肥満って何が大変なの? 肥満があらゆる疾患にどのように影響するのか,肥満患者によくみられる疾患別に,理学療法をたっぷり解説しました! 一般的な理学療法と肥満患者に対する理学療法の違いをまとめ,肥満の特徴をエビデンスに基づいて示しています.疾患編の各症例では,臨床に役立つポイントが盛りだくさん! 様々な疾患における一般的な理学療法からさらに踏み込み,肥満を呈する症例まで対応できる実践的な1冊です.
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目次
まえがき 田屋雅信
執筆者一覧
略語一覧
イントロダクション 田屋雅信
評価・介入編
1 肥満の評価方法と標準的な治療 加古誠人
2 肥満の評価方法(フィジカル編) 田屋雅信
3 肥満特有の歩行および動作分析 鳥山 実
歩行および動作分析の総論
肥満者特有の歩行および動作分析
4 エビデンスに基づく減量メカニズム -栄養療法および運動療法- 佐々木翔平
一般的な減量のメカニズムおよびトレーニング方法
肥満に対する適切な栄養療法・運動療法
疾患編
運動器障害
1 肥満を呈する下肢関節疾患 林 和寛
下肢関節疾患(股関節,膝関節)の理学療法総論
肥満を呈する下肢関節疾患に対する理学療法
Case 1
2 肥満を呈する脊椎疾患 加古誠人
脊椎疾患に対する理学療法総論
肥満を呈する脊椎疾患に対する理学療法
Case 2
内部障害
3 肥満を呈する虚血性心疾患 田中伸弥
虚血性心疾患に対する理学療法総論
肥満を呈する虚血性心疾患に対する理学療法
Case 3
4 肥満を呈する心不全 田屋雅信
心不全に対する理学療法総論
肥満を呈する心不全に対する理学療法
Case 4
5 肥満を呈する患者の心臓血管外科手術後 大瀧 侑
心臓血管外科手術後の理学療法総論
肥満を呈する患者の心臓血管外科手術後の理学療法
Case 5
6 肥満を呈する呼吸器疾患 渡邉陽介
呼吸器疾患に対する理学療法総論
肥満を呈する呼吸器疾患に対する理学療法
Case 6
7 肥満を呈する糖尿病 猪熊正美
糖尿病に対する理学療法総論
肥満を呈する糖尿病に対する理学療法
Case 7
脳血管障害
8 肥満を呈する脳血管障害 藤野雄次
脳血管障害に対する理学療法総論
肥満を呈する脳血管障害に対する理学療法
Case 8
がん
9 肥満を呈するがん患者 立松典篤
がん患者の理学療法総論
肥満を呈するがん患者の理学療法
Case 9
索引
おわりに 加古誠人
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序文
まえがき
約2年前,当時の編集者から理学療法士だけでなくリハビリテーションにかかわる多職種を対象とした「肥満患者のリハビリテーション」の書籍を企画しているという相談を受けました.内容は,急性期,回復期を問わず肥満を呈する患者によく認められる障害やリハビリテーションの治療目標と介入,ならびにリハビリテーション時のリスク・注意点を実践的な視点で疾患別に解説する実用書籍を想定しているということでした.
本企画を相談されたとき,大変ニッチなテーマであると率直に感じたのですが,臨床現場ではこのようなニッチな部分で悩むことが非常に多いのも事実です.その際,症例報告を中心とした論文を検索することが一般的ですが,肥満を合併した症例に悩むセラピストにとって本書籍がファーストチョイスになりうると思いました.本書籍は若手リハビリテーション関連職種の方に手に取ってもらいやすいよう,かつインパクトを出せるように「BMI over 30 肥満患者のリハビリテーション」という,ユーモアたっぷりの題名となりました.
肥満を有すると各治療に対しマイナスに働くことが多いです.「通常の活動でも酸素消費量が多くなる」「呼吸機能障害を助長する」「糖尿病や高血圧の合併により,運動療法のリスクが高まる」「関節の可動域を制限する」「姿勢が悪く運動の効率も悪い」「アドヒアランスが不良である」など,通常のリハビリテーションを実施することが困難となり,かつリスクを伴う可能性があります.
また,肥満に対しては減量が有効であることは周知の事実ですが,短期間で達成することはむずかしいです.運動だけでなくアドヒアランスを向上させながら食事などの生活面の改善が必要となります.このように肥満は生活習慣病であるため,心血管・脳血管疾患にスポットが当たる傾向がありますが,実際にはあらゆる疾患でも弊害となるのが現状です.
そこで,様々な疾患を網羅する書籍となるように,大学の同期であり卒業後はお互い別の領域で働きながらも志を共にした加古先生に共同編集をお願いしました.臨床と研究は医療の二本柱ではありますが,臨床で悩むことは研究活動で解決できないこともあります.今回,この肥満という阻害因子をいかに解決していくか,各分野でご活躍されている先生方に御執筆を依頼しました.
本書の構成は,まず肥満の評価方法と留意点,そして疾患別の理学療法の項目となっています.疾患別の項目では,一般的な理学療法から肥満を呈すると生じる難題や目標,そして対処法を解説しています.疾患別の項目では症例報告も紹介されていますので是非ご一読ください.
今回,共同編集を担ってくださった加古先生,非常にニッチなテーマにもかかわらず丁寧に解説してくださった先生方,診断と治療社の編集の方々,そして皆様のご家族に感謝申し上げます.
2023年8月
東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部
田屋雅信