内分泌学と骨代謝学という二つの視点を融合させ,かつ臨床に即した手引きとなるような書籍を目指し,初版発行から6年の年月を経てついに改訂版が登場.初版の内容のUpdateだけでなく,大きく「カルシウム・リン・骨代謝の生理学」「カルシウム・リン・骨代謝の病態」に分け、 骨代謝疾患やそれに関連するミネラル代謝異常についての記載を大幅に増やし,統合的な理解が進むよう配慮した作りとなっている.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
推薦のことば 松本俊夫
「診断と治療社 内分泌シリーズ」について 成瀬光栄
改訂第2版 序文 竹内靖博
執筆者一覧
略語一覧
I
カルシウム・リン・骨代謝の生理学
1 副甲状腺の発生・解剖 亀山香織
2 副甲状腺ホルモン作用と合成分泌調節機構 岡崎具樹
3 ビタミンDの構造・代謝・作用 津川尚子
4 FGF23の合成・分泌・作用 髙士祐一
5 カルシウム代謝 竹内靖博
6 リン代謝 福本誠二
7 骨芽細胞 西村理行他
8 骨細胞 小守壽文
9 破骨細胞 自見英治郎
10 骨代謝 杉本利嗣
11 カルシトニンと骨・ミネラル代謝 山下照仁他
12 PTHrPと骨・ミネラル代謝 長谷川智香他
II
カルシウム・リン・骨代謝の病態
第1章 副甲状腺関連疾患
第1節 基本的臨床知識
A 症候・検査・診断
1 生化学的検査 鈴木敦詞
2 画像検査 宮川めぐみ
3 高カルシウム血症の鑑別診断 辰島啓太
4 低カルシウム血症の鑑別診断 渡部玲子他
5 低リン血症の鑑別診断 遠藤逸朗
6 副甲状腺腫瘍の病理診断 亀山香織
第2節 疾患各論
A 原発性副甲状腺機能亢進症
1 病態・診断 山内美香他
2 治療の適応と内科的治療 竹内靖博
3 手術治療 岡本高宏
4 正カルシウム血症性原発性副甲状腺機能亢進症の診断と治療
古家美菜絵他
5 多発性内分泌腫瘍症に伴う副甲状腺機能亢進症 梶 博史
B 副甲状腺癌
1 診断と治療 岡村律子他
C 低カルシウム尿性高カルシウム血症
1 家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)と
後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症(AHH) 槙田紀子他
D 続発性副甲状腺機能亢進症
1 病態と診断 今西康雄他
2 治 療 金井厳太他
E 副甲状腺機能低下症
1 病型分類 大幡泰久他
2 副甲状腺機能低下症および偽性副甲状腺機能低下症の診断 難波範行
3 治 療 田島敏広
4 低マグネシウム血症 堀 倫子
5 偽性および偽性偽性副甲状腺機能低下症の病因 皆川真規
第2章 代謝性骨疾患
第1節 基本的臨床知識
A 検査
1 骨代謝マーカー 三浦雅一他
2 骨代謝マーカー以外の生化学検査 田井宣之他
3 胸腰椎単純X線像 森 史
4 骨密度測定法 曽根照喜
5 腸骨生検 山本智章
第2節 疾患各論
A 骨粗鬆症
1 原発性骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版 山内美香他
2 疫 学 伊木雅之
3 病 態 竹内靖博
4 原発性骨粗鬆症の診断 細井孝之
5 続発性骨粗鬆症の診断 竹内靖博
6 薬剤性骨粗鬆症および薬剤と骨折リスク 木下祐加
7 骨折リスクとしての生活習慣病 金沢一平
8 FRAX® 藤原佐枝子
9 薬物療法①:活性型ビタミンD3 遠藤逸朗
10 薬物療法②:SERM 太田博明
11 薬物療法③:ビスホスホネート 岡田洋右
12 薬物療法④:抗RANKL抗体 井上大輔
13 薬物療法⑤:テリパラチド 金沢一平
14 新しい骨粗鬆症治療薬:抗スクレロスチン抗体とPTHrP誘導体 岩本 潤
15 外科療法 酒井昭典
16 食事療法 上西一弘
17 運動療法 石橋英明
18 リエゾンサービス 鈴木敦詞
B ステロイド性骨粗鬆症
1 ステロイド性骨粗鬆症 岡田洋右
C くる病,骨軟化症
1 くる病の疫学・病態・診断 大幡泰久他
2 くる病の治療 道上敏美
3 骨軟化症の疫学・病態・診断 福本誠二
4 骨軟化症の治療 伊東伸朗
D その他の代謝性骨疾患
1 CKD-MBD 金井厳太他
2 骨Paget病 柏井将文他
3 低ホスファターゼ症 大幡泰久他
III
臨床編 Topics
1 ビタミンD不足・欠乏の臨床的意義 井上大輔
2 家族性副甲状腺機能亢進症 内野眞也
3 原発性副甲状腺機能亢進症と高血圧 立木美香他
4 FGF23と心血管障害 平田結喜緒
5 新規カルシウム感知受容体作動薬 矢野彰三
6 薬剤および放射線と副甲状腺機能異常 木下祐加
7 骨質評価法 山本昌弘
8 骨吸収抑制剤関連の顎骨壊死 田口 明
9 薬剤関連の非定型大腿骨骨折 萩野 浩
10 2型糖尿病における骨折リスク上昇の疫学と機序 笹子敬洋他
11 癌治療関連骨減少―乳癌におけるアロマターゼ阻害剤関連骨減少について― 田口哲也
12 妊娠後骨粗鬆症 寺内公一
13 FGF23/FGFR/Klothoシグナルの骨・ミネラル代謝への関与 坂口和成
14 褐色細胞腫の骨転移 横本真希
索引
ページの先頭へ戻る
序文
改訂第2版 序文
内分泌学の成書では,骨・ミネラル領域に関しては副甲状腺ホルモンに関連した記述が中心となり,疾患としても副甲状腺関連領域が主にとりあげられることになりがちのため,骨代謝疾患やそれに関連するミネラル代謝異常についての記載に物足りなさが残ることが多かった.一方で,骨代謝をテーマとした成書では,内分泌学的な視点が十分に盛り込まれているとはいえないことも多く,特に内科医の目で見た場合に,全身的なシステム制御機構からみた骨代謝についてもう一歩踏み込んだ理解を得たいという感想が残るものが多かった.
このような背景から,内分泌代謝学を網羅的に学びたい医師のために,内分泌学と骨代謝学という2つの視点を融合させ,かつ臨床に即した手引きとなるようなハンドブックとして本書が企画された.本書では,カルシウム・リン・骨代謝という視点から,骨・ミネラル代謝の全体を俯瞰して理解できるように,相互の関係に配慮して記述されている.また,多くの領域にまたがる多彩なトピックについて詳述する項を設け,この分野に関する統合的な理解が進むように配慮されている.
内分泌学の領域は拡大を続けており,今日では,内分泌学が包含する分野は古典的な内分泌臓器から分泌されるホルモンとその障害にとどまらないことは周知の通りである.骨から分泌されるホルモンとして線維芽細胞増殖因子23 (FGF23)が発見されたことで,骨も内分泌臓器として認知されつつある.
また,骨代謝はミネラル代謝と不可分の関係にあり,骨・ミネラル代謝を制御する内分泌システムの解明の進展から,骨代謝をも視野にいれた内分泌学の構築が進められている.従来から,ミネラル代謝には副甲状腺ホルモンやビタミンDが重要な役割を果たすこと,性腺機能低下症は骨吸収を亢進させることにより骨代謝障害をもたらすことなどが知られていた.最近では,骨代謝に関わる細胞生物学および分子生物学の進歩に基づいて,より直接に骨・ミネラル代謝を制御する局所因子が明らかにされ,そのホルモンによる制御についても多くの知見が得られつつある.
骨代謝領域では,骨粗鬆症への対策が世界的に大きな問題となっている.高齢社会が急速に進行する中で,骨折の予防を中心とした高齢者医療はすべての医療従事者にとっての喫緊の課題である.骨折予防という視点に立てば,内科医の果たすべき役割は大きく,特に生活習慣病の診療に重要な責務を担っている内分泌代謝科を専門とする医師は,骨粗鬆症診療に積極的に関わっていくことが求められている.本書は,骨粗鬆症の診療を担うべき内科医のために実践的に役立つ書物としても配慮されている.
内分泌代謝領域の専門家でも骨・ミネラル代謝は不案内であり,自身の専門外と感じる方々も少なくないようであるが,本書を手にとっていただければ,この領域を自家薬籠中のものとしていただけるものと確信している.また,これから内分泌学を学ぼうという皆様にとっては,本書が,骨・ミネラル代謝領域に対する苦手意識を払拭するお役に立つことを願ってやまない.
2019年4月
虎の門病院内分泌センター センター長
竹内靖博