Dr. ヒサトメの
かかりつけ医のための高尿酸血症・痛風診療Q&A診断と治療社 | 書籍詳細:かかりつけ医のための高尿酸血症・痛風診療Q&A
鳥取大学医学部ゲノム再生医学講座再生医療学分野 教授
久留 一郎(ひさとめ いちろう) 著
初版 B5判 並製 200頁 2021年01月22日発行
ISBN9784787824486
様々な疾患に合併し,どの診療科でも診察の機会がある高尿酸血症・痛風.本書は日々の診療で高尿酸血症・痛風の診察の機会がある“かかりつけ医のための”科を横断して使用できるQ&A形式の書籍です.「尿酸降下薬の選択基準は?」「SGLT2 阻害薬を使用すると血清尿酸値が下がるのはなぜ?」といった疑問はもちろん、高尿酸血症・痛風の疫学や機序、合併疾患や各種ガイドラインの活用などについても記載しています.診療科を問わず、全ての科の医師におすすめの1冊です.
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目次
序文
略語一覧
プロローグ 教えてドクター!高尿酸血症・痛風講座
● はじめに
A 尿酸の正体を理解する
① 尿酸の正体は何ですか?どのように体内でバランスがとられているのですか?
B 尿酸は善玉である
② 尿酸に生理的意義はあるのですか?
③ 高尿酸状態と脳の発達の関係はどうなっているのですか?
C 高尿酸血症・痛風を理解する
④ 痛風とは何ですか?
⑤ 世界と日本での痛風の歴史はどのようなものですか?
⑥ 痛風は“完治”するのですか?
⑦ 高尿酸血症と痛風は,何が違うのですか?
⑧ 高尿酸血症・痛風の治療についてどうしたらよいのですか?
⑨ プリン体の多い食べ物は治療上よくないのですか?
1章 高尿酸血症・痛風の疫学
A まずは高尿酸血症・痛風の疫学や自然歴を理解する
Q01 高尿酸血症・痛風の頻度は増加しているのですか?
Q02 高尿酸血症・痛風発症に人種差はあるのですか?
Q03 高尿酸血症・痛風と性格や社会的地位は関連があるのですか?
Q04 痛風を治療しないで放置するとどうなるのですか?
COLUMN 痛風患者の死因は変わってきている
Q05 高尿酸血症・痛風の環境要因はどのようなものがあるのですか?
Q06 ストレスが尿酸値に関連するといわれますが,研究データはあるのですか
COLUMN 尿酸とストレス
Q07 女性の高尿酸血症・痛風の場合,“女性”ということで考慮することはあるのですか?
COLUMN 性ホルモンと尿酸
Q08 痩せた人の高尿酸血症・痛風には特徴はあるのですか?
Q09 高尿酸血症・痛風に喫煙は影響するのですか?
BREAK TIME 現代社会で頑張る人こそかかってしまう高尿酸血症 Aさん30歳女性の場合
2章 痛風の発症とその検査・診断・治療
A 痛風の発症を理解する
Q10 高尿酸血症・痛風の診療を行ううえで,重要な尿酸トランスポーターは何ですか?
Q11 高尿酸血症・痛風の多い家系がありますが,遺伝素因について代謝の関係からどのくらいわかっているのですか?
Q12 尿酸一ナトリウム(MSU)結晶が痛風関節炎を起こすメカニズムは何ですか?
Q13 痛風発作が自然に治まるのはなぜですか?
BREAK TIME 高尿酸血症・痛風を発症しやすい人の特徴 Bさん35歳男性の場合
B 症状・検査・診断のポイント
Q14 痛風の分類基準とは何ですか?
COLUMN 関節液に尿酸一ナトリウム(MSU)結晶が確認されたら血清尿酸値(SUA)にかかわらず痛風と診断できるのか
Q15 痛風発作はなぜ拇趾に起こりやすいのですか?
Q16 痛風発作の起こりやすい時間や季節はあるのですか?
Q17 痛風発作時に血清尿酸値(SUA)はなぜ低くなるのですか?
COLUMN 血清尿酸値(SUA)が高くない痛風
Q18 痛風結節はどんなところにできるのですか?
Q19 痛風ではどのような検査をすべきですか?
Q20 痛風のX線像の特徴は何ですか?
Q21 痛風関節炎の診断に超音波が有用と聞きましたが,どのような所見がみられるのですか?
Q22 痛風と間違えやすい病気にはどんなものがあるのですか?
C 発作を予防する
Q23 痛風発作予防にコルヒチンはなぜ効くのですか?
Q24 尿酸降下薬開始後の痛風再発予防のためにコルヒチンカバーは勧められるのですか?
D 痛風治療のピットフォールを知る
Q25 痛風発作の治療と高尿酸血症の治療のタイミングはいつですか?
Q26 痛風発作に対してコルヒチン,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),グルココルチコイドのどれを用いるべきですか?
COLUMN 痛風関節炎の程度が強い場合の発作に対する2薬併用について
Q27 痛風患者が尿酸降下薬の投与を受けて痛風発作をきたした場合の対処法は何ですか?
Q28 痛風発作中に尿酸降下薬を投与してはいけない理由は何ですか?
Q29 痛風発作の患部は冷やすべきですか?
COLUMN 尿酸値が正常化しても痛風発作が収まらない場合
Q30 痛風結節の治療はどうしたらよいのですか?
3章 高尿酸血症の診断
A 高尿酸血症の原因と診断
Q31 高尿酸血症の診断基準となる血清尿酸値(SUA)はいくつですか?
Q32 健康診断の尿酸値はどのように診断に活かせばよいのですか?
B 新しくなった病型分類とその考え方・進め方
Q33 新しい高尿酸血症の病型分類はどのようなものですか?
Q34 高尿酸血症の病型分類は必要ですか?また再検する必要があるのですか?
Q35 尿酸クリアランス(CUA)の測定法とその簡易法は何ですか?
COLUMN 尿酸排泄低下型高尿酸血症では腎外排泄が増加する
C 無症候性高尿酸血症の定義
Q36 高尿酸血症でも痛風関節炎を発症しない人がいるのはなぜですか?
Q37 無症候性高尿酸血症は発作がない限り治療しなくてよいのですか?また治療が必要な人はどんなタイプですか?
4章 高尿酸血症の治療に取り組むには
A 尿酸降下薬の種類と選択法
Q38 尿酸降下薬の選択基準はどのようにすべきですか?
COLUMN 新しい選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)の特徴について
Q39 尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬の併用は有用ですか?
Q40 尿酸値はどこまで下げるべきですか?
Q41 高尿酸血症・痛風の治療薬にはどのような副作用があるのですか?
Q42 尿酸降下薬投与中に血液検査はどれくらいの間隔で行えばよいのですか?
Q43 薬物治療はいつまで続けるのですか?
Q44 尿酸降下薬を中止すると血清尿酸値(SUA)はすぐに元にもどるのですか?
Q45 尿酸降下薬以外の血清尿酸値(SUA)が下がる薬は何ですか?
5章 尿酸値の異常をきたす疾患とその評価
A 二次性高尿酸血症の原因疾患
Q46 二次性高尿酸血症をきたす疾患はどのようなものがあるのですか?
Q47 家族性若年性高尿酸血症性腎症(FJHN)はどんな病気ですか?
Q48 血漿中のキサンチン酸化還元酵素(XOR)の活性上昇は病態と関係するのですか?
Q49 尿酸再吸収亢進の病態とはどのような病態ですか?
6章 内分泌内科よりみた高尿酸血症のマネジメント
A ホルモンと尿酸代謝
Q50 各種ホルモンは尿酸代謝と関連するのですか?
Q51 副甲状腺疾患は尿酸代謝と関連するのですか?
Q52 Bartter症候群は尿酸代謝と関連するのですか?
Q53 バソプレシン分泌過剰症(SIADH)は尿酸代謝と関連するのですか?
7章 代謝内科よりみた高尿酸血症のマネジメント
A 糖尿病合併患者の治療方針
Q54 「糖尿病診療ガイドライン2019」はどのように活用するのですか?
Q55 高尿酸血症・痛風は糖尿病と関係するのですか?
Q56 SGLT2阻害薬を使用すると血清尿酸値(SUA)が下がるのはなぜですか?
B 肥満・メタボリックシンドローム・脂質異常症合併患者の治療方針
Q57 「肥満症診療ガイドライン2016」はどのように活用するのですか?
Q58 高尿酸血症の脂質代謝との関連性はどのくらいあるのですか?
8章 腎臓内科よりみた高尿酸血症のマネジメント
A 腎障害合併患者の治療方針
Q59 「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」はどのように活用するのですか?
Q60 痛風の腎障害の機序はどのようなものですか?
Q61 高度の腎障害をきたしている痛風患者が発作を起こした場合はどのように処置したらよいのですか?
Q62 腎機能低下例に尿酸排泄促進薬を使用してはいけないのですか?
9章 泌尿器科よりみた高尿酸血症のマネジメント
A 尿路結石合併患者の治療方針
Q63 「尿路結石症診療ガイドライン2013年版」はどのように活用するのですか?
Q64 高尿酸血症・痛風には尿酸排泄低下型が多いにもかかわらず尿路結石が多いのはなぜですか?
COLUMN 尿酸溶解の限界量の決定,尿量とpHの関係
Q65 尿のpHは尿酸排泄に関係するのですか?
COLUMN 尿酸排泄促進薬や選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)を投与する場合,尿酸排泄のピークに合わせて尿アルカリ化薬を投与する
Q66 尿量を2,000 mL以上にするには具体的に飲水をどの程度にすべきですか?
COLUMN 痛風患者の酸性尿の原因と尿アルカリ化の実際
10章 高血圧内科よりみた高尿酸血症のマネジメント
A 高血圧合併患者の治療方針
Q67 「高血圧治療ガイドライン2019」はどのように活用するのですか?
Q68 高血圧を合併した痛風の治療はどのようにすべきですか?
Q69 血清尿酸値(SUA)を下げると心血管病(CVD)のリスクは減るのですか?
Q70 利尿薬で上昇した血清尿酸値(SUA)も治療する必要があるのですか?
Q71 降圧効果を有する尿酸降下薬はあるのですか?
11章 循環器内科よりみた高尿酸血症のマネジメント
A 心不全合併患者の治療方針
Q72 「急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版」はどのように活用するのですか?
Q73 心不全合併高尿酸血症の発症機序とその治療はどのようにするのですか?
Q74 心房細動と尿酸値は関連するのですか?
COLUMN 高尿酸血症による心房細動の発症機構
B 動脈硬化性疾患合併患者の治療方針
Q75 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」はどのように活用するのですか?
COLUMN 動脈硬化性疾患に合併する高尿酸血症へのアプローチ
Q76 血管内皮に発現している尿酸トランスポーターにはどのような意義があるのですか?
COLUMN 尿酸やキサンチン酸化酵素(XO)による血管障害
12章 小児科における高尿酸血症のマネジメント
A 小児の血清尿酸値(SUA)の意義
Q77 小児の高尿酸血症をどのように扱えばよいのですか?
13章 婦人科における高尿酸血症のマネジメント
A 妊婦の血清尿酸値(SUA)の意義
Q78 妊婦の高尿酸血症を診たらどのように対応する必要があるのですか?
14章 睡眠時無呼吸症候群(SAS)合併患者の治療方針
A 睡眠時無呼吸症候群(SAS)と尿酸の関係
Q79 睡眠時無呼吸症候群(SAS)に合併する高尿酸血症はどのような対策を取ったらよいのですか?
15章 腫瘍崩壊症候群(TLS)による高尿酸血症の治療方針
A 悪性腫瘍と尿酸の関連
Q80 悪性腫瘍と尿酸代謝はどのように関連するのですか?
Q81 腫瘍崩壊症候群(TLS)におけるウリカーゼ(UOX)療法にはどのような益と害があるのですか?
16章 高尿酸血症・痛風患者の生活管理のポイント
A 患者アドヒアランス
Q82 わが国の痛風患者の治療アドヒアランスはよいのですか?
B 食事療法の実際
Q83 高尿酸血症にアルコールが有害なのはなぜですか?
Q84 食品中のプリン体含量の意義とプリン体制限の具体的な指導法は何ですか?
Q85 高尿酸血症の患者に対して果物やソフトドリンクはどの程度制限すればよいのですか?
Q86 コーヒーは痛風によいと聞きましたが,生活指導に取り入れたほうがよいのですか?
Q87 サプリメントで注意すべきものはあるのですか?
Q88 食塩とインスリン抵抗性は血清尿酸値(SUA)にどのように影響するのですか?
Q89 プリンリッチ野菜は痛風では控えたほうがよいのですか?
Q90 減量すると一時的に血清尿酸値(SUA)上昇が起こるメカニズムは何ですか?
Q91 DASH食は痛風に有効ですか?
BREAK TIME 高尿酸血症になりやすい人の食事 Cさん32歳男性の場合
C 運動療法の実際
Q92 運動が推奨されますが,高尿酸血症・痛風患者に対して具体的にどの程度行えばよいのですか?
17章 低尿酸血症とその病態・原因疾患を理解するA 低尿酸血症の治療
Q93 「腎性低尿酸血症診療ガイドライン第1版」はどのように活用するのですか?
Q94 低尿酸血症に治療は必要ですか?
18章 最近のトレンドA 最近のトレンドを知る
Q95 高尿酸血症・痛風の最近のトレンドは何ですか?
COLUMN 尿酸一ナトリウム(MSU)により痛風や動脈硬化が起こる機序
付録1 プリン体含量 食品中(ヌクレオチド別)
付録2 プリン体含量 酒類中(ヌクレオチド別)
付録3 尿酸降下薬一覧
索引
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序文
序文
痛風は拇趾指根関節に激痛を伴う急性関節炎発作として太古から私たちを苦しめてきた疾患です.痛風の最初の犠牲者は暴君竜ティラノサウルスです.化石の骨に痛風結節による骨病変と尿酸塩結晶が証明されています.二番目の犠牲者は私たちヒトであります.医聖ヒポクラテスが痛風を詳細に記載して以来,多くの歴史上の人物が痛風の犠牲になっていますが,当時はわずかな特権階級の人に起こる贅沢病と考えられていたようです.しかし,現代は食生活の欧米化に伴って国の内外を問わず痛風患者は増加しています.1959年にわが国には100例に満たない数であった痛風患者でしたが,2019年には約125万人が罹患されるようになり,爆発的な数の痛風患者がわが国におられます.また,痛風は男性の病気と思われがちですが,女性の痛風患者も増えています.痛風の原因は高尿酸血症であることは周知ですが,血清尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症は性別・年齢を問わず経年的に増加し,現在1,000万人の方が高尿酸血症を患い,成人男性の20%,女性の5%に認められます.高尿酸血症の特徴は痛風のみならず腎障害・尿路結石・高血圧・心血管病・メタボリックシンドローム・糖尿病・妊娠高血圧症候群・腫瘍崩壊症候群など多くの疾患に高頻度に合併することです.このことはリウマチ・膠原病内科,内分泌内科,代謝内科,腎臓内科,高血圧内科,循環器内科,泌尿器科,整形外科,小児科,婦人科を問わず多くの医師が高尿酸血症を合併した患者を診療することを意味し,複数の科を横断する高尿酸血症・痛風診療のノウハウが必要です.これまでも痛風と高尿酸血症に関する単行本は数多く出版されていますが,プリン代謝,高尿酸血症,痛風について系統的にまとめられているために,日々の忙しい診療のなかでどのページを読めばよいのかわかりにくい点があります.本書はQ&A形式をとりながら,診療科別にも記載することで科を横断して使用できる書物をめざしました.最新の関連したガイドラインの内容も入れました.また,健康診断で問題となる低尿酸血症についても網羅しています.本書は単著ですので,全体を1つのコンセプトで統一することができており,読者にとって使いやすい書物に仕上がったのではないかと思います.本書が診療科を問わず実地臨床の助けになれば幸いです.
2020年11月
久留一郎