学校心臓検診の心電図約5万枚を対象に4年以上の歳月をかけ,現代の小児の体形や発育に合わせた小児心電図の正常値を検討.わが国における新たな正常値を設定し,学校心臓検診に携わる医師や小児循環器医に指針を示します.
最近注目されているJ波症候群や2019年に改訂された「学校心臓検診 2次検診対象者抽出のガイドライン」についても解説.小児心電図の正常値を考える際に必携の1冊!
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目次
序
執筆者一覧
I.イントロダクション
1.『学校心臓検診のための小児心電図正常値ガイドブック』作成のねらい
2.頻出用語とその解説
II.小児心電図基準値
1.基準値作成方法
(1)心電図自動解析の概要
(2)心電図波形の定義
1 P波/2 QRS波/3 QRS波加算値/4 ST部分/5 T波/6 QT間隔
(3)統計学的解析
(4)基準値作成における対象心電図の選択
2.心拍数,RR間隔
3.QRS軸
4.PR間隔
5.QRS幅
6.心室興奮到達時間(VAT)
7.P波
(1)P1波高,P2波高
(2)P時間(P波幅)
8.Q波
9.R波高
10.S波高
11.QRS波加算値
12.各誘導別QRS幅
13.ST部分
14.T波
15.QT間隔
16.フィルターの有無による心電図波形の変化
III.学校心臓検診2次検診対象者抽出のガイドライン(2019年改訂)
1.学校心臓検診2次検診対象者抽出のガイドライン(2019年改訂)について
2.学校心臓検診2次検診対象者抽出のガイドライン―1次検診の心電図所見から―(2019年改訂)
3.学校心臓検診2次検診対象者抽出のガイドライン(2019年改訂)の解説
1 Q波/2 QRS軸/3 R・S波,加算値/4 ST接合部およびST区間/5 T波/6 房室伝導/
7 心室内伝導/8 調律
付録
1.心拍数のヒストグラム/2.RR間隔のヒストグラム/3.QRS軸のヒストグラム/
4.PR間隔のヒストグラム/5.QRS幅のヒストグラム/6.VAT(V5)のヒストグラム/
7. VAT(V6)のヒストグラム/8.II誘導におけるP1波高のヒストグラム/
9.V1誘導におけるP1波高のヒストグラム/10.V1誘導におけるP2波高のヒストグラム/
11.小学1年生男子における誘導ごとのP時間のヒストグラム/
12.小学1年生女子における誘導ごとのP時間のヒストグラム/
13.中学1年生男子における誘導ごとのP時間のヒストグラム/
14.中学1年生女子における誘導ごとのP時間のヒストグラム/
15.高校1年生男子における誘導ごとのP時間のヒストグラム/
16.高校1年生女子における誘導ごとのP時間のヒストグラム/
17.II誘導におけるR波高のヒストグラム/18.V1誘導におけるR波高のヒストグラム/
19.V5誘導におけるR波高のヒストグラム/20.V6誘導におけるR波高のヒストグラム/
21.V1誘導におけるS波高のヒストグラム/22.SV1+RV5のヒストグラム/
23.SV1+RV6のヒストグラム/24.I誘導におけるQRS幅のヒストグラム/
25.aVF誘導におけるQRS幅のヒストグラム/26.V1誘導におけるQRS幅のヒストグラム/
27.V6誘導におけるQRS幅のヒストグラム/28.高校1年生男子のSTJヒストグラム(肢誘導)/
29.高校1年生男子のSTJヒストグラム(胸部誘導)/30.小学1年生男子のT1値のヒストグラム(肢誘導)/
31.小学1年生男子のT1値のヒストグラム(胸部誘導)/32.小学1年生女子のT1値のヒストグラム(肢誘導)/
33.小学1年生女子のT1値のヒストグラム(胸部誘導)/34.中学1年生男子のT1値のヒストグラム(肢誘導)/
35.中学1年生男子のT1値のヒストグラム(胸部誘導)/36.中学1年生女子のT1値のヒストグラム(肢誘導)/
37.中学1年生女子のT1値のヒストグラム(胸部誘導)/38.高校1年生男子のT1値のヒストグラム(肢誘導)/
39.高校1年生男子のT1値のヒストグラム(胸部誘導)/40.高校1年生女子のT1値のヒストグラム(肢誘導)/
41.高校1年生女子のT1値のヒストグラム(胸部誘導)
■本書中の主要表一覧
◎心拍数,RR間隔の統計値,パーセンタイル値
◎QRS軸の統計値およびパーセンタイル値
◎PR間隔の統計値およびパーセンタイル値
◎QRS幅の統計値およびパーセンタイル値
◎心室興奮到達時間(VAT)の統計値,パーセンタイル値
◎II誘導におけるP1の統計値,パーセンタイル値(mV)
◎V1誘導におけるP1の統計値,パーセンタイル値(mV)
◎V1誘導におけるP2の統計値,パーセンタイル値(mV)
◎小学1年生男子のP時間(ms)
◎小学1年生女子のP時間(ms)
◎中学1年生男子のP時間(ms)
◎中学1年生女子のP時間(ms)
◎高校1年生男子のP時間(ms)
◎高校1年生女子のP時間(ms)
◎Q波高(mV)
◎Q波幅(ms)
◎Q波高の統計値,パーセンタイル値(II誘導,III誘導,aVF誘導,V5誘導,V6誘導)(μV)
◎R波高の統計値,パーセンタイル値(I誘導,II誘導)(μV)
◎R波高の統計値,パーセンタイル値(III誘導,aVR誘導)(μV)
◎R波高の統計値,パーセンタイル値(aVL誘導,aVF誘導)(μV)
◎R波高の統計値,パーセンタイル値(V1誘導,V2誘導)(μV)
◎R波高の統計値,パーセンタイル値(V3誘導,V4誘導)(μV)
◎R波高の統計値,パーセンタイル値(V5誘導,V6誘導)(μV)
◎S波高の統計値,パーセンタイル値(I誘導,II誘導)(μV)
◎S波高の統計値,パーセンタイル値(III誘導,aVR誘導)(μV)
◎S波高の統計値,パーセンタイル値(aVL誘導,aVF誘導)(μV)
◎S波高の統計値,パーセンタイル値(V1誘導,V2誘導)(μV)
◎S波高の統計値,パーセンタイル値(V3誘導,V4誘導)(μV)
◎S波高の統計値,パーセンタイル値(V5誘導,V6誘導)(μV)
◎SV1+RV5およびSV1+RV6の統計値,パーセンタイル値(mV)
◎各誘導別QRS幅(ms)
◎V2誘導のST(J点)パーセンタイル値(μV)
◎T1統計値およびパーセンタイル値(小学1年生男子)(μV)
◎T1統計値およびパーセンタイル値(小学1年生女子)(μV)
◎T1統計値およびパーセンタイル値(中学1年生男子)(μV)
◎T1統計値およびパーセンタイル値(中学1年生女子)(μV)
◎T1統計値およびパーセンタイル値(高校1年生男子)(μV)
◎T1統計値およびパーセンタイル値(高校1年生女子)(μV)
◎T波の極性(I誘導~III誘導)(%)
◎T波の極性(aVR誘導,aVL誘導,aVF誘導)(%)
◎T波の極性(V1誘導~V3誘導)(%)
◎T波の極性(V4誘導~V6誘導)(%)
◎補正QT間隔(QTcF,QTcB)の統計値,パーセンタイル値(ms)
■本書中の主要図一覧
◎心拍数,RR間隔の学年別・性別パーセンタイル値
◎QRS軸の学年別・性別パーセンタイル値
◎PR間隔の学年別・性別パーセンタイル値
◎QRS幅の学年別・性別パーセンタイル値
◎心室興奮到達時間(VAT)の学年別・性別パーセンタイル値
◎II誘導におけるP1のパーセンタイル値
◎V1誘導におけるP1のパーセンタイル値
◎V1誘導におけるP2のパーセンタイル値
◎各誘導のP時間平均値
◎II誘導のパーセンタイルによるP時間
◎V1誘導のパーセンタイルによるP時間
◎誘導別のQ波高,Q波幅
◎II誘導のパーセンタイルによるR波高
◎aVF誘導のパーセンタイルによるR波高
◎V1誘導のパーセンタイルによるR波高
◎V3誘導のパーセンタイルによるR波高
◎V5誘導のパーセンタイルによるR波高
◎V6誘導のパーセンタイルによるR波高
◎V1誘導のパーセンタイルによるS波高
◎V3誘導のパーセンタイルによるS波高
◎パーセンタイルによるSV1+RV5
◎パーセンタイルによるSV1+RV6
◎学年別,男女別,誘導別のQRS幅の変化
◎STJとT1波高値の関係(V2)
◎S波高値とSTJとの関係(V2)
◎STJとT1波高値の関係(V2)
◎12誘導におけるSTJ分布パーセンタイル図(学年・性別)
◎V2におけるSTJのパーセンタイル図
◎T1パーセンタイル値の学年・男女別の変化(I誘導)
◎T1パーセンタイル値の学年・男女別の変化(II誘導)
◎T1パーセンタイル値の学年・男女別の変化(V6誘導)
◎心拍数とQT間隔との関係
◎学年別・性別のQTc値のパーセンタイル値
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序文
序
小児は常に発育・発達しているのでその発育の程度により心電図も大きく変化していきます.そのため今までも年齢に応じた正常値に関する論文が多く発表されてきました.
大国真彦先生,本田悳先生をはじめとする先生方が『小児心電図の正常値』(1985年)という名著を出されてから30年以上になります.今までこの本が日本人の小児心電図の正常値のバイブルとして使われてきました.しかしこの間,日本の小児の体形や発育の状態も変化してきています.そこでエビデンスに基づいた新しい正常値が必要であり,また正常値の検討から心臓突然死や重症化などに関連する疾患の早期発見にも寄与するのではないかと考え「小児心電図研究委員会」を立ち上げ検討を始めました.
今回は,まず学校心臓検診の心電図から新しい小児心電図正常値を出すこととしました.学校心臓検診の心電図約5万枚という大量の心電図を対象に正常値を検討することとし,4年近くをかけ,議論を積み重ねてきました.一般的に自動計測が行われていますので,対象心電図をすべて自動計測し,必要なところのみマニュアルで補正しました.議論の過程で自動計測や自動診断そのものの問題点も明らかになり,予想以上に大変な作業も少なくありませんでした.
実際には目測と異なる計測値が出たり,自動診断が間違っていたりするのではないかと思うこともありますが,これは一定の基準やロジックをつくらざるをえないことがあることもわかりました.とにかく小児心電図研究委員会の先生方は,一同昼夜を問わず議論に議論を重ね,やっと1冊の本を上梓することができました.
しかし,本書にはまだ不十分な点が少なからずあります.今回はあくまでも対象が学校心臓検診に特化しており,小学1年生,中学1年生,高校1年生の児童生徒のデータのみであり,乳幼児のデータがありません.近い将来,若い先生方にお願いしたいと思います.
また,本来心電図はフィルターを入れずに記録すべきでありますが,現状では大量の心電図を記録するため,ノイズや基線の揺れを除去するためフィルターを入れざるをえないこともあります.今回の正常値はフィルターを入れた状態で記録したものです.もちろん,フィルターなしのデータも必要です.現在,この点についても検討中で,一部補正値も記載してあります.
また,この正常値をもとに2019年日本小児循環器学会学校検診部会で検討していただいた2次検診対象者抽出新基準をp.91~p.99に掲載しましたので,参考にしていただければ幸いです.
本書が学校心臓検診のさらなる向上と,一般診療に役立つことを祈念しています.
2020年3月
編集 長嶋正實
吉永正夫