五月
3 不整脈 垣内五月
4 先天性心疾患 垣内五月
5 心血管系薬剤 垣内五月
D 細菌感染症
1 前期破水(PROM)母体児の管理 古川陽介
2 GBS陽性母体からの出生児 井上毅信
3 MRSA感染症 井上毅信
4 重症感染症 井上毅信
5 新生児TSS様発疹(NTED) 高橋尚人
6 抗菌薬 井上毅信
E ウイルス感染症
1 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 垣内五月
2 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症 垣内五月
3 サイトメガロウイルス(CMV)感染症 土田晋也
4 B型肝炎ウイルス(HBV)感染症 土田晋也
5 C型肝炎ウイルス(HCV)感染症 土田晋也
6 HTLV−1感染症/成人T細胞白血病(ATLA) 土田晋也
7 風 疹 土田晋也
8 麻 疹 土田晋也
F 感染症その他
1 真菌感染症 古川陽介・武藤浩司
2 ウレアプラズマ感染症 古川陽介・武藤浩司
3 梅毒母体児の管理 古川陽介
G 神経疾患
1 頭蓋内出血 井上毅信
2 新生児発作(新生児けいれん) 井上毅信
3 脳室周囲白質軟化症(PVL) 井上毅信
4 脳室内出血(IVH) 井上毅信
5 脳梗塞 井上毅信
H 消化器系疾患
1 急性胃粘膜病変(AGML) 大島拓也
2 胎便関連性腸閉塞症(meconium−related ileus) 大島拓也
3 新生児壊死性腸炎 (NEC) 大島拓也
4 ミルクアレルギー(新生児・乳児消化管アレルギー) 大島拓也
5 胆汁うっ滞 大島拓也
6 胃食道逆流(GER) 古川陽介
I 電解質異常
1 高K血症 西村 力
2 高Na血症 西村 力
3 低Na血症 西村 力
4 低Ca血症 西村 力
5 高Mg血症 西村 力
J 腎泌尿器疾患
1 腎不全 垣内五月
K 代謝性疾患
1 低血糖 西村 力
2 新生児黄疸 西村 力
3 高アンモニア血症 西村 力
4 先天代謝異常症 西村 力
L 内分泌疾患
1 晩期循環不全 田中広輔
2 甲状腺機能低下症 田中広輔
M 血液・免疫疾患
1 多血症 大島拓也
2 貧血(未熟児貧血を除く) 大島拓也
3 母児間輸血症候群(胎児・母体間輸血症候群) 古川陽介・武藤浩司
4 播種性血管内凝固(DIC) 大島拓也
5 血小板減少 大島拓也
6 新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血 大島拓也
7 血栓症 西村 力
8 血球貪食性リンパ組織球症(HLH) 高橋尚人
9 鉄欠乏性貧血 武藤浩司
N 極低出生体重児
1 在胎22~24週児 西村 力
2 未熟児貧血 古川陽介・武藤浩司
3 未熟児代謝性骨疾患 西村 力
4 early aggressive nutrition(modified) 大島拓也
O 小児外科疾患
1 横隔膜ヘルニア 土田晋也
2 消化管穿孔 土田晋也
3 食道閉鎖 土田晋也
4 小腸閉鎖 土田晋也
5 腸回転異常 土田晋也
6 肥厚性幽門狭窄 土田晋也
7 臍帯ヘルニア 土田晋也
8 腹壁破裂 土田晋也
9 胆道閉鎖症 土田晋也
10 外鼠径ヘルニア 土田晋也
11 先天性囊胞性腺腫様奇形(CCAM) 土田晋也
P 脳外科疾患
1 脊髄髄膜瘤 田中広輔・古川陽介
Q 泌尿器科疾患
1 総排泄腔外反症 田中広輔
R 性分化異常症
1 性分化疾患 西村 力・伊藤 淳
S 染色体異常
1 21トリソミー(Down症候群) 古川陽介・高橋尚人
2 一過性骨髄異常増殖症(TAM) 古川陽介・高橋尚人
3 18トリソミー・13トリソミーの管理方針 土田晋也
4 22q11.2欠失症候群 武藤浩司
T 感覚器疾患
1 未熟児網膜症(ROP) 田中広輔
2 聴覚障害(難聴) 土田晋也
U 分娩外傷
1 骨 折 垣内五月
2 出 血 垣内五月
3 麻 痺 垣内五月
第3章 治療法と手技
1 心肺蘇生 垣内五月
2 人工呼吸器管理 垣内五月
3 高流量経鼻カニューレ療法(HFNC) 田中広輔
4 気管洗浄 垣内五月
5 胸腔穿刺 垣内五月
6 PICC管理 西村 力
7 臍動静脈カテーテル 西村 力
8 輸血(製剤の注意点) 垣内五月
9 交換輸血 古川陽介
10 高カロリー輸液 武藤浩司
11 胃液補正 武藤浩司
12 ω3系薬剤使用 設楽佳彦
13 麻酔・鎮静 西村 力
14 膀胱留置カテーテル 高橋尚人
15 手術準備 西村 力
16 NO吸入療法 田中広輔
17 N2吸入療法 武藤浩司
18 ECMO 高橋尚人
19 EXIT 井上毅信
20 低体温療法 青木良則
第4章 検 査
1 頭部エコー 古川陽介
2 心エコー 垣内五月
3 聴性脳幹反応(ABR) 土田晋也
4 MRI 古川陽介
5 造影CT 西村 力
6 心電図 古川陽介
7 脳 波 古川陽介
8 aEEG管理 青木良則
9 眼底検査およびROPレーザー治療 西村 力
10 剖 検 田中広輔
第5章 退院管理
A 退院管理
1 退院基準 西村 力
2 産科への転出 西村 力
3 他科の児の退院 西村 力
4 退院サマリーの書き方 西村 力
5 外来予約 西村 力
6 在宅医療準備 西村 力
B 外来フォローアップ
1 新生児外来(フォローアップ外来)の仕方 高橋尚人
2 予防接種 土田晋也
3 パリビズマブ(抗RSウイルスモノクローナル抗体,シナジス®) 土田晋也
4 在宅酸素療法(HOT) 土田晋也
5 ステロイド吸入療法 土田晋也
6 アプネアモニター 土田晋也
第6章 その他
1 NICU・GCU内予防接種 垣内五月
2 医学的意思決定 高橋尚人
3 ディベロップメンタルケア(DC) 土田晋也
4 災害時の新生児医療体制復旧手順 高橋尚人
5 MRSA保菌・アウトブレイク対策 高橋尚人
6 覚醒剤・違法薬物使用母体への対応 土田晋也
7 産科医療補償制度 高橋尚人
8 同胞面会 高橋尚人
付 録
1 正常値一覧 古川陽介
2 重篤な疾患をもつ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン 高橋尚人
3 在胎週数別出生時体格基準曲線 古川陽介・武藤浩司
4 鉄剤ガイドライン 高橋尚人
5 MRSAのガイドライン 高橋尚人
6 小児慢性特定疾患治療研究事業 古川陽介
7 公費負担 古川陽介
8 NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン 高橋尚人
9 新生児先天性横隔膜ヘルニア(CDH)診療ガイドライン 高橋尚人
10 新型インフルエンザ対応ガイドライン 高橋尚人
11 先天性風疹症候群(CRS)対応ガイドライン 土田晋也
12 母親・家族が感染症を発症した際の対応 高橋尚人
薬剤索引
用語索引
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序文
発刊に寄せて
東京大学医学部附属病院の周産期センターは,2011年に総合周産期母子医療センターの指定をうけ,東京都の周産期医療の一端を担っています.新生児集中治療部は東大病院の小児医療センターにも属し,心臓手術を含めた高度の新生児疾患への対応ができるようになっています.
日本の周産期医療は,臨床成績では世界で最も優れているとされながらも,現場の教育研修体制は必ずしも十分とはいえません.全国的にも新生児科医の育成が緊急の課題とされており,小児科専門医を目指す若手医師が新生児医療について体系的に学ぶことができる体制作りが必要となっています.大学をはじめとする医育機関には,その責任を果たすことが強く求められていると思います.
東大病院は今後,NICU,GCUを現在の約2倍に増床する予定で,そこで日本の将来を担う次世代の子どもたちを守る新生児科医を一人でも多く育成していきたいと考えています.
東大NICUは今までも多くの医師に新生児医療を学ぶ機会を提供してきましたが,この増床に合わせて,東大版の新生児診療マニュアルを刊行し,多くの方々に利用していただくこととしました.本書の刊行に当たっては,立案の段階から,東大NICUの責任者である高橋尚人先生が中心となり編集作成をし,過去にあまり例のない,処方例やガイドラインなどを掲載した実践的なマニュアルとなっております.ぜひ,この機会に手にとっていただき,日常の診療に役立てていただけましたら幸いです.
このマニュアルが日本の小児科医が新生児医療を担ううえで大きな役割を果たし,今後さらによいものとして版が重ねられることを心から願っています.
2017年2月
東京大学医学部小児科教授
岡 明
序 文
東京大学NICUでは医育機関として多くの医師に新生児医療の教育を行ってきていますが,今後さらに増床を行い,NICUとGCUを合わせて57床とする予定です.また,東京大学は医学部附属病院に小児・新生児集中治療部門を創設し,部長として教授職を配置する予定です.このことは東大が,この分野にかかわる医師を育成することに責任をもち,次世代の世界を担う子どもたちを守ることを宣言したものといえます.
そのため現場で,増床に向けて,安全でかつ一貫した医療を行うために,東大新生児部門の診療マニュアルを作成することが必須と思われました.目指したコンセプトは「現場でこんなマニュアルが是非とも欲しい」というマニュアルでした.そのために以下の3つを盛り込めるように検討しました.
① 具体的な商品名,投与法がある処方例
② 必要な範囲のエビデンスとガイドライン
③ 標準化のため医師間で調整した治療内容
現在,新生児医療の現場では,NICU部門オーダリングシステムを備えた施設が多くなっています.しかし,そのため手計算に不慣れな医師が増えてきています.また,不慣れな研修医が新生児医療にかかわることも増えてきました.そこで,具体的な商品名を含めた処方例の載ったマニュアルを目指しました.
また,新生児にかかわるガイドラインも増えてきています.インターネットでも情報は得られますが,すぐにベッドサイドで見たいということが多いと思います.また,代表的な文献は示したいと思いました.
東大NICUの医師は,国立成育医療研究センター,東京都立小児総合医療センター,東京都立墨東病院,東京女子医科大学,自治医科大学など,さまざまな施設で独自の医療を学んできており,一貫した医療のために,標準化することが強く求められました.そこで,現在東大で行っている新生児医療を基礎にして,約1年半かけてdiscussionを行ってきました.
ようやくここに完成した『東大病院 新生児診療マニュアル』を,関係の方々はどのように受け取られるでしょうか.このような新生児医療マニュアルはまだ希有な存在と思われますが,重要で便利なものになっていると思っています.このマニュアルが,今後の新生児医療を担う方々に広く利用されることを心から願っております.一度手にしていただけたらとても幸いです.
2017年2月
東京大学医学部小児科准教授
高橋尚人