10年ぶりとなる第2版では,基礎から臨床まで一冊で学べるとの初版の志はそのまま,重要な新知見のほか,基本的知識の記載もさらに充実させた.また,初学者はもちろん臨床脳波に関心のある皆さまが楽しみながら学んでいただけるよう,各章にトリビアとして脳波に関する豆知識や逸話を盛りこんでいる.解説は,各分野の精鋭のエキスパートが執筆する臨床脳波に関する解説書の決定版である.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
刊行にあたって<第2版>
序 文<第2版>
発刊にあたって<第1版>
執筆者一覧
カラー口絵
Ⅰ 基礎篇
1.脳波の発生機序:解剖と生理 加藤元博,飛松省三
2.脳波機器に関する基礎的電気知識 橋本修治,瀬川義朗
3.デジタル脳波計の信号処理 橋本修治,瀬川義朗
4.脳波信号と雑音 石山陽事,湯本真人
5.脳波の導出法 飛松省三
6.デジタル脳波の基本的使い方 松本理器,酒田あゆみ
7.脳波賦活法 高橋剛夫
8.所見の解釈と脳波レポートの作成 人見健文,池田昭夫
Ⅱ 臨床篇(正常など)
1.正常脳波の年齢的変化(1):小児(新生児を含む) 大塚頌子,秋山倫之
2.正常脳波の年齢的変化(2):成人,老年,脳ドック脳波 松浦雅人
3.臨床的意義が不明な特異な脳波所見 松岡洋夫
Ⅲ 臨床篇(病態)
1.てんかん性活動:総論 田中達也
2.てんかん発作:小児 小国弘量
3.てんかん:成人 川口典彦,寺田清人,井上有史
4.てんかん重積状態 神 一敬
5.突発的・一過性病態 赤松直樹
6.局所性脳病変 深谷 親
7.脳症(びまん性・多巣性脳症) 三枝隆博,山野光彦
8.意識障害 重藤寛史,酒田あゆみ
9.脳死 久保田有一
10. 薬物治療の影響 南 翔太,西田圭一郎,吉村匡史,木下利彦
Ⅳ 各種方法論
1.ビデオ・ポリソムノグラフィ video‒polysomnography 黒須結唯,千葉 茂
2.長時間脳波モニタ(頭皮上脳波) 田村健太郎,木下真幸子,大杉奈保美,星田 徹
3.振幅統合脳波 amplitude-integrated EEG( aEEG) 奥村彰久
4.侵襲的脳波記録法 森岡隆人,迎 伸孝,酒田あゆみ
5.ワイドバンド脳波:高周波成分の発生機構,記録および検出 小林勝弘
6.ワイドバンド脳波:低周波成分の発生機構,記録・判読 中谷光良,井内盛遠,池田昭夫
索引
脳波トリビア
■ 覚醒・睡眠中枢の発見
■ 差動増幅器における同相電位についての誤解
■ 2 種類のナイキスト周波数?
■ ボディアースは死後用語
■ 脳波記録中に音楽が聞こえる
■ 皮質脳波と頭皮上脳波の関係
■ キャリブレーション波形(矩形波)の正体
■ ポケモンショック
■ 10 年後の脳波:遠隔脳波判読・救急脳波・脳波モニタリングの興隆
■ 21 世紀の現在,成人の脳波検査の過呼吸と光刺激は必要か?
■ 50 年後の脳波
■ 小児に特有のアーチファクト
■ 脳波データの標準化の必要性
■ 睡眠脳波波形の命名者
■ Hz とc/s
■ 国際臨床神経生理学会用語集
■ 偉大なてんかん学者の一言
■ 視床・皮質ミオクローヌス
■ 中心脳仮説と皮質・網様体仮説
■ てんかん発作と失神の鑑別は容易か?
■ 非けいれん性てんかん重積の脳波診断
■ 神経救急における持続脳波モニタリングの有用性
■ めまい発作がてんかん発作―前庭性てんかん―Vestibular epilepsy
■ FIRDA
■ +(プラス)について
■ 脳症の脳波はダイナミックに変化する
■ 三相波(triphasic waves)
■ 脳死判定におけるさまざまな脳波
■ 電気けいれん療法における脳波
■ ギリシャ神話と睡眠
■ 睡眠関連てんかん
■ ビデオの時間解像度は?
■ aEEG における例外的な発作時変化
■ 頭蓋内脳波と頭皮上脳波の関係
■ 大脳皮質と頭皮上の高周波の関係
■ DC 電位研究の歴史:CSD 研究の再興
ページの先頭へ戻る
序文
刊行にあたって
日本臨床神経生理学会は,「臨床脳波を基礎から学ぶ人のために」,「神経筋電気診断を基礎から学ぶ人のために」,「脳機能計測法を基礎から学ぶ人のために」などを臨床神経生理学について基礎から学ぶモノグラフとして発行してきた.これらの書籍は,脳波,筋電図,脳機能計測法を学ぶための最初の解説書であった.これらのうち,2008年に刊行された 「臨床脳波を基礎から学ぶ人のために」が初版から10年余りを経て,この度改訂されることとなった.初版が22名の先生からの玉稿を日本臨床神経生理学会機関紙である「臨床神経生理学」に賜った論文であり,モノグラフでは,これらを合わせ,一冊の本とし,脳波の基礎から臨床までを理解できるものとして発行された.もちろん,これが日本臨床神経生理学会会員の教育の基礎になったことは間違いない.
一方,日本臨床神経生理学会は,近年,教育をさまざまな形で充実させてきている.その中でも脳波セミナー・アドバンスコースの開催を担う脳波セミナー・アドバンスコース小委員会のメンバーを中心に「臨床脳波を基礎から学ぶ人のために」の改訂が行われたものが本書である.初版とは異なり,論文を22編いただいたものではなく,単行本としての改訂が行われ,一冊の本として,発行されたことに大きな意義がある.しかし本書は,初版の志である,臨床脳波の基礎的知識から最新知識までを優しく理解できるものとして意識され,改訂された.その結果,脳波の本は多々あるものの,他の教科書より,優れた一冊の本としての解説本となっている.
日本臨床神経生理学会の中での脳波の専門家,つまりわが国の中でこれだけの精鋭の先生方から書かれた,臨床脳波に関する本はないだろうと思われる.
本書をご担当いただいた,脳波セミナー・アドバンスコース小委員会の委員の先生方,執筆者の先生方に深謝申し上げるとともに,本書が日本臨床神経生理学会会員ばかりでなく,脳波を学ぼうとするすべて医師や臨床検査技師など医療関係者の皆様,さらに多くの脳波に興味がある研究者などの皆様にとって,お役に立てる本となると確信している.皆様がお手元にとって,お読みいただき,皆様のお役に立てれば誠に幸甚である.
2019年11月吉日
日本臨床神経生理学会理事長
正門由久
序文
本学会からモノグラフ「臨床脳波を基礎から学ぶ人のために」の初版が2008年に発刊され,10年が経過しました.初版では,わが国の臨床脳波の各分野の専門家による執筆で,臨床脳波に関する基本的知識から幅広くかつ最新の情報まで網羅され,一冊で臨床脳波の全容を学ぶことができ,大変好評を博しました.
「臨床脳波はすでに確立し成熟した分野で,デジタル脳波など一部の技術進歩以外に新規性はないのでは?」と誤解されがちですが,この10年間で,臨床脳波の分野は以下のような多くの重要な進歩がありました.
1)21世紀に人口構造と疾病特徴が変遷して,高齢者てんかんの増加,自己免疫てんかんの出現,てんかん重積病態スペクトラムの多様化,などがあげられます.また新規薬剤による新規脳波変化も多々あります.
2)技術革新により,デジタル脳波はwide band EEG時代となり,DC電位や低周波成分および高周波律動は臨床応用と同時に基礎・臨床研究が大変進み,amplitude-integrated EEG(aEEG)も新しい手法として発展しました.
3)今後は遠隔脳波判読システムのグローバル化,脳波自動判読,AI技術の導入などが新規領域となります.
このような新知見だけではなく,改訂第2版では,「back to the basic」をモットーに,臨床脳波のための神経分野の基本的知識と,脳波機器およびデジタル脳波の基本知識を専らわかりやくなるように,多くの図も交えて解説いただきました.初版の各章の執筆者から半数弱は新しい執筆者となり,専門用語はできる限り英語と日本語が併記されています.各章に「脳波トリビア」を設けて,脳波の豆知識,歴史的逸話・秘話も盛り込んで,楽しみながら臨床脳波を学んでいただけるようになっています.
初学者の医師の皆様および臨床検査技師の皆様,さらに臨床脳波に興味がある読者の皆様にとって,本書がそれぞれの目的に応じてお役に立てば幸いです.
最後に,第2版の編集方針にご理解いただき,短期間にも拘らずご協力いただきました執筆者の皆様に深謝いたします.
2019年11月吉日
日本臨床神経生理学会
脳波セミナー・アドバンスコース小委員会委員長
池田昭夫