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副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2019診断と治療社 | 書籍詳細:副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2019

日本先天代謝異常学会 編集

初版 B5判 並製ソフトカバー 2色刷 64頁 2019年11月01日発行

ISBN9784787823915

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
  

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厚労省研究班と日本先天代謝異常学会の協働によるエビデンスに基づくガイドライン.本症が希少疾患でかつ症例ごとの臨床経過が多様であることを踏まえて,多くの専門家の意見と科学的根拠に基づく医療のバランスのもとに作成された.早期治療が極めて重要な本症の疾患情報を広く周知して早期診断につなげるとともに,発症前診断の重要性の共有も目指している.難病指定医,さらには一般診療医の先生方にお役立ていただきたい.

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目次

序文
診療ガイドラインの刊行にあたって
診療ガイドラインの編集にあたって
診療ガイドラインの作成方法に関して
本ガイドラインの使用上の注意
作成組織

I 疾患概要
 定義
 疫学
 病因・病態
  1 生化学的異常
  2 脱髄の発症機序
  3 AMNとAbcd1ノックアウトマウス
 症状
  1 小児大脳型(CCALD),思春期大脳型(AdolCALD)
  2 adrenomyeloneuropathy(AMN)
  3 成人大脳型(ACALD)
  4 小脳・脳幹型
  5 アジソン型
  6 女性発症者
 予後
  1 小児大脳型(CCALD)
  2 思春期大脳型(AdolCALD)
  3 adrenomyeloneuropathy(AMN)
  4 成人大脳型(ACALD)
  5 小脳・脳幹型
  6 アジソン型
  7 発症前男性患者
  8 女性発症者

II 診断基準
 主要症状および臨床所見
  1 精神症状
  2 知能障害
  3 眼科的所見
  4 歩行障害
  5 錐体路徴候
  6 感覚障害
  7 自律神経障害
  8 副腎不全症状
 参考となる検査所見
  1 極長鎖脂肪酸検査
  2 画像診断(頭部MRI,頭部CT)
  3 神経生理学的検査
  4 神経心理学的検査
  5 副腎機能検査
  6 遺伝子解析
  7 病理所見
 鑑別診断
  1 小児
  2 成人
 確定診断

III 治  療
 ロレンツォオイル
 造血幹細胞移植
 AMNおよび女性発症者
 副腎皮質ホルモン補充療法

IV 治療に関するクリニカルクエスチョン(CQ)
 CQ1 副腎白質ジストロフィーにロレンツォオイルの投与は推奨されるか?
 CQ2 小児・思春期大脳型の移植をどのように判断したらよいか?
 CQ3 発症前の移植をどのように判断したらよいか?
 CQ4 成人大脳型の移植をどのように判断したらよいか?

V 早期診断・発症前診断の推奨
 発症後早期診断の推奨
 発端者の家系解析からat risk患者診断の推奨
 発症前患者の長期フォローアップ指針

VI 予後・療育

VII 最近のトピックス
 造血幹細胞移植後のミエロパチーの発症
 ALDの遺伝子治療
 ALDの新生児マススクリーニング
 病態解明研究の最先端

引用文献
関連資料・リンク先
ALD診療支援・相談に関する情報

索引

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序文

序文
 副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy;ALD)はX連鎖劣性遺伝性疾患であり,ペルオキシソーム病に分類されます.しかしながら,厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班」では,ライソゾーム病31疾患に加え,ALDの診療ガイドラインの作成も行うことを2015年6月の班会議で決定し,2017年3月に非売品の『副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2017』(同研究班ホームページにて公開中)が発刊されました.
 ALDはABCD1遺伝子の異常を病因とする中枢神経系の脱髄と副腎不全を主症状とした先天代謝異常症です.その発症年齢は小児から成人と幅が広く,小児大脳型,adrenomyeloneuropathy(AMN),成人大脳型,アジソン型など多彩な臨床病型が存在し,また臨床経過や予後も多様です.これらの病型のうち,大脳型は発症早期の造血幹細胞移植が,現在,唯一の有効な治療法とされており,早期診断と早期治療が極めて重要です.そのため,本症を広く啓発していく必要があります.
 ALDに関しては,これまで『副腎白質ジストロフィー診療ハンドブック2013』が2013年に,『ライソゾーム病・ペルオキシソーム病 診断の手引き』が2015年に,そして前述の『副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2017』が2017年に発刊されています.このうち『副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2017』には疾患概要・診断基準が詳細に記載され,また治療に関するクリニカルクエスチョン(CQ)が提示されており,実地臨床上,有用性の高いガイドラインでしたが非売品でした.今回,日本先天代謝異常学会の診断基準・診療ガイドライン委員会,そして同理事会による審査・承認を経て,一部を修正したうえで学会編集の形で『副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2019』として上梓されたことにより,医療従事者の方々にご覧いただけるようになりました.
 本ガイドラインが,ALDの診療に携わる一般小児科医,小児神経科医,神経内科医,精神科医,皮膚科医,内分泌専門医,眼科医,臨床遺伝専門医の先生方の実地臨床の場で役立つことを願っています.
 最後になりましたが,本ガイドラインの作成にご尽力いただいた厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班」研究代表者の衞藤義勝先生,同研究班ALD診療ガイドライン作成委員会の下澤伸行委員長,執筆・編集委員,システマティックレビュー(SR)委員,担当委員,作成協力者の先生方,日本先天代謝異常学会事務局長の櫻井 謙先生に深謝いたします.

 2019年9月吉日
 
日本先天代謝異常学会
理事長 井田博幸(東京慈恵会医科大学)



診療ガイドラインの刊行にあたって
 副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy;ALD)は「副腎白質変性症」とも呼ばれ,様々な臨床症状を呈するX連鎖遺伝性疾患であり,急激な経過により寝たきりになる小児型,数十年の経過をとり神経障害を呈するadrenomyeloneuropathy(AMN)など多彩な病態を示します.
 厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班」(研究代表者 衞藤義勝)では,ライソゾーム病31疾患,ALD,ペルオキシソーム病の診療ガイドライン作成事業の一環として,平成27年度6月の班会議において下澤伸行教授(岐阜大学)をALD診療ガイドライン作成委員会の委員長に指名し,本分野の専門家21名に執筆・編集委員,システマティックレビュー(SR)委員,担当委員,作成協力者として加わっていただき,『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』(以下,Minds)に示された手法に基づく,わが国初のALDの診療ガイドラインである『副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2017』(非売品.当研究班ホームページにて公開中)を約1年6か月の歳月をかけて作成しました.同ガイドラインの刊行目的は,科学的根拠に基づき,系統的な手法により作成された推奨をもとに患者と医療者を支援し,臨床現場における意思決定の判断材料の1つとして日常診療にお役立ていただくことです.ALDという疾患の性質上,Mindsの手法に則って診療ガイドラインを作成することは,文献数,症例数の少なさから評価,選定がむずかしいところもありましたが,可能なかぎりMindsの精神に沿うように努めました.
 今回,同ガイドラインは日本先天代謝異常学会による学会審査を経て,装いも新たに『副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2019』として書店に並ぶことになりました.『副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2017』から内容の変更はあまりありませんが,より多くの先生方にALDを知っていただく機会が増えたことを大変嬉しく思います.
 最後に,本ガイドラインの作成を主導していただいた当研究班ALD診療ガイドライン作成委員会の下澤伸行委員長,Mindsの手法を絶えずご指導いただいた(公財)日本医療機能評価機構の森實敏夫先生,学会審査における過程でご尽力いただいた日本先天代謝異常学会の井田博幸理事長,診断基準・診療ガイドライン委員会の大竹 明委員長,中村公俊副委員長,深尾敏幸副委員長,事務局長の櫻井 謙先生をはじめ,多くの皆様に感謝申し上げます.
 本ガイドラインが,難病診療に携わる難病指定医,さらには一般診療医の先生方,医療従事者の方々のお役に立つことを祈念いたします.
 
 2019年9月吉日

厚生労働省難治性疾患等政策研究事業
「ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班」
研究代表者 衞藤義勝(東京慈恵会医科大学)



診療ガイドラインの編集にあたって
 副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy;ALD)は,中枢神経系の脱髄と副腎皮質機能不全を特徴とするX連鎖性の遺伝疾患で,厚生労働省の指定難病に認定されています.本症は多彩な臨床像を呈し,発症も小児期から成人期にわたるため,患者は多くの診療科を受診し,診断に難渋することも少なくありません.また,発症前に遺伝子型を同定しても臨床病型や予後の予測は困難で,重篤な大脳型の発症機序もほとんど解明されていません.
 その大脳型では発症早期の造血幹細胞移植が唯一の有効な治療法であり,できるだけ早期に診断し,早期に治療する必要があります.一方,進行例では移植を行っても急速に進行することがあり,その適応を判断する際には移植自体のリスクもあり,主治医や家族にとって厳しい選択を迫られることになります.また本症では思春期以降に脊髄症状にて発症するadrenomyeloneuropathy(AMN)や副腎不全のみを呈する型,女性保因者でも発症するなど,同一家系内でも共通しない多彩な病型を有しており,診断,治療,療育・療養から遺伝相談に至るまで多くの課題を有しています.その一方で,移植技術の向上や遺伝子治療,新生児マススクリーニング,さらには病態解明研究においても新たな展開がみられています.
 ALDの克服には,主治医や移植医をはじめとする多領域の関係者がこれらの課題や知見を共有して取り組んでいくことが重要であり,そのための診療ガイドラインの作成や診療ネットワークの構築は臨床現場からも喫緊の課題として求められてきました.
 本ガイドラインでは,これらの現状と本症が希少疾患でかつ症例ごとの臨床経過が多様であることを踏まえて,多くの専門家の意見(expert opinion)と科学的根拠に基づく医療(evidence-based medicine;EBM)のバランスのもとに作成しています.早期治療が極めて重要なALDの疾患情報を広く周知して早期診断につなげるとともに,発症前診断の重要性の共有も目指し,さらには多岐にわたる専門領域の連携が重要であることから,最新の診療情報と国内診療ネットワーク情報を提供しています.国内のどの地域における医療関係者もALDを正しく理解し,最新知見に基づく診療がなされ,患者の予後改善に寄与することを目的としています.
 本ガイドラインの作成にご尽力いただいた作成委員会,ならびに作成協力者の先生方,さらには学会審査・承認を受けて,新たに『副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2019』として上梓するにあたり,ご尽力いただいた日本先天代謝異常学会の井田博幸理事長,診断基準・診療ガイドライン委員会の大竹 明先生,中村公俊先生,深尾敏幸先生,学会事務局長の櫻井 謙先生をはじめ,多くの先生方に感謝の意を表します.
 本ガイドラインは,全国のALDの患者さんとそのご家族,主治医の先生をはじめとする多くの皆様の様々な思いとご協力により得られた知見をもとに作成されています.ここに,あらためて感謝を申し上げるとともに,本ガイドラインが臨床現場を通じてALDの患者さんやご家族の幸せにつながることを心より願っています.
 
 2019年9月吉日
厚生労働省難治性疾患等政策研究事業
「ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班」
副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン作成委員会
委員長 下澤伸行(岐阜大学)