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脳神経外科 二刀流のススメ診断と治療社 | 書籍詳細:脳神経外科 二刀流のススメ 動画

兵庫医科大学脳神経外科学講座主任教授

吉村 紳一(よしむら しんいち) 編著

初版 B5判 並製 210頁 2019年12月05日発行

ISBN9784787823151

定価:8,800円(本体価格8,000円+税)

  

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脳血管障害に対する治療には,血管内治療中と開頭手術の2つの方法がある.近年,低侵襲な血管内治療が行われる機会が増加しているが,両方を熟知した術者,すなわち二刀流術者になることで,より多くの患者に柔軟に対応することが可能となる.
本書は,実際の症例を通して,二刀流となるためのノウハウと治療スキルの向上を図るための実践書である.
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目次

脳神経外科における二刀流とは?/吉村紳一
本書中で用いるおもな略語
執筆者一覧

総 論
Ⅰ パイオニアからの一言
 それぞれの領域で一流であるために/郭 泰彦
Ⅱ 私の経験
 1 血管内手術中心から二刀流へ/吉村紳一
 2 直達手術中心から二刀流へ/豊田真吾
Ⅲ 二刀流のトレーニング
 1 二刀流をトレーニングする立場から/白川 学
 2 二刀流を磨くために -学ぶ立場から-/金城典人
 3 外科から二刀流へ -学ぶ立場から-/松川東俊
 4 最初から二刀流へ -学ぶ立場から-/棚田秀一

各 論
Case 1 IC paraclinoid aneurysm/白川 学
Case 2 内頚動脈‒前脈絡叢動脈分岐部動脈瘤/内田和孝
Case 3 大型内頚動脈瘤(硬膜内)/吉村紳一
Case 4 巨大内頚動脈瘤(海綿静脈洞内)/吉村紳一,松川東俊
Case 5 瘤から分枝のある症例(BA-AICA)/吉村紳一
Case 6 血豆状動脈瘤/白川 学
Case 7 動脈瘤穿孔/江頭裕介
Case 8 Acom塞栓後の血栓症/榎本由貴子
Case 9 内頚動脈後交通動脈瘤(瘤からpcom分岐)/別府幹也
Case 10 大型中大脳動脈瘤/山下太郎,清水史記
Case 11 コイル塞栓術後の再発前交通動脈瘤/豊田真吾
Case 12 主幹動脈急性閉塞例/内田和孝
Case 13 高度石灰化を有する頚動脈狭窄/山田清文
Case 14 大量ソフトプラークを有する頚動脈狭窄症/山田清文
Case 15 総頚動脈起始部狭窄症/金城典人
Case 16 頭蓋内内頚動脈狭窄と中大脳動脈狭窄の合併例/蔵本要二
Case 17 横静脈洞・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻(TSS dAVF)/立林洸太朗
Case 18 前頭蓋底硬膜動静脈瘻/垣田寛人
Case 19 後頭蓋窩硬膜動静脈瘻/立林洸太朗
Case 20 脳動静脈奇形(AVM)/松川東俊
Case 21 脊髄動静脈奇形/硬膜動静脈瘻(spinal AVM/AVF)/陰山博人
索 引
あとがき/吉村紳一
動画再生方法

◇さらに極める! 二刀流の視点から
ステント併用テクニック
外科治療が難しい症例への対応
どのような症例にフローダイバーターを適応すべきか?
ハイフローバイパスの注意点
血管内治療の限界
血豆状動脈瘤のさまざまな治療方法
塞栓中の動脈瘤穿孔を避けるには?
血小板凝集能の各種測定方法と意義
Pcom瘤はどこまでコイル塞栓可能か? また外科治療が難しいのは何か?
MCA瘤をどこまで血管内で治療するか? 逆に外科ハイリスクは何か?
再発瘤クリッピング・コイリング時の注意点
血栓回収療法のエビデンスのまとめ,急性期バイパスの文献的考察
石灰化病変に対してどこまでCASを行うか?
ソフトプラークにどこまでCASを行うか? プラーク逸脱時の対処は?
大動脈弓部近傍の腕頭動脈や総頚動脈等,各アプローチのまとめと注意点
PTASハイリスク病変はどのようなものか?
TSS dAVFに対する一歩進んだ治療手技
治療の疫学
tentorial dAVFにおける血管内治療の限界
複合治療を行う場合に外科医はどこをどの程度詰めて欲しいか?
脊髄動静脈奇形/硬膜動静脈瘻の外科治療とその限界

◇Dr. 吉村のワンポイントアドバイス
Paraclinoid aneurysmをどう治療するか?
前脈絡叢動脈瘤をどう治療するか?
フローダイバーター事情
ハイフローバイパスはなくなるのか?
二刀流の必須技術:バイパス術
血豆状動脈瘤の治療:ハイフローか血管内か?
極小動脈瘤のコイル塞栓術
「ワンループOK」は本当?
動脈瘤からの分枝温存のためのステント選択
Suction decompression technique
急性期バイパス術
大動脈周辺の狭窄病変の治療
硬膜動静脈瘻の治療選択
前頭蓋底dAVFの第一選択は開頭手術!
AVMの治療方針をどう決めるか?
脊髄AVシャントをどう治療するか?

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序文

脳神経外科における二刀流とは?

 脳血管内治療が急速に増加しています.これは脳動脈瘤用のステントや脳血栓回収機器など新規デバイスの開発と,治療の有効性に関するエビデンスの確立によるところが大きいと考えられます.フローダイバーターも認可され,今後も新たなデバイスが導入されることが見込まれています。この勢いで増加していくと,脳血管内治療が治療の第一選択になる日は遠くないように思います.
 では外科手術はなくなってしまうのでしょうか?答えは‘No’だと思います.それは,血管内治療が適応できない症例や外科手術のほうが治療成績がよいケースがあるからです.また,両者を組み合わせて治療すべき難しい症例もあります.そう考えると,患者さんにとってベストな治療を選び,そして自分自身で治療できる「二刀流」は当面のところ極めて有利な状況にあると考えられます.
 しかし,「二刀流」にも問題がないわけではありません.両方の治療をマスターするには,普通に考えると2倍の勉強が必要です.実際には解剖学の知識や神経学的診断,患者さんの管理などにおいて共通する知識が多いのですが,手技はまったく別物です.ですから,しっかりと勉強しないと,それぞれの技術が中途半端になってしまう可能性があるのです.また,よい指導者に恵まれない場合には,勉強法や現場の治療法について迷うことが多いものと思います.
 以上のような背景から,本書を刊行することとしました.まず「総論」では「二刀流」のプロフェッショナルから入門者まで,幅広い層の先生方に様々な視点から,「二刀流」の必要性や勉強法・教育法について解説していただきました.また,「各論」では,「二刀流」を学び,実践する過程で遭遇する典型例について,具体的に解説しました.
 本書では,「二刀流」を学び,実践していくために有用な情報を詳しく,かつ具体的に提供できるよう工夫を凝らしたつもりです.皆さんの明日からの診療にお役立ていただければ幸いです.

2019年10月
兵庫医科大学脳神経外科学講座
主任教授 吉村紳一