本書は,小児科医,皮膚科医が日常診療で比較的よく遭遇する,あるいは,見逃してはいけないこどもの皮膚疾患を中心に,その概要と対処法,患者・家族にどのように説明・指導するかを小児科医,皮膚科医の双方の立場から解説するという新たなコンセプトのもとで企画されました.いずれの項目も専門家の豊富な経験と知識に基づいたわかりやすい解説がなされており,明日からの実施診療にすぐに役立つ情報が満載されています.
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目次
編集にあたって 大嶋勇成
編集者紹介
編集・執筆者一覧
第1章 ホットトピックス
A アトピー性皮膚炎
1 経皮感作説はどこまで解明された? 大嶋勇成
2 スキンケアでアレルギーマーチは防げるか? 堀向健太
3 食物アレルギーとの関連は? 福家辰樹
4 汗対策は? 室田浩之
5 入浴・シャワー浴は有用か? 望月博之
6 プロアクティブ療法はどこまで有用か? 加藤則人
B こどものスキンケア
1 ドライスキンケア①―いつ,何を,どう塗ればいい? 大谷道輝
2 ドライスキンケア②―エモリエントとモイスチャライザーはどう違う? 大谷道輝
3 年齢に応じたスキンケア 佐々木りか子
4 紫外線対策①―サンスクリーン剤の正しい塗り方 宮地良樹
5 紫外線対策②―ビタミンD生成への影響は? 桒原晶子,田中 清
6 清潔のスキンケア 菊地克子
C こどもの化粧
1 化粧品,ピアス,タトゥーによる健康被害 尾見徳弥
2 毛髪のおしゃれによる健康被害 尾見徳弥
D 学校保健における小児皮膚科
1 学校皮膚感染症の出席停止指針 是松聖悟
2 皮膚疾患とプール 是松聖悟
3 食物アレルギー 今井孝成
4 予防接種の有害事象 中野貴司
第2章 プライマリケアにおけるこどもの皮膚疾患
A 湿疹皮膚炎群
1 接触皮膚炎 中村健一
2 単純性粃糠疹(はたけ) 中村健一
3 アトピックドライスキン 加藤則人
4 乳児湿疹 福家辰樹
5 乳児脂漏性皮膚炎 福家辰樹
6 おむつ皮膚炎(おむつかぶれ) 中村健一
B 蕁麻疹・痒疹・紅斑・紫斑
1 蕁麻疹 秀 道広
2 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA) 今井孝成
3 小児ストロフルス 日野治子
4 多形滲出性紅斑(EEM) 日野治子
5 IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病) 五十嵐 徹,高山良子
6 川崎病 松原知代
7 特発性血小板減少性紫斑病(ITP) 加藤 格
C 膠原病
1 エリテマトーデス(LE) 秋葉 靖,冨板美奈子
2 皮膚筋炎(DM) 長谷川 稔
3 若年性特発性関節炎(JIA) 清水正樹
D 物理化学的皮膚障害
1 熱傷(やけど) 吉川勝宇
2 凍瘡(しもやけ) 長谷川 稔
3 サンバーン(日焼け) 森脇真一
4 虐待 溝口史剛
5 行動嗜癖・癖による皮膚症状 川谷正男
E 角化症(さめ肌)
1 魚鱗癬 高橋健造
2 毛孔性苔癬 高橋健造
F 色素異常
1 白斑・脱色素性母斑・まだら症 谷岡未樹
G 真皮疾患
1 皮膚萎縮線条(皮膚線条) 尾見徳弥
H 付属器疾患
1 汗疹(あせも) 南部光彦
2 多汗症 横関博雄
3 尋常性痤瘡(にきび) 林 伸和
4 円形脱毛症(AA) 伊藤泰介
5 ひょう疽・陥入爪 是枝 哲
I 母斑(アザ)
1 太田母斑・色素性母斑・青色母斑 葛西健一郎
2 茶アザ(扁平母斑・カフェオレ斑・ベッカー母斑) 葛西健一郎
3 脂腺母斑 是枝 哲
4 乳児血管腫(赤アザ) 金田眞理
5 乳児血管腫以外の血管腫(赤アザ) 馬場直子
J 腫瘍
1 表皮嚢腫(粉瘤) 吉川勝宇
2 石灰化上皮腫 谷岡未樹
3 皮膚肥満細胞症(色素性蕁麻疹) 松田智子,神戸直智
K 感染症
1 ウイルス感染症①―単純ヘルペス(単純疱疹) 渡辺大輔
2 ウイルス感染症②―帯状疱疹 渡辺大輔
3 ウイルス感染症③―水痘(水ぼうそう) 河村吉紀,吉川哲史
4 ウイルス感染症④―尋常性疣贅(いぼ) 三石 剛
5 ウイルス感染症⑤―伝染性軟属腫(水いぼ) 三石 剛
6 ウイルス感染症⑥―麻疹(はしか) 水野真介,吉田 晃
7 ウイルス感染症⑦―風 疹 樋泉道子,森内浩幸
8 ウイルス感染症⑧―突発性発疹 河村吉紀,吉川哲史
9 ウイルス感染症⑨―伝染性紅斑(りんご病) 要藤裕孝
10 ウイルス感染症⑩―手足口病 細矢光亮
11 ウイルス感染症⑪―伝染性単核症 和田泰三
12 細菌感染症①―伝染性膿痂疹(とびひ) 白濱茂穂
13 細菌感染症②―溶連菌感染症 白濱茂穂
14 真菌感染症①―白 癬 常深祐一郎
15 真菌感染症②―ケルスス禿瘡 常深祐一郎
16 真菌感染症③―癜風(なまず) 原田和俊
17 真菌感染症④―スポロトリコーシス 安部正敏
18 その他の感染症等①―疥 癬 谷口裕子
19 その他の感染症等②―毛虫皮膚炎・線状皮膚炎 夏秋 優
20 その他の感染症等③―蚊アレルギー 岩月啓氏
21 その他の感染症等④―アタマジラミ症 山口さやか,高橋健造
22 その他の感染症等⑤―マダニ刺症 夏秋 優
23 その他の感染症等⑥―デング熱 齋藤万寿吉
第3章 見逃してほしくないこどもの皮膚疾患
A 固定薬疹 藤山幹子
B 重症薬疹の初期症状 藤山幹子
C 色素性乾皮症(XP) 森脇真一
D 種痘様水疱症 岩月啓氏
E 表皮水疱症 林 大輔,鶴田大輔
F 毛孔性紅色粃糠疹(PRP) 山本明美,林 圭
G 急性痘瘡状苔癬状粃糠疹(PLEVA) 清島真理子
H 線状苔癬 山本明美
I ジベルバラ色粃糠疹 清島真理子
J 亜鉛欠乏症・腸性肢端皮膚炎 高増哲也
K ビオチン欠乏症 野崎章仁,楠 隆
L エーラス・ダンロス症候群(EDS) 河野通浩
M 神経線維腫症1型(NF1)(レックリングハウゼン病) 金田眞理
N 結節性硬化症(TSC) 金田眞理
O 色素失調症 寺前彩子,深井和吉,鶴田大輔
P ランゲルハンス細胞組織球症(LCH) 梅田雄嗣
Q ジアノッティ・クロスティ症候群 浅田秀夫
編集を終えて 宮地良樹
和文索引
欧文-数字索引
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序文
編集にあたって
2008年に,小児科医と皮膚科医が遭遇する様々な小児皮膚疾患に対する疑問について,それぞれの領域の専門家が解説する『小児の皮膚トラブルFAQ』が,宮地良樹先生と末廣 豊先生を編者として発刊されました.この本はこどもの皮膚診療に関わる多くの小児科医,皮膚科医に好評を博しましたが,発刊後10年を経過し,その間の小児皮膚科領域における疾患の考え方の変化や病態の解明,治療・管理法の進歩に対応する必要が生じてきました.そこでこの度,小児科医と皮膚科医が日常診療で比較的よく遭遇する,あるいは,見逃してはいけないこどもの皮膚疾患を中心に,その概要と対処法,患者・家族にどのように説明・指導するかを双方の立場から解説するという新たなコンセプトのもとで本書が企画されました.今回は,皮膚科医の立場から宮地良樹先生が編集を担当され,小児科医の立場から,末廣先生とは小児科学教室の同門であり,同じアレルギー研究グループの後輩である大嶋勇成が編集を担当することになりました.
本書では,こどもの皮膚診療に携わるすべての医師の先生方に加えて,学校保健師なども含めたメディカルスタッフの方々に最新のエビデンスに基づいた情報を伝えるため,各領域,各疾患の専門家に執筆をお願いしました.第1章では,アトピー性皮膚炎と食物アレルギーとの関係についてのパラダイムシフト,学校など集団生活で問題となる感染症の管理,紫外線対策の問題点などをホットトピックスとして取り上げています.第2章では,プライマリケアで遭遇する機会が多いこどもの皮膚疾患の診断のポイント,プライマリケアとしての治療を中心に新規治療薬など最新の情報をまとめました.第3章では,比較的稀な疾患であっても対応を誤ると問題となる疾患について取り上げました.
執筆者には,各項目の冒頭で「Essential Points」として要点をまとめていただき,トピックスや疾患の特徴を図表や画像を交えて解説し,専門医紹介のタイミング,保護者への説明のポイントを記載していただきました.そして最後に,同じ疾患でも他の診療科の医師がどのように考えて診療にあたっているのかを理解していただけるように「小児科医・皮膚科医からのひとこと」を追記しました.ぜひご参考にしていただければ幸いです.どの項目も専門家の豊富な経験と知識に基づいたわかりやすい解説がなされており,明日からの実施診療に役立つ情報が満載されています.
末筆になりましたが,とても多忙な診療や研究の時間を割いて原稿をお寄せくださった先生方,本書の企画・構成を立案していただき,編集に携わる機会を与えてくださった宮地良樹先生に,この場を借りて感謝を申し上げます.
2019年1月吉日
編集
大嶋勇成
福井大学医学系部門医学領域小児科学
編集を終えて
今からちょうど10年前,小児科医で同級生でもある畏友 末廣 豊先生と,『小児の皮膚トラブルFAQ』を同じ診断と治療社から上梓しました.当時はまだアトピー性皮膚炎や食物アレルギーをめぐって小児科医と皮膚科医の間に大論争があり,その間隙を縫ってアトピービジネスが跋扈している時代でした.それで,アレルギーが専門で学生時代からの親友(酔いつぶれた彼を何度も介抱したことがありますから)である彼と,「一度,この混乱を収束するために,お互いを知り尽くした二人で本を出そう」ということで刊行したのがこの本でした.あれから10年,いま本書のゲラを読了して,この10年の小児皮膚科学,とりわけアレルギー領域の進歩に目を見張りました.いわゆるアトピー性皮膚炎の三位一体論,すなわち皮膚バリア・かゆみ・アレルギー炎症をめぐる病態研究が一気に進み,フィラグリン・ドライスキンケア・Th2サイトカインなどが融合したコンセプトがブレイクスルーとなって,アレルギーマーチの予防と治療をめぐるコンセンサスが得られるようになったのです.アトピー性皮膚炎の治療薬としては初めての抗体製剤となるデュピルマブ(ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体)の上市により,これまでの積み重ねによる病態解明手法がトップダウンで標的分子を明快に制御するという大きな研究のパラダイムシフトがいま起こっていることを痛感しました.
今回は福井大学小児科の大嶋勇成先生とタッグを組み,「すべての医師・メディカルスタッフのために」という編集方針で,重要な小児皮膚疾患の最新情報を網羅しました.執筆者の先生方には,ビジュアルにうったえる図表を駆使し,冒頭にEssential Pointsとして要点をまとめていただき,さらに小児を診るうえでのコツやピットフォールにも触れるようにお願いしましたので,かなりわかりやすい内容になったと自負しています.実際,私自身もゲラを読んでいて,「そうだったのか!」とストンと腑に落ちる場面が少なからずありました.
大嶋先生は,私と同時代を京大で過ごした現福井大学長の眞弓光文先生の後任小児科教授ですから,ちょうど私より10年若い世代になります.このほどよい世代格差が時空を超えた新しい小児皮膚科の地平を俯瞰することに大いに役立ちました.とくに今回は,各項目の末尾に「小児科医・皮膚科医からのひとこと」を入れることにしましたので,なおさら相互領域を真摯に学ぶことができ,それが何よりの収穫となりました.そんな編者の息づかいと,互いに紡いだ小児皮膚科のタペストリーを堪能いただければ幸甚です.
2019年1月吉日
編集
宮地良樹
京都大学名誉教授