熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科言語聴覚学専攻
大塚 裕一(おおつか ゆういち) 編集
白鳳短期大学専攻科リハビリテーション学専攻言語聴覚学課程
松尾 朗(まつお あきら) 著者
初版 B5判 並製 80頁 2020年12月25日発行
ISBN9784787824943
定価:2,090円(本体価格1,900円+税)冊
言語聴覚士を目指す学生向けの問題集『言語聴覚士ドリルプラス』シリーズ8冊目.本ドリルは、主に幼児期の構音の獲得を妨げる誤学習が原因とされる「機能性構音障害」をテーマとし,障害にかかわる解剖・生理から評価・訓練まで幅広くカバーした問題集になっています.もし初めて目にする用語があっても,主要用語は「読み解くためのKeyword」として解説! 実習や国試,そして臨床に出てからもずっと役立つ問題集です.
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目次
刊行にあたって 大塚裕一
機能性構音障害が会話を意識するきっかけに 松尾 朗
編集者・著者紹介
本ドリルの使い方
第1章 機能性構音障害の歴史
1 構音障害の基礎領域の歴史
2 構音障害の歴史
第2章 機能性構音障害の基礎
1 構音障害の定義
①構音障害の分類
②類似障害との関係
2 機能性構音障害にかかわる解剖と生理
①発声のしくみ
②構音のしくみ
③日本語の語音
④音声記号
3 機能性構音障害の症状(誤り音の種類)
①置換,省略,歪み
②未熟構音
③異常構音
④音形の誤り
⑤関連疾患との鑑別
第3章 機能性構音障害の臨床
1 機能性構音障害の評価
①問診・情報収集
②発声発語器官の検査
③発話の検査
④機器による構音動態の検査
⑤その他の検査
2 機能性構音障害の訓練
①訓練の原理・原則
②訓練の適応
③語音聞き取り(音韻)訓練
④音の産生訓練
⑤その他の訓練
3 機能性構音障害のリハビリテーション
①教材作成
②報酬
第4章 機能性構音障害の環境調整
1 家族指導
2 環境調整
3 ホームワーク
4 教育的支援
文 献
採点表
索 引
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序文
刊行にあたって
現在わが国には,およそ70校の言語聴覚士の養成校が存在します.言語聴覚士法(1997年)の成立時にはその数は数校程度だったのですが,20年あまりで増加し,県によっては複数校存在しているという状況になっています.言語聴覚士の養成は,さかのぼれば1971年,日本初の言語聴覚士養成校である国立聴力言語障害センター附属聴能言語専門職員養成所での大卒1年課程の開設が記念すべきスタートになるかと思います.その後,開設された養成校の養成課程は,高卒3年課程や高卒4年課程の専門学校,大学での4年課程,大卒を対象とした2年課程などさまざまで,今後これらの課程に加え専門職大学での養成課程が加わろうとしています.
言語聴覚士法が制定されてから,この約20年間での言語聴覚士にかかわる学問の進歩は著しく,教育現場で修得させなければならない知識・技術は増大する一方です.しかしながら入学してくる学生は,千差万別で従来の教育方法では十分な学習が困難となってきている状況もあります.
今回,このような状況を改善する方策の1つとして,修得すべき基本知識を体系的に示したドリルを作成してみました.内容は,言語聴覚士の養成校で学ぶべき言語聴覚障害を専門領域ごとにまとめてシリーズ化し,領域ごとのドリルの目次は統一したものとし,目次を統一したことで領域ごとの横のつながりも意識しやすくなるようにしました.
特徴としては
①すべての養成課程の学生を対象にしたドリルであること
②日々の専門領域講義の復習のみならず,実習,国家試験にも対応できる基本的な内容を網羅していること
③専門領域ごとにまとめたドリルであるが目次が統一されており,領域ごとの横のつながりが意識しやすいこと
などがあげられます.
対象は学生ということを念頭においてシリーズ化したのですが,臨床現場で活躍されている言語聴覚士にも,基本的な知識の整理という意味で使用していただくことも可能かと考えています.
最後に,この『ドリルプラス』シリーズが有効活用され言語聴覚士養成校の学生の学びの一助となることを期待します.
令和2年12月
大塚裕一
機能性構音障害が会話を意識するきっかけに
言語聴覚士の養成校に入学し,授業の一環で保育園や幼稚園に行くと,たくさんの園児たちが自分の話を聞いてと言わんばかりに同時にいろいろと話をしてくれました.その言葉に耳を傾けてみると「あれ?」と思うことが多々あり,「この違和感は何だろう?」と考えるようになりました.そのような幼少期の子どもの言い間違いや発音のたどたどしさについて,それが障害の可能性があるということを講義で初めて知りました.それが私の機能性構音障害学との出会いです.講義の中で言葉の発達には,頭の中の言葉(Language)の発達だけではなく,発音・話し言葉(Speech)にも発達段階があることを学びました.その違和感にいち早く気づき原因を明らかにし,支援していくことが言語聴覚士の仕事の1つだと思います.発話(構音)は,音声言語を活用したコミュニケーションとしてとても重要なツールです.養成校では,まずそのツールをどのように活用するのかといった解剖学・生理学を学び,それだけではなく,獲得段階として発達の側面も学びます.それらは単独の学問ではなく,繋がりがあることに気づいたとき言語聴覚士を目指す学びが今まで以上に楽しくなりました.学生から言語聴覚士となり,常に会話相手の発話を意識する習慣が身につきました.
今回,ドリルプラスを制作するにあたり,専門科目である「機能性構音障害学」のことを勉強するためには,その専門科目を支える基礎科目(発声発語系の解剖生理,音声学,音響学など)との繋がりの強化が重要であると考えました.このドリルで得た専門的知識の定着を図ることはもちろんのことながら,この科目を学ぶうえで必要となった基礎科目の知識との繋がりを意識しながら国家試験勉強に活用していただければと思います.また,国家試験の先の言語聴覚士としても活用していただければ幸いです.
令和2年12月
松尾 朗