高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版診断と治療社 | 書籍詳細:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改訂委員会 編集
初版 A4判 並製 180頁 2018年12月28日発行
ISBN9784787823755
定価:3,300円(本体価格3,000円+税)冊
改訂第3版では,第2章として,診療上重要度の高いクリニカルクエスチョン7個を設け,それぞれのエビデンスと推奨を示した.第3章の診療マニュアルでは,アップデートに加え,高尿酸血症の新規病型分類,小児の高尿酸血症を追加し,医療者のベストプラクティスと患者の意思決定支援に役立つ診療ツールをめざした.
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目次
●発刊に寄せて
●執筆者一覧
序章
Drug Information
●治療ガイドラインのスウィフトリファレンス
①本治療ガイドライン作成の背景と目的
②本治療ガイドラインの使い方
③治療アルゴリズム・クリニカルクエスチョンと推奨
④高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版の主な変更点
●重要用語の定義,略語一覧
第1章 作成組織・作成方針
1 背景・目的・スコープおよび使用上の注意
2 治療ガイドライン改訂組織
3 重要臨床課題・アウトカムとクリニカルクエスチョン
4 システマティックレビュー,エビデンスの質の評価と推奨作成
5 治療ガイドラインの公開と普及のために
第2章 クリニカルクエスチョンと推奨
CQ1 急性痛風関節炎(痛風発作)を起こしている患者において,NSAID ・グルココルチコイド・コルヒチンは非投薬に比して推奨できるか?
CQ2 腎障害を有する高尿酸血症の患者に対して,尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?
CQ3 高尿酸血症合併高血圧患者に対して,尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?
CQ4 痛風結節を有する患者に対して,薬物治療により血清尿酸値を6.0 mg/dL以下にすることは推奨できるか?
CQ5 高尿酸血症合併心不全患者に対して,尿酸降下薬は非投薬に比して推奨できるか?
CQ6 尿酸降下薬投与開始後の痛風患者に対して,痛風発作予防のためのコルヒチン長期投与は短期投与に比して推奨できるか?
CQ7 無症候性高尿酸血症の患者に対して,食事指導は食事指導をしない場合に比して推奨できるか?
第3章 高尿酸血症・痛風の治療マニュアル
A トレンドとリスク
1 高尿酸血症の定義
2 高尿酸血症のリスク
1)痛風
2)腎障害
3)尿路結石
4)メタボリックシンドローム関連
5)高血圧と脳・心血管病
6)総死亡(含悪性腫瘍)
B 診断
1 尿酸の測定
2 高尿酸血症の病型分類
3 痛風
4 二次性高尿酸血症・痛風
C 治療
1 痛風関節炎と痛風結節
2 尿酸降下薬の種類と選択
3 高尿酸血症
4 腎障害
5 尿路結石
6 高血圧
7 動脈硬化
8 心不全
9 メタボリックシンドローム
10 腫瘍崩壊症候群における高尿酸血症
11 生活指導
12 小児の高尿酸血症
13 医療経済の視点と高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン
付録
① プリン体含量 食品中
② プリン体含量 酒類中
③ 尿酸降下薬一覧表(2018年11月現在)
索 引
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序文
発行に寄せて
この度,『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』を発刊することができました.本ガイドライン(第3版)の作成にご協力いただきました先生方に心より感謝いたします.
本ガイドラインは1996年に日本痛風・核酸代謝学会において,高尿酸血症・痛風の診断・治療に関してのコンセンサス(松澤佑次学会長)が示されたことを受けて,2002年に世界で初めてのエビデンスを網羅した『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第1版)』(細谷龍男委員長)として作成され,痛風の診療を主体としたガイドラインが完成しました.その後,欧米のリウマチ学会から高尿酸血症・痛風治療に関してのガイドラインが相次いで発刊され,同時期に高尿酸血症と臓器障害に関連する疫学ならびに介入研究の報告が急速に増加し,高尿酸血症を臨床現場でどのように扱うかについての議論が進みました.これらの状況を受けて2010年に『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』(山中 寿委員長)が発刊され,特に高尿酸血症を尿酸塩結晶による尿酸沈着症と,無症候の高尿酸血症に分けて,前者に関しては治療の開始基準と治療目標を定めるのに対して,後者に関しては臓器障害ならびに生活習慣病のマーカーとして扱うことが決められました.
現在まで,高尿酸血症は高血圧やメタボリックシンドローム等の生活習慣病,腎障害,脳・心血管イベントの予測因子または危険因子であるという報告が増加する一方で,欧米のリウマチ学会が痛風の診断と治療に関してのガイドラインの改訂を行い,無症候性高尿酸血症の尿酸コントロールを,痛風や腎障害および心血管イベントの予防の目的では行わないとしており,わが国のガイドラインとは異なる点が認められます.
2012年の追補版(日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改訂委員会編集)にも記されたように,近年,フェブキソスタットやトピロキソスタットといった新規のキサンチン酸化還元酵素(XOR)阻害薬が開発され,高尿酸血症単独の診断名で使用できるようになり,これらの薬剤は中等度の腎障害を有する高尿酸血症患者にも用量を変更せずに使用が可能です.
近年,わが国のガイドライン作成の多くが公益財団法人日本医療機能評価機構EBM医療情報事業(Minds)のガイドライン作成法に準じ,クリニカルクエスチョン(CQ)に対して網羅的な文献検索によるエビデンス総体の評価に加え,患者の価値観・希望や医療経済を鑑みて作成される“evidence-based consensus guideline”が主流となっています.無症候性高尿酸血症の段階から治療介入を行うわが国の現状を,エビデンスの益と害のバランスならびに患者の価値観や医療経済の観点から検討し,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を示すことは重要です.これらを踏まえ,『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』を作成し発刊しました.主な改訂点として重要な治療に関する臨床課題から7つのCQとその推奨を作成しました.また高尿酸血症・痛風の診療マニュアルには高尿酸血症の新規病型分類・動脈硬化・心不全・腫瘍崩壊症候群・小児の高尿酸血症・医療経済の項目が新規に追加されました.本ガイドラインを臨床にお役立ていただければ幸甚です.
2018年11月
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』
改訂委員長 久留一郎