フローチャートでわかる小児てんかん診療ガイド 改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:フローチャートでわかる小児てんかん診療ガイド 改訂第2版
岡山大学学術研究院医歯薬学域発達神経病態学(岡山大学病院・小児神経科) 教授
小林 勝弘(こばやし かつひろ) 編集
旭川荘療育・医療センター 顧問
大塚 頌子(おおつか ようこ) 編集
改訂第2版 B5判 並製 308頁 2022年06月17日発行
ISBN9784787825216
2011年刊行の初版から,新規項目と最新情報を加えてアップデート! 発症年齢,発作の誘因など発作のおこりかたや様相から発作型を診断し,そこから最終的に診断に至るプロセスを,フローチャートと表を用いて解説.さらに,代表的な症例を呈示して,病歴,脳波,画像検査なども多数掲載した.どのように発作型をイメージして鑑別ポイントとなる情報を問診すべきかがわかる,小児のてんかん診療に必携の1冊.
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目次
改訂第2版序文
初版序文
執筆者一覧
てんかんに関する基本用語解説
本書の構成
診断プロセスのフローチャートの見かた
第1章 総 論
1 てんかんの定義と分類
2 小児てんかんの特徴
3 小児てんかんの診断
4 てんかんおよびけいれん性疾患の脳波
5 併存症:神経発達症
6 併存症:重症心身障害児
7 小児てんかんの薬物治療
8 外科治療
9 食事療法(ケトン食)
10 小児てんかんと学校生活
11 てんかんの移行期医療
12 小児てんかんに関係する公的補助
第2章 新生児〜乳児期早期の発作(新生児期〜生後2か月)
1 けいれんや微細な症状の発作
新生児発作
症例:低酸素性虚血性脳症による新生児発作
新生児期発症てんかん(てんかん性新生児発作)
自然終息性の新生児てんかん・発作
2 筋攣縮や短い強直を示す発作
数秒〜数十秒おきに繰り返す(シリーズを形成する)発作:てんかん性スパズム
症例:大田原症候群
持続する不規則な短い攣縮:ミオクローヌス
第3章 乳児期の発作(生後3〜12か月)
1 けいれんあるいは類縁の運動症状を示す発作
発熱・体温上昇に伴うけいれん
症候性けいれん
誘因のない全身けいれん
遺伝子変異に伴う特殊なてんかん
非てんかん性エピソード
症例:泣き入りひきつけ
2 筋攣縮や短い強直を示す発作
数秒〜数十秒おきに繰り返す(シリーズを形成する)発作:てんかん性スパズム
症例:West症候群
単発の強直性攣縮の発作:短い単発性強直発作
連発しないごく短い全身性攣縮の発作:ミオクロニー発作
症例:乳児ミオクロニーてんかん
覚醒時の不規則分節性ミオクローヌス
睡眠時の不規則分節性ミオクローヌス
症例:睡眠時ミオクローヌス
その他の非てんかん性エピソード
3 動作停止,意識障害や異常行動を示す発作
誘因のない意識障害発作:焦点意識減損発作
症例:焦点意識減損発作を示す脳形成異常に伴う焦点てんかんの乳児
睡眠時無呼吸
その他の非てんかん性エピソード
第4章 幼児期前半の発作(1〜4歳)
1 けいれんあるいは類縁の運動症状を示す発作
熱性けいれん
症例:単純型熱性けいれん
軽症胃腸炎に伴う発作
症例:軽症胃腸炎に伴う乳幼児良性発作
症候性けいれん
睡眠中に好発し嘔吐・意識障害からはじまるけいれん
症例:Panayiotopoulos症候群
全身性強直けいれん(West症候群〔点頭てんかん〕や脳障害の既往あり):強直発作
その他の全身けいれん
2 筋攣縮や短い強直を示す発作
短い強直発作
症例:Lennox—Gastaut症候群
単発性でごく短い全身性攣縮の発作:ミオクロニー発作
症例:Dravet症候群
瞬間的な攣縮の直後に脱力する発作:ミオクロニー脱力発作
症例:ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん
3 脱力や失立・転倒を示す発作
脱力し倒れる発作:脱力(失立)発作
4 動作停止,意識障害や異常行動を示す発作
非定型的な熱性けいれん
開始・終了の不明瞭な短い意識消失発作:非定型欠神発作
種々の程度の意識障害を示す焦点発作:焦点意識減損発作
睡眠障害
急性・症候性意識障害
症例:ケトン性低血糖症
非てんかん性エピソード
第5章 幼児期後半〜学童期中期の発作(5〜9歳)
1 けいれんあるいは類縁の運動症状を示す発作
睡眠中に好発する焦点性けいれん
症例:中心・側頭部に棘波を示す小児てんかん
急性誘発(症候性)けいれん
出現状況に特徴のない全身けいれん
2 筋攣縮や短い強直を示す発作
チック
症例:チック障害
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
3 脱力や失立・転倒を示す発作
上下肢や頭部の連発する瞬間的脱力:てんかん性陰性ミオクローヌス 200
脳循環障害
周期性四肢麻痺
4 動作停止,意識障害や異常行動を示す発作
短い意識消失発作:欠神発作
症例:小児欠神てんかん
睡眠障害
非てんかん性エピソード
第6章 学童期後期〜思春期以降の発作(10歳以降)
1 けいれんあるいは類縁の運動症状を示す発作
全身けいれん:全般強直間代発作
症例:全般強直間代発作のみを示すてんかん
心因反応
2 筋攣縮や短い強直を示す発作
瞬間的な全身性筋攣縮:ミオクロニー発作
症例:若年ミオクロニーてんかん
覚醒時の不規則分節性・焦点性ミオクローヌス
睡眠中の筋攣縮
3 脱力や失立・転倒を示す発作
失 神
症例:失 神
4 動作停止,意識障害や異常行動を示す発作
開始・終了の明瞭な短い意識消失発作:欠神発作
種々の程度の意識障害を示す焦点発作:焦点意識減損発作
症例:内側側頭葉てんかん
症例:前頭葉てんかんのhyperkinetic〔hypermotor〕seizure
睡眠障害
第7章 特殊な発作およびてんかん
1 てんかん重積状態
けいれん性てんかん重積状態
非けいれん性てんかん重積状態
てんかん重積状態の治療
2 感覚発作・情動発作
感覚発作
症例:Gastaut型小児後頭葉てんかん
発作性情動症状
3 反射てんかん・発作
視覚刺激
聴覚刺激
体性感覚刺激
驚愕刺激
食事刺激
高次精神活動刺激
4 特殊な症状の発作
笑い発作(gelastic seizure)
啼泣発作(dacrystic seizure)
嘔吐発作(ictus emeticus)・自律神経発作(autonomic seizure)
Ictal syncope
5 自己免疫性脳炎および類縁病態とてんかん
Rasmussen症候群
自己免疫性脳炎/てんかん
難治頻回部分発作重積型急性脳炎
6 突然死
てんかんにおける予期せぬ突然死
睡眠時持続性棘徐波を示すてんかん性脳症および類縁病態
著明な睡眠脳波異常に伴い種々の精神・神経症状を示す特殊な病態
症例:中心・側頭部棘波を示す非定型小児てんかん
索 引
あとがき
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序文
改訂第2版序文
本書の初版では,小児てんかんを診療する小児科医・小児神経科医に向けて,それぞれの患児の診療の初期段階におけるてんかんの診断・治療について,その注意点や専門施設との連携も含めた形で示しました.その後10年以上の年月が経過し,この間に国際抗てんかん連盟(ILAE)の主導によるてんかん発作型およびてんかん分類の大改訂があり,遺伝学を始めとする数々の科学的・医学的進歩がありました.これらの新たな情報を組み入れた改訂を行い,このたび第2版として出版することができましたのは私達編集者・執筆者一同にとり大きな喜びです.
思い起こせば初版の起草のきっかけは,これまで多くの小児科医の方々に短期研修や長期国内留学で私達の教室を訪れていただいたことにありました.ほとんどの小児科疾患は,医師が症状を直接に確認できます.しかし,てんかん発作は患児が来院したときには多くの場合すでに止まっており,家族などの目撃者に何が起こったのか尋ねても要領を得ないことがしばしばあります.適切な問診こそが正しい診断のためにもっとも重要です.このことを鑑み適切な問診により診断を進めるために,医師が発作型をどのようにイメージして,鑑別のポイントとなる情報をいかに手際よく聞き出すかということを,小児てんかんの診療になじみが薄い方に対してもできるだけわかりやすいように説明するため,フローチャートを骨格に置きました.この基本線は第2版においても踏襲しています.問診にあたっての思考過程を図式化したのが本書のフローチャートです.
実際に患児を診ながら家族と接しながら直接マンツーマンでこのようなことをお話しできればよいのですが,それに代わるものとしてできるだけ具体的にノウハウをお伝えできるように努めました.この第2版を出版した後も科学の進歩は止むことがありませんので,てんかん症候群の分類など今後さらに新しくなっていくものと推測しますが,現時点での小児てんかんに関する知識をできるだけ整理して過不足なくまとめることを心がけました.これを契機として,小児てんかんの診療が多くの小児科医にとって身近になることを切望します.またさらに小児科以外の小児てんかん診療にかかわる多くの方々にとっても,小児の発作性疾患にアプローチをするうえでの手がかりになることを願っています.そしてこのことがひいては全国のてんかんを持つ子ども達とその家族にとってよりよい診療につながるのであれば心から幸いに存じます.
2022年5月
岡山大学学術研究院医歯薬学域発達神経病態学(小児神経科) 小林勝弘