小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020診断と治療社 | 書籍詳細:小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020
日本小児腎臓病学会 監修
難治性疾患政策研究事業「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」(厚生労働科学研究費補助金) 作成
初版 B5判 並製 128頁 2020年09月30日発行
ISBN9784787823977
定価:3,520円(本体価格3,200円+税)冊
小児腎臓病領域で最も重要な疾患の一つである小児特発性ネフローゼ症候群の診療ガイドラインを7年ぶりに改訂.「第Ⅰ章 総論」に疾患概念・病因,定義,腎生検の適応,疫学,予後,遺伝学的検査をまとめ,「第Ⅱ章 治療」では薬物療法に厳選したCQによる解説を,また一般療法についても最新のエビデンスを加え,さらに日常診療に役立つ付記も掲載した.小児科医・腎臓内科医必携の書.
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目次
刊行にあたって
序文
小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020 委員一覧
本ガイドライン2020の作成について
CQ・推奨一覧
第Ⅰ章 総論
1 疾患概念・病因
2 定義
3 腎生検
4 疫学
5 予後
6 遺伝学的検査
第Ⅱ章 治療
◉小児特発性ネフローゼ症候群の病型と治療の概略図
1 治療総論
2 各論
A.ステロイド感受性ネフローゼ症候群の治療
CQ1 小児特発性ネフローゼ症候群の初発時治療において,プレドニゾロンは8週間治療(ISKDC法)と
12週間以上治療(長期漸減法)のどちらが推奨されるか
B.頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群の治療
CQ2 小児頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群に対して免疫抑制薬は推奨されるか
C.難治性頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群の治療
CQ3 小児期発症難治性頻回再発型・ステロイド依存性ネフローゼ症候群に対しリツキシマブ治療は
推奨されるか
D.ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の治療
CQ4 小児ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に対して免疫抑制薬は推奨されるか
E.ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の追加治療
F.小児特発性ネフローゼ症候群の長期薬物治療
3 一般療法
A.浮腫の管理
B.食事療法
C.ステロイド副作用:骨粗鬆症
D.ステロイド副作用:成長障害
E.ステロイド副作用:眼科合併症
F.予防接種と感染予防
G.移行医療
付記1 柑橘類摂取がカルシニューリン阻害薬血中濃度に与える影響
付記2 コエンザイムQ10
付記3 脂質異常症
付記4 血栓症
付記5 高血圧
付記6 医療助成制度
CQ・文献検索式
索引
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序文
刊行にあたって
本ガイドラインは,難治性疾患政策研究事業「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」(厚生労働科学研究費補助金)(研究代表者:石倉健司先生)の事業として,日本小児腎臓病学会の監修により作成されました.
本ガイドラインは,2013年に日本小児腎臓病学会の事業として公表・出版された「小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2013」の改訂版となりますが,改訂に際しては,いくつかの改良点や特徴があります.
まず,本ガイドラインは,「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」に可能な限り準拠して作成されました.本ガイドラインで取り上げられたクリニカルクエスチョン(CQ)はいずれも厳選されたものであり,システマティックレビューでエビデンスが評価され,推奨グレード(推奨の強さとエビデンス総体の強さ)が示されています.
次に,本ガイドラインでは,作成初期の段階から,成人診療科(腎臓内科)の丸山彰一先生にご参画いただきました.近年の報告により,小児期発症ネフローゼ症候群患者の約20~50%は小児期に治癒せず成人期に達することが明らかにされています.そのため,本ガイドラインでは,小児期発症ネフローゼ症候群患者の移行医療に十分に配慮しているのが特徴の一つです.
本ガイドラインは,2013年のガイドラインで記載された薬物療法や一般療法の改訂に加えて,総論として,疾患概念・病因,定義,腎生検の適応,疫学,予後,そして遺伝学的検査の意義と適応が,さらに付記として,柑橘類摂取がカルシニューリン阻害薬血中濃度に与える影響,コエンザイムQ10欠乏症に対する治療,ネフローゼ症候群の合併症(脂質異常症,血栓症,高血圧),医療助成制度がまとめられています.いずれの事項も最新の知見が,簡潔・明瞭に記述されており,小児の腎臓専門医のみならず成人の腎臓専門医,さらに一般小児科や成人診療科の先生方の日常診療に大いに役立ち,さまざまな場面で活用されるものと確信しております.
最後に,本ガイドラインの作成にご尽力いただいた作成委員のメンバーや関係者の皆様に心より敬意を表し,また深く感謝申し上げます.
2020年3月
一般社団法人 日本小児腎臓病学会 理事長
服部元史
序文
このたび,「小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」の刊行にあたり一言ご挨拶申し上げます.小児特発性ネフローゼ症候群に対する日本小児腎臓病学会の最初のガイドラインは,2005年に作成された「小児特発性ネフローゼ症候群薬物治療ガイドライン1.0版」です.その8年後,「小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2013」として改訂を行い,書籍刊行をいたしました.今回さらに最新知見とトピックを加え,難治性疾患政策研究事業「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」(厚生労働科学研究費補助金)と日本小児腎臓病学会が協力のうえ,「小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」として刊行いたします.
小児特発性ネフローゼ症候群は,小児腎臓病領域で最も重要な疾患の一つです.本疾患は,わが国を含むアジアで頻度が高いことが近年の疫学研究で明らかになってきました.免疫抑制療法の発達によりかなり寛解率や再発のコントロールが改善してきましたが,いまだに難治例が存在します.そして患者の方々は,高度な浮腫や急性腎障害,高血圧,血栓症,感染症など様々な病態のため,その生活は大きく脅かされます.また寛解状態や再発抑制の多くは薬剤依存性であり,非常に長期間の療養を要します.
本ガイドラインは臨床医に対し,上に述べた小児特発性ネフローゼ症候群の診療上の問題点に関しての最新のエビデンスとそれに基づく推奨を示すことを目的に作成されました.そしてそれぞれの内容に応じて,クリニカルクエスチョン(CQ)形式と記述形式にて記載しました.薬物療法に関しては様々なエビデンスもあり,CQ形式で問題点に対してダイレクトに答えるようにしています.一方必ずしもCQ形式になじまないような疫学的な事項や,あるいはまだエビデンスが乏しい一般療法に関しては記述的に説明する形式をとりました.
さらに今回は,遺伝学的検査,移行医療などを積極的に取り上げました.これは単に小児特発性ネフローゼ症候群の診療にとどまらず,近年の小児医療の進歩,変化を反映したものです.予防接種に関する記述も,前回のガイドラインよりさらに詳細な記載としました.また付記でも様々なトピックを取り上げ,免疫抑制療法にとどまらない小児特発性ネフローゼ症候群診療の様々な側面をカバーし,複雑な診療を支援することを心がけました.
最後になりますが,本ガイドラインには多くのわが国発のエビデンスが取り上げられています.これはひとえに,長年,日本小児腎臓病学会が取り組んできたものの輝かしい成果だといえます.このように本学会のこれまでの努力が大きく反映された本ガイドラインが,少しでも小児特発性ネフローゼ症候群診療に貢献できることを祈念しています.
2020年3月
難治性疾患政策研究事業
「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」
(厚生労働科学研究費補助金)
研究代表者
石倉健司