「川崎病診断の手引き改訂6版」「2020年改訂版 川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン」「川崎病急性期治療のガイドライン (2020年改訂版)」に対応し,COVID-19との関連,日米ガイドラインの比較を新たに加え,内容をアップデートした,日本川崎病学会編の教科書「川崎病学」の改訂第2版.小児科医のみならず,川崎病に携わるすべての臨床医,研究者に必携の書籍最新版.
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目次
口 絵
序 文
執筆者一覧
Ⅰ 歴史と疫学
1 歴 史
a 川崎病の歴史
b 川崎富作先生の履歴
c 川崎病診断の手引きの変遷
2 疫 学
a 川崎病の記述疫学
b 川崎病の分析疫学
c 全国調査における川崎病治療法の変遷
d 川崎病の同胞例・親子例
Ⅱ 病因・遺伝・病理
1 病因論
a 細菌説
b ウイルス説
c 自然免疫説
2 遺 伝
3 病理・病態
a 冠動脈(急性期・遠隔期)
b 冠動脈以外の血管病変
c リンパ節
4 川崎病疾患モデル
a ヒト細胞を用いた病態モデル
b Candida albicans細胞壁由来糖蛋白誘導血管炎モデル
c Lactobacillus casei細胞壁菌体成分誘導血管炎モデル
d Nod1リガンド誘導冠動脈炎モデル
Ⅲ 診断と急性期の検査
1 主要症状
2 参考条項とその他の症状
a 参考条項
b 心血管以外の症状・合併症
c バイタルサインと全身評価
3 血液検査・尿検査
4 胸部X線検査・心電図
5 心エコー検査
6 バイオマーカー
7 特殊な病型の特徴および診断
a 不全型川崎病の特徴
b 早期乳児例の特徴
c 年長児例の特徴
d 重症川崎病の特徴
e 新型コロナウイルスとの関連
8 鑑別診断
a 発熱・発疹性疾患の鑑別
b 頸部リンパ節腫脹の鑑別
c 心疾患・冠動脈疾患の鑑別
Ⅳ 急性期治療
1 急性期治療総論
2 免疫グロブリン
3 プレドニゾロン
4 ステロイドパルス
5 シクロスポリン
6 インフリキシマブ
7 ウリナスタチン
8 血漿交換
9 アスピリン
Ⅴ 遠隔期の検査・治療・管理
1 遠隔期診療総論
2 冠動脈造影
3 冠動脈CT
4 心臓MRI
5 心筋シンチグラフィ
6 その他の検査
a PET
b 血管内エコー(IVUS)
c 光干渉断層法(OCT)
7 内科的治療
8 カテーテル治療
9 外科的治療:冠動脈バイパス術
10 学校での管理
11 移行医療
12 成人期の管理
a 成人になった川崎病患者をどう診るか
b 動脈硬化との関連性
c 妊娠・出産
索 引
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序文
序 文
本書は2018年に初版が出され,幸い好評をもって迎えられました.このたび,日本川崎病学会のご協力の下,改訂版を上梓することができました.この3年間,「川崎病学」に関して重大な出来事がいくつかありました.
まず,2020年6月には,とても残念なことに最初の報告者である川崎富作先生が鬼籍に入られました.川崎先生は,晩年まで川崎病の疫学研究や原因究明などに取り組み,様々な学会に参加され後進を鼓舞されてきました.同年9月には,「川崎病の子供をもつ親の会」の代表であった浅井満様が急逝されました.浅井様は,会報や相談会を通じ川崎病の患者さんやご家族のために長年尽力されました.本書の出版にあたり,お二人の安らかなご冥福を心よりお祈り申し上げます.
悲しいことばかりではなく,2019年5月には17年ぶりに「川崎病診断の手引き」,2020年3月には7年ぶりに「川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン」,同年10月には8年ぶりに「川崎病急性期治療のガイドライン」が改訂されました.本書では,米国心臓協会(AHA)のstatementも取り上げ,日米の比較について記載しました.
また,2019年12月に武漢で発生した新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)は,瞬く間に世界で流行し,今もなお大きな影響を受けています.軽症が多い小児にも,多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)を起こすことがあり,一部に川崎病に似た症状を伴うことが話題になりました.本書でも,COVID-19との関連性について言及しています.
日本では,少子化にもかかわらず川崎病の発生数は増加し,罹患率は世界最高です.ほとんどの小児科医は患者さんを経験し,年間数十例の入院がある施設も多いでしょう.症例報告・ケースシリーズや後ろ向き研究を初めて行う若手医師にも相応しい対象であり,本書はその発表にも役立つと確信いたします.
そして,読者の皆様には,本書を出発点として,川崎病の病態を解明する基礎研究やエビデンスを創出する臨床研究に挑んでほしいと思います.天国の川崎先生や浅井様のためにも,日本から新しい研究成果を世界に発信していこうではありませんか.
2021年11月
編集者を代表して
東京都立小児総合医療センター
三浦 大