視床下部・下垂体疾患診療のために知っておくべき解剖,構造,ホルモン,機能検査,画像検査の基礎知識や,多様な疾患の診断と治療に関する臨床知識を系統的かつコンパクトにまとめた好評の書の改訂第3版.Topicsには現在注目されている新たな知見,疾患概念,新規の診断法や治療法の情報を加え、最新の内容にアップデートした.内分泌専門医・専攻医のみならず一般医家にも役立つ1冊.
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目次
口絵
「診断と治療社 内分泌シリーズ」について 成瀬光栄
改訂第3版序文 平田結喜緒
執筆者一覧
略語一覧
I 総論編
1 下垂体疾患の診療~内科から~ 髙橋 裕
2 下垂体疾患の治療~外科から~ 山田正三
3 下垂体疾患の診療~小児科から~ 伊藤純子
II各論編
第1章 基礎知識
A 下垂体の発生,分化
下垂体の発生,分化 井野元智恵
B 視床下部・下垂体の解剖
視床下部・下垂体の解剖 登坂雅彦
C 下垂体の転写因子/視床下部の機能
下垂体の転写因子/視床下部の機能 上田陽一
D 視床下部ホルモン
1 CRH 西山 充
2 GHRH 髙野幸路
3 グレリン 児島将康
4 GnRH 中野靖浩他
5 TRH 堀口和彦他
6 ソマトスタチン 髙野幸路
7 ドパミン 井樋慶一
E 下垂体前葉ホルモン
1 ACTH 福岡秀規
2 GH 髙橋 裕
3 LH/FSH 中野靖浩他
4 TSH 堀口和彦他
5 PRL 髙野幸路
F 下垂体後葉ホルモン
1 AVP 有馬 寛
2 オキシトシン 上田陽一
第2章 臨床知識
A 総論
1 下垂体疾患の疫学と予後 横山徹爾
2 下垂体機能の生理的変化 原田竜也
3 下垂体形態の生理的変化 伊澤正一郎
4 下垂体腫瘍の成因 福岡秀規
5 下垂体腺腫の病理と分類 井野元智恵他
6 傍鞍部腫瘍の病理と分類 木野弘善他
7 下垂体腫瘍の症候 福田いずみ
8 下垂体嚢胞性病変の鑑別 岡田満夫
9 下垂体腫瘍の予後マーカー~臨床および病理学的観点から~ 井下尚子
B 検査
1 下垂体機能検査の実際と解釈 立木美香他
2 下垂体機能検査の留意点とピットフォール 髙橋 裕
3 下垂体疾患の画像検査~3T MRI画像を中心に~ 黒﨑雅道
4 下垂体疾患の眼科的検査 中尾雄三
5 下垂体疾患のQOL評価 福岡秀規
6 下錐体静脈洞・海綿静脈洞サンプリング 石田敦士
C 治療総論
1 下垂体腫瘍の外科治療 山田正三
2 手術合併症とその対策 堀口健太郎
3 下垂体機能低下症のホルモン補充療法 大月道夫
4 放射線治療 佐藤健吾
D 下垂体前葉疾患各論
1 先端巨大症 髙橋 裕
2 小児GH分泌不全症 磯島 豪他
3 成人GH分泌不全症 髙橋 裕
4 IGF-1異常症とIGF-1受容体異常症 藤本正伸
5 中枢性思春期早発症 越智可奈子他
6 プロラクチノーマ 杉原 仁
7 高プロラクチン血症 巽 圭太
8 Cushing病 山本雅昭他
9 subclinical Cushing病とsilent corticotroph adenoma 蔭山和則他
10 ACTH単独欠損症 長谷川功他
11 Nelson症候群 平田結喜緒
12 非機能性下垂体腺腫(ゴナドトロピン産生下垂体腺腫) 黒﨑雅道
13 特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症 田島敏広
14 TSH産生下垂体腺腫 堀口和彦他
15 中枢型甲状腺ホルモン不応症(Refetoff症候群) 石井角保
16 汎下垂体機能低下症 西山 充
17 Sheehan症候群 菅原 明
18 リンパ球性下垂体炎~前葉炎を中心に~ 椙村益久他
19 IgG4関連(漏斗)下垂体炎 島津 章
20 抗PIT-1下垂体炎(抗PIT-1抗体症候群) 髙橋 裕
21 頭部外傷後・脳血管障害後の下垂体機能低下症 齋藤洋一他
22 下垂体卒中 登坂雅彦
23 empty sella症候群 山下美保
24 嚢胞性病変(Rathke嚢胞・くも膜嚢胞) 阿久津博義
25 下垂体茎断裂症候群 井口元三
26 遺伝性下垂体疾患 井口元三
27 遺伝性・家族性下垂体腫瘍 吉本勝彦
28 トルコ鞍部肉芽腫性病変,Tolosa-Hunt症候群 西岡 宏
29 視床下部症候群 福田いずみ
30 下垂体偶発腫瘍 石井雄道
31 aggressiveな下垂体腺腫と下垂体癌 福原紀章
32 転移性下垂体腫瘍 藤尾信吾他
33 トルコ鞍部グリオーマ(下垂体神経膠腫) 西岡 宏
34 頭蓋咽頭腫 岡 秀宏
35 胚細胞腫瘍 中村英夫
36 髄膜腫 田中雄一郎他
E 下垂体後葉疾患各論
1 中枢性尿崩症 岩間信太郎他
2 SIADH(ADH不適合分泌症候群) 髙木博史他
3 本態性高ナトリウム血症 西山 充他
4 リンパ球性漏斗下垂体後葉炎 椙村益久
III Topics
1 ES/iPS細胞による下垂体分化とその応用 須賀英隆
2 下垂体機能低下症の移行期医療(小児がん経験者も含む) 辻野元祥
3 濾胞星状細胞と細胞外マトリクス 藤原 研
4 本態性高ナトリウム血症とNax自己抗体 松田晋一
5 免疫チェックポイント阻害薬と関連下垂体炎 髙橋 裕
6 ドパミン作動薬の新たな副作用 髙橋 裕
7 傍腫瘍症候群としての自己免疫性下垂体疾患 髙橋 裕
8 新規分子イメージングによるCushing病の局在診断 平田結喜緒
9 下垂体腫瘍における新規薬物療法の展望 館野 妙他
10 トルコ鞍部腫瘍に対する重粒子療法,陽子線療法 池田秀敏
11 間脳下垂体腫瘍COE(center of excellence)への展望 山田正三
12 下垂体腫瘍手術の近未来~安全な内視鏡手術の普及を目指して~ 光石 衛他
付録
おもな下垂体機能検査・画像検査の判定基準・所見一覧 立木美香
Column
Rosalyn S. Yalow(1921-2011) 平田結喜緒
Roger Guillemin(1924-) 芝﨑 保
Grant W. Liddle(1921-1989) 平田結喜緒
Wylie W. Vale(1941-2012) 芝﨑 保
Kalman T. Kovacs(1926-) 山田正三
Andrew V. Schally(1926-) 千原和夫
佐野壽昭先生(1949-2011) 山田正三
Harvey W. Cushing(1869-1939) 沖 隆
Julse Hardy(1932-) 寺本 明
有村 章先生(1923-2007) 千原和夫
鎮目和夫先生(1924-2015) 肥塚直美
Geoffrey W. Harris(1913-1971) 平田結喜緒
佐野圭司先生(1920-2011) 寺本 明
Information
間脳下垂体機能障害に関する調査研究班の取り組み 有馬 寛
Side Memo
Knospの分類 山田正三
germinomaは胚細胞腫か,それとも胚腫か? 西岡 宏
下垂体(hypophysis;pituitary)の語源は? 平田結喜緒
アイルランドの巨人(The Irish Giant) 平田結喜緒
「管状腺」-第4の唾液腺? 平田結喜緒
索引
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序文
「診断と治療社 内分泌シリーズ」について
編者らはこれまで,わが国の内分泌疾患の診療水準の向上を目的として2007年出版の『内分泌代謝専門医ガイドブック』をはじめとして,『原発性アルドステロン症診療マニュアル』『褐色細胞腫診療マニュアル』『クッシング症候群診療マニュアル』『甲状腺疾患診療マニュアル』『内分泌機能検査実施マニュアル』『内分泌性高血圧診療マニュアル』『内分泌画像検査・診断マニュアル』『もっとわかりやすい原発性アルドステロン症診療マニュアル』など17種類の「診断と治療社 内分泌シリーズ」の企画・編集に携わってきた.『下垂体疾患診療マニュアル』はシリーズの10 番目の書籍として企画されたものであり,このたび改訂第3版を出版することとなった.
本書は視床下部・下垂体疾患の診療のために知っておくべき解剖,構造,ホルモン,機能検査,画像検査などの総論的事項と,多様な疾患の診断と治療に関する各論的事項を系統的にかつコンパクトにまとめた企画である.また今回の改訂にあたり編集および編集協力の先生方から提案いただいた最新のトピックスも積極的に追加し,書籍の情報を最新の内容にアップデートした.執筆は前版と同じく,当該分野でわが国を代表する諸先生方に分担をお願いした.昨年来のCOVID-19パンデミックの影響に伴う様々な負担増のなか,ご尽力いただいたすべての先生方に改めて御礼申し上げる.本書がわが国の下垂体疾患診療のさらなる水準向上に貢献できれば幸いである.
2021年11月
医仁会武田総合病院内分泌センター・臨床研究センターセンター長
成瀬光栄
改訂第3版序文
下垂体は生体に分布する主要な内分泌腺を支配する内分泌腺の長(Master Gland)といえる.それゆえ下垂体疾患は多彩な兆候を呈することから早くから注目されてきたが,比較的まれであり,その診断と治療はむずかしいとされてきた.しかし近年の下垂体ホルモンの測定と画像診断の進歩により,下垂体疾患の診断法は飛躍的に向上した.加えて下垂体腫瘍の治療法も侵襲の少ない手術療法,より選択的な薬物療法,ピンポイント照射が可能な定位放射線療法など目覚ましい進歩がみられる.またゲノム研究の進歩によって腫瘍や遺伝性疾患における受容体,転写因子,情報伝達などの遺伝子異常など下垂体疾患の成因が次々と明らかにされている.最近ではがん免疫療法導入による新たな免疫関連下垂体疾患が登場している.WHOによる内分泌腫瘍の組織分類改訂では「下垂体腺腫の病理組織学的分類WHO2017」が発表され,また厚生労働省の難治性疾患政策研究事業の一環として「間脳下垂体機能障害に関する調査研究」班(有馬 寛 班長)による「間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き」(平成30年度改訂)が日本内分泌学会から発表されている.
このような下垂体疾患を実地医療で広く理解してもらう目的で,2012年「下垂体疾患診療マニュアル 初版」が刊行され,下垂体の基礎から臨床まで幅広く解説した専門書として好評であった.その後2016年に第2版の改訂,さらに2021年に編集者に成瀬光栄氏に加えて下垂体分野のリーダーである内科の髙橋 裕氏,脳外科の山田正三氏の両氏を迎えて,装いも新たに改訂第3版が刊行されることになった.本書では視床下部・下垂体ホルモンの幅広い基礎知識から臨床では各下垂体疾患を系統的にわかりやすく専門家により解説してある.また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの渦中,総論編でCOVID-19と下垂体疾患の診療・治療での対応・課題についても記載されている.最後はTopicsとして現在注目されている新たな知見,疾患概念,新規の診断法や治療法を取り上げている.
下垂体疾患は比較的まれなものであり,診断法や治療法も特殊であるとの認識のため内分泌専門医以外の医師にとってはなじみにくいとの印象がある.本書は内分泌専門医‐専攻医のみならず,研修医や専門外の一般医家にも役立つ下垂体疾患に関する良書といえる.下垂体疾患をよりよく理解するために多くの臨床医に本書を推薦したい.
2021年11月
兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ健診センター センター長 東京医科歯科大学名誉教授
平田結喜緒