前版『タンデムマス・スクリーニングガイドブック』の改訂改題.今版でもコンパクトでわかりやすい見開きの構成はそのままに,内分泌疾患・ガラクトース血症といった新生児マススクリーニング対象疾患に範囲を拡大しました.疾患だけでなく,確定診断に必要な特殊検査や精度管理なども取り上げた,「新生児マススクリーニング」についての理解が深まる1冊です.
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目次
編集者・執筆者一覧
はじめに
新生児スクリーニングに関する基本用語解説
本書で使用される略語一覧
第1章 新生児スクリーニングの概要
1)新生児スクリーニングの概念と歴史
2)マススクリーニング対象疾患とその要件
3)新生児スクリーニングと遺伝倫理
4)新生児スクリーニング検査の流れ
第2章 タンデムマス・スクリーニング対象疾患
1. タンデムマス・スクリーニング検査の概要
1)タンデムマス検査の概要
2)タンデムマス分析とその結果のみかた 重松陽介,湯浅光織
3)タンデムマスによる2次検査 重松陽介,湯浅光織
4)検査に影響する因子 山田健治
2.アミノ酸代謝異常症
1)アミノ酸代謝異常症のスクリーニング概要
2)フェニルケトン尿症(高フェニルアラニン血症)
3)BH4欠損症(悪性高フェニルアラニン血症)
4)マターナルPKU
5)メープルシロップ尿症
6)ホモシスチン尿症(シスタチオニンβ合成酵素欠損症)
7)高メチオニン血症(MAT欠損症)
8)高チロシン血症Ⅰ型
3.尿素回路異常症
1)尿素回路異常症のスクリーニング概要
2)シトルリン血症Ⅰ型 呉 繁夫,坂本 修
3)アルギニノコハク酸尿症 呉 繁夫,坂本 修
4)アルギニン血症 呉 繁夫
5)シトリン欠損症 大浦敏博
4. 有機酸代謝異常症
1)有機酸代謝異常症のスクリーニング概要
2)メチルマロン酸血症(メチルマロニル-CoAムターゼ欠損症)
3)ビタミンB12反応性メチルマロン酸血症(コバラミン代謝異常)
4)プロピオン酸血症
5)イソ吉草酸血症
6)メチルクロトニルグリシン尿症
7)3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸血症
8)マルチプルカルボキシラーゼ欠損症
9)グルタル酸血症Ⅰ型 深尾敏幸
10)βケトチオラーゼ欠損症(T2欠損症)
11)HSD10病 笹井英雄,深尾敏幸
5. 脂肪酸代謝異常症
1)脂肪酸代謝異常症のスクリーニング概要
2)中鎖アシル―CoA脱水素酵素(MCAD)欠損症
3)極長鎖アシル―CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症
4)短鎖アシル―CoA脱水素酵素(SCAD)欠損症
5)ミトコンドリア三頭酵素(TFP)欠損症
6)カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅠ(CPT1)欠損症
7)カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅡ(CPT2)欠損症
8)カルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠損症
9)グルタル酸血症Ⅱ型
10)グルタル酸血症Ⅱ型の特殊型(リボフラビン代謝異常症)
11)全身性カルニチン欠乏症(OCTN2異常症)
12)後天性カルニチン欠乏症
第3章 内分泌疾患
1. 甲状腺機能低下症(CH)
1)甲状腺機能低下症のスクリーニング概要
2)原発性甲状腺機能低下症
3)中枢性甲状腺機能低下症
4)先天性甲状腺機能低下症の遺伝子異常
5)環境因子による甲状腺機能低下症
2. 先天性副腎過形成症(CAH)
1)副腎疾患のスクリーニング概要
2)21―水酸化酵素欠損症
3)21―水酸化酵素欠損症以外の先天性副腎過形成症
第4章 ガラクトース血症
1)高ガラクトース血症のスクリーニング概要
2)ガラクトース血症Ⅰ型
3)ガラクトース血症Ⅱ型
4)ガラクトース血症Ⅲ型
5)ガラクトース血症Ⅳ型
6)高ガラクトース血症:その他の疾患
第5章 確定診断のための特殊検査
1)スクリーニング陽性者への対応と確定診断
2)プテリジン分析
3)ホモシスチン測定
4)タンデムマス分析(LC―MS/MS,血清分析)
5)GC/MS有機酸分析
6)アミノ酸分析
7)酵素活性測定
8)In vitro probe assay
9)遺伝子診断,遺伝子型とテイラーメイド治療
10)有機酸・脂肪酸代謝異常症の出生前診断
11)内分泌疾患の特殊検査
第6章 新生児スクリーニングの精度管理
1)新生児スクリーニングの精度(品質)保証システム
2)新生児スクリーニングの外部精度管理
3)タンデムマス・スクリーニングの内部精度管理
4)タンデムマス対象疾患以外の内部精度管理
第7章 新生児スクリーニングのコンサルテーション
1)タンデムマス・スクリーニング(TMS)コンサルテーションセンター
2)これまでに相談のあったいくつかのQ&A
appendix
1)タンデムマス分析におけるMRMイオン一覧
2)おもな診断マーカーのカットオフ参考値(血液濾紙)
3)血清アシルカルニチン測定の基準値
4)尿中有機酸の基準値(GC/MS分析)
5)ガラクトース関連の基準値
6)内分泌関連の基準値
7)小児慢性特定疾病と指定難病
8)先天性代謝異常症の患者会
9)役に立つサイト情報
索引
編者略歴
memo
1 患者追跡項目の例
2 タンデムマス・スクリーニングで発見される軽症型シトルリン血症(mild citrullinemia)
3 アルギニン血症の新しい治療
4 シトリン欠損症患者はなぜピーナッツを好むのか?
5 シトリン欠損症患者の禁忌は?
6 NICCDは新生児スクリーニング(NBS)でみつかるのですか?
7 シトリン欠損症の最近の話題―迅速簡便な遺伝子変異スクリーニング法
8 メチルマロン酸の増加する疾患と異常代謝産物の量
9 イソ吉草酸血症発見の歴史的意味について考えてみよう
10 NBSを契機に発見される母体メチルクロトニルグリシン尿症(MCC欠損症)への対応
11 NBSでの偽陽性を減らすために―母親の内服薬,栄養状態への配慮
12 グルタル酸血症Ⅰ型の多発地域
13 中鎖アシル-CoA脱水素酵素(MCAD)欠損症では酵素が欠損しているのに安定期に症状がないのはどうして?
14 短鎖アシル-CoA脱水素酵素(SCAD)欠損症と紛らわしい「エチルマロン酸脳症」とはどんな病気?
15 長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素(LCHAD)単独欠損症とミトコンドリア三頭酵素(TFP)欠損症の関係
16 カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅠ(CPT1)欠損症でも全身性カルニチン欠乏症でもアシルカルニチンが低下するのはなぜ?
17 TSH,FT4,17―OHPのマルチプレックス測定法の開発
18 CH遺伝子変異のトピックス
19 ガラクトース血症における白内障の発症機序
20 Fanconi―Bickel症候群
21 濾紙血中アシルカルニチンと血清中アシルカルニチンの違い
22 精度,正確度,精密度
23 新生児スクリーニング(NBS)の精度管理関連のおもな用語
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序文
はじめに
新生児マススクリーニング事業は,小児の障害発生予防を目的として1977年から全国実施されています.ガスリー法を中心に始まり,先天性甲状腺機能低下症(1979年),先天性副腎過形成症(1989年)などが加わり,従来6疾患を対象に行われていました.
その後タンデムマス法の導入によって対象疾患は飛躍的に拡大しました(2014年より全国実施.現在20疾患対象).しかし対象疾患の種類は多くなった反面,個々の疾患頻度はきわめて低いため,小児科専門医といえども診断・治療の進め方について戸惑うこともあります.こういった現場からの声にこたえて,2013年に『タンデムマス・スクリーニングガイドブック』(診断と治療社)を刊行したところ,大変好評をいただきました.
一方,新生児マススクリーニングでは,タンデムマス対象疾患のみならず,世界的に最も発見頻度の高い先天性甲状腺機能低下症,および先天性副腎過形成症,ガラクトース血症が対象となっています.そこで今回,前書『タンデムマス・スクリーニングガイドブック』の改訂拡大版として,全対象疾患を網羅した『よくわかる新生児マススクリーニングガイドブック』を刊行しました.本書では,新生児スクリーニング対象疾患の診療に役立つ情報,知っておくべき周辺知識などが書かれています.本書が新生児マススクリーニングの医療現場で役立つことを祈念します.
最後に本書の刊行にあたり,企画,編集等にご協力いただきました診断と治療社の堀江康弘氏,寺町多恵子氏,青山祐太郎氏,さらに執筆に快くご協力いただいた各分野のエキスパートの先生方に心よりお礼申し上げます.
2019年10月
日本マススクリーニング学会理事長
島根大学医学部小児科学特任教授
山口清次