言語聴覚士を目指す学生向けの問題集『言語聴覚士ドリルプラス』シリーズ3冊目.本ドリルは高齢社会の加速に伴い今後ますます重要な分野となってくる摂食嚥下障害をテーマとし,イラストや写真を多数用いて幅広い領域をカバーした問題集になっています.もし初めて目にする用語があっても,主要用語は「読み解くためのKeyword」として解説!実習や国試までずっと役立つ問題集です.まずは,授業で学んだ内容をドリル形式の問題でおさらいしてみてください!
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目次
刊行にあたって…大塚裕一
摂食嚥下障害を学ぶ・考える・極めるために…福岡達之
編集者・著者紹介
本ドリルの使い方
第1章 摂食嚥下障害の歴史
1 摂食嚥下障害の歴史
第2章 摂食嚥下障害の基礎
1 摂食嚥下障害の定義
①定義,脳卒中,神経筋疾患
②器質性,認知症,高次脳機能障害
③小児
2 摂食嚥下障害にかかわる解剖と生理
①メカニズム
②嚥下の神経機構ほか
③摂食嚥下に関する筋群,食道
④各部の解剖学的名称
⑤各部の解剖学的名称
⑥各部の解剖学的名称
⑦摂食嚥下機能の発達
⑧加齢(老化)による摂食嚥下機能の変化
3 摂食嚥下障害の基礎症状
第3章 摂食嚥下障害の臨床
1 摂食嚥下障害の評価
①基本情報の収集ほか
②簡易検査および総合的検査
③嚥下造影検査
④嚥下造影検査
⑤嚥下内視鏡検査
⑥その他の検査
2 摂食嚥下障害の訓練
①間接訓練
②間接訓練
③直接訓練
④栄養管理
⑤嚥下調整食,とろみ調整食品ほか
⑥気管切開とその管理ほか
⑦手術的治療
⑧救急法の基礎知識
第4章 摂食嚥下障害の環境調整
1 摂食嚥下リハビリテーションのチームアプローチ
文 献
採点表
索 引
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序文
刊行にあたって
現在わが国には,およそ70校の言語聴覚士の養成校が存在します。言語聴覚士法(1997年)の成立時にはその数は数校程度だったのですが,20年あまりで増加し,県によっては複数校存在しているという状況になっています。言語聴覚士の養成は,さかのぼれば1971年,日本初の言語聴覚士養成校である国立聴力言語障害センター附属聴能言語専門職員養成所での大卒1年課程の開設が記念すべきスタートになるかと思います。その後,開設された養成校の養成課程は,高卒3年課程や高卒4年課程の専門学校,大学での4年課程,大卒を対象とした2年課程などさまざまで,今後これらの課程に加え専門職大学での養成課程が加わろうとしています。
言語聴覚士法が制定されてから,この約20年間での言語聴覚士にかかわる学問の進歩は著しく,教育現場で修得させなければならない知識・技術は増大する一方です。しかしながら入学してくる学生は,千差万別で従来の教育方法では十分な学習が困難となってきている状況もあります。
今回,このような状況を改善する方策の1つとして,修得すべき基本知識を体系的に示したドリルを作成してみました。内容は,言語聴覚士の養成校で学ぶべき言語聴覚障害を専門領域ごとにまとめてシリーズ化し,領域ごとのドリルの目次は統一したものとし,目次を統一したことで領域ごとの横のつながりも意識しやすくなるようにしました。
特徴としては
①すべての養成課程の学生を対象にしたドリルであること
②日々の専門領域講義の復習のみならず,実習,国家試験にも対応できる基本的な内容を網羅していること
③専門領域ごとにまとめたドリルであるが目次が統一されており,領域ごとの横のつながりが意識しやすいこと
などがあげられます。
対象は学生ということを念頭においてシリーズ化したのですが,臨床現場で活躍されている言語聴覚士にも,基本的な知識の整理という意味で使用していただくことも可能かと考えています。
最後に,この『ドリルプラス』シリーズが有効活用され言語聴覚士養成校の学生の学びの一助となることを期待します。
平成30年11月
大塚裕一
摂食嚥下障害を学ぶ・考える・極めるために
一般社団法人日本言語聴覚士協会が有職者14,820人に調査した「各対象領域で働く言語聴覚士」(http://www.jaslht.or.jp/work.html,2018年3月末)によると,8割以上(12,483人)の言語聴覚士が摂食嚥下を対象に臨床を行っている.成人言語・認知(12,375人)や発声・発語(11,097人)の領域よりも多い結果であり,この傾向は今後も増え続けることが予想される.
摂食嚥下障害は,わが国の高齢社会の進展・加速につれて,これからますます重要な課題になることは間違いない.摂食嚥下障害を抱える人は,病院だけでなく高齢者施設や在宅にも多く存在し,疾患や老化に伴うものなど原因や重症度もさまざまである.こうした摂食嚥下障害の問題に対しては,多職種協同によるチームアプローチが重要であるが,そのなかでも言語聴覚士は中心的な役割を担っており,チームからの期待も大きい.言語聴覚士として,摂食嚥下障害を抱える患者を支援したいという熱意をもつことは大切だが,思いだけで患者を救うことはできないし,プロフェッショナルにもなれない.摂食嚥下障害へ適切に対応するためには臨床での豊富な経験が必要なのはいうまでもないが,摂食嚥下障害についての基礎的な知識をもっていることが前提である.私自身,臨床に出て間もない新人の頃は目の前にいる患者をどうやって評価し,どんな訓練をすればよいのか,必要な情報は何なのかがわからず,今からすれば考えるための基礎的な知識があまりに乏しかったように思う.
本ドリルは言語聴覚士の養成校・コースに在籍し,言語聴覚士国家試験の受験を予定している学生をおもな読者対象としている.内容は摂食嚥下の基礎知識,嚥下障害の評価・訓練,嚥下障害に関連するさまざまな対応等を網羅しており,授業で学んだ知識の再整理だけでなく,実習や将来の臨床に役立つものになるよう心がけた.また,本シリーズの最大の特徴であるドリル形式は,問題を読み解きながら必要な知識が自然に身につくよう工夫されている.問題の多くは,摂食嚥下障害の初学者を想定した標準的なレベルに設定しているが,臨床(実習)で実践できる知識を修得してもらいたいという意図から,一部はやや難解で幅広い領域をカバーした内容となっている.読者がはじめて目にする用語や領域があれば,「読み解くためのKeyword」をヒントに,さらなる知識の獲得に努めてもらえれば幸いである.
将来の臨床現場では,高度で幅広い知識と技術を求められるであろう.養成校・コースで学ぶ知識は基礎ではあるが,ここがしっかりと身についているかどうかによって,臨床での学び方やその後の成長に差が出てくる.本ドリルが摂食嚥下障害に関する知識の修得や国家試験の対策だけでなく,将来の臨床に役立つことを切に願っている.
最後に,本ドリルの企画と編集をご担当いただきました熊本保健科学大学・大塚裕一准教授ならびに執筆期間中に大学院でご指導をいただきました兵庫医科大学リハビリテーション医学教室・道免和久主任教授,および診断と治療社の関係各位に衷心より御礼申し上げます.
平成31年1月
福岡達之