新 現場で役立つラクラク成長曲線診断と治療社 | 書籍詳細:新 現場で役立つラクラク成長曲線
十文字学園女子大学教育人文学部幼児教育学科
加藤 則子(かとう のりこ) 編著
日本赤十字北海道看護大学臨床医学領域
伊藤 善也(いとう よしや) 編著
自治医科大学附属病院総合周産期母子医療センター新生児発達部
河野 由美(こうの ゆみ) 著
こうむら女性クリニック
甲村 弘子(こうむら ひろこ) 著
大正大学心理社会学部人間科学科
長谷川 智子(はせがわ ともこ) 著
金城大学看護学部看護学科
彦 聖美(ひこ きよみ) 著
間部病院小児科
間部 裕代(まべ ひろよ) 著
初版 B5判 並製 168頁 2023年08月21日発行
ISBN9784787825797
定価:3,850円(本体価格3,500円+税)冊
初版発行より16年が経ち,この間,「学校保健安全法施行規則」の一部改正により身長・体重成長曲線の積極的活用の重要性が高まるなど,大きな変化がありました.本書は,成長曲線の種類,目的などの解説から,子どもの成長・発達のなかで成長曲線をどうやってみて,どう活用していくのかを,乳幼児身体発育曲線や0~17.5歳の体重・成長曲線を用いた豊富な症例で解説しています.子どもの健康を確認し,病気や異常をみつけるためにすぐに役立つ知識が満載です!
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目次
編集の序 加藤則子,伊藤善也
執筆者一覧
第1章 成長曲線ってこんなに役立つ 加藤則子
A 成長曲線って何?
1 成長曲線とは
2 子どもの健全な成長とは
3 健全な成長に必要な要因
B 成長曲線とその活用
1 基準値のもととなったデータと集計方法
2 基準値使用における留意点
3 成長の評価における留意点
4 発育データの記録
C 成長に関してよくある相談および対応
1 体重が増えない-乳児期
2 体重が増えない-幼児期
3 体重が増えすぎる-乳児
4 太っている-幼児
5 小柄
6 学童期以降
第2章 からだの病気と成長曲線 伊藤善也
A からだの働きからみた成長曲線
1 ICPモデルとは何か
2 成長障害に気づくことが第一
3 成長曲線の基本と成長障害
4 体重・体格の評価
5 病院での受診をすすめるとき
B 成長曲線が診断・治療・経過観察において重要となる疾患
1 成長ホルモン分泌不全性低身長症
2 甲状腺機能低下症
3 小児肥満症
4 思春期遅発症
5 思春期早発症
6 Turner症候群
7 SGA性低身長症
8 軟骨無形成症
9 Noonan症候群
10 Marfan症候群
11 Crohn病
第3章 こころのトラブルと成長曲線
A 子どもの成長に影響する最近の話題 間部裕代
1 神経発達症・こころの問題・ストレス
2 栄養・睡眠
3 マルトリートメント(マルトリ)・不適切養育
B 心理的発達 長谷川智子
1 気質について
2 アタッチメントの発達
3 子どもの行動問題,親子関係の問題の捉え方
コラム デジタル機器と生態学的システム理論
C 成育環境 長谷川智子
1 肥満
2 やせ・体重増加不良
3 低身長
D 神経性やせ症 甲村弘子
1 疫学
2 診断
3 病因・病態
4 身体症状と検査所見
5 合併症
6 後遺症
7 治療
8 予防と早期発見
第4章 低出生体重児と成長曲線 河野由美
A 低出生体重児の成長
1 低出生体重児の成長評価の重要性
2 低出生体重児の成長の特徴
B 低出生体重児の成長曲線
1 成長曲線の種類
2 成長曲線の使い方と保護者への説明
C 低出生体重児の精神運動機能発達と成長曲線
1 低出生体重児の精神運動機能発達の評価
2 運動発達のマイルストーン
3 母子健康手帳の成長曲線に描かれた運動発達指標の使い方と保護者への説明
D 長期フォローアップの重要性
第5章 双生児の成長曲線 彦 聖美
A 多胎用の成長曲線がなぜ必要か
B 双生児の成長・発達を考えるポイント
C 乳幼児期双生児の身体発育の概要
1 単胎児との差
2 双生児ペアの差
3 体重差のパターン
4 卵性による類似の違い
D 出生体重差が10%以上のペアの成長曲線
コラム 双生児用身体発育曲線を活用しよう
第6章 学校健診と成長曲線 伊藤善也
A 学校における保健活動
B 学校保健安全法と同法施行規則
C 学校現場で成長曲線を活用する必要性
D 学校健康診断での評価の実際
1 健康診断の実施日と年齢の表記
2 身長と体重の測定
3 身長や体格を評価する
E 学校健診成長曲線ソフトウェア
付録 実際にグラフをつけてみよう
●乳児身体発育パーセンタイル曲線(男子・女子:0〜12か月)
●幼児身体発育パーセンタイル曲線(男子・女子:1〜6歳)
●幼児用肥満度判定曲線(男子・女子:1〜6歳)
●学童用肥満度判定曲線(男子・女子:6〜17歳)
●身体発育パーセンタイル曲線(男子・女子:0〜7歳)
●身体発育パーセンタイル曲線(男子・女子:0〜17.5歳)
索引
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序文
編集の序
「現場で役立つラクラク成長曲線」の第1版が上梓されてから10年余が経ちました.成長曲線を,よりわかりやすく親しみやすく,かつ重要な変化に気づいていただけるようにと,思いを届けてまいりましたが,現場のニーズも徐々に変わってきているため,新版を企画いたしました.
乳幼児健診,学校,医療等,それぞれの現場で成長曲線が活用されていますが,時として,数字やグラフといったものになじみをもちにくいという声も聴かれます.このため,成長曲線が,何のためにあるのかというところからの解説を試みました.
身長や体重の計測というごくありふれた作業の結果は,たとえそれらが貴重なものであっても,忙しい現場の業務の中では,それらが語ってくれる重要なからだの情報をみすみす見逃してしまうということも起こりえます.このため,成長曲線から子どもの健康を確認し,病気や異常を見つけていくために,様々な症例をあげ,参考にしていただけるように工夫しました.
この10年余の間に,特にこころの問題がより大きく取り上げられるようになってきました.2021年3月に策定された「成長過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(成育基本法)」の基本的方針においても,バイオサイコソーシャルの観点(身体的・精神的・社会的な観点)からの切れ目ない支援のための方策が求められています.こころの問題の比重は,これからもますます大きくなっていくでしょう.このようなニーズに応えられるよう,こころのトラブルと成長曲線との関連に関する内容を,より充実させました.
成長曲線にまつわる大きな社会的動きがありました.2014年4月,「学校保健安全法施行規則」が一部改正され,文部科学省から「座高の検査を必須項目から削除したことに伴い,児童生徒等の発育を評価する上で,身長曲線・体重曲線等を積極的に活用することが重要となること」とした通知が出されました.学校現場で成長曲線がより重要なものとなってきているため,一章を新たに設けて,これに関する解説を充実させました.
本書を通じて,いろいろな成長曲線のパターンが皆様方にとってより身近なものとなり,成長曲線を描いていくことの意義を感じ取っていただけるようになると幸いです.
最後になりましたが,本書の刊行に至るまで,根気よく編集の労をお取りくださいました診断と治療社の吉村さん,坂上さん,土橋さんに,この場を借りて,心より感謝を申し上げます.
2023年7月
加藤則子
胎児期に始まる生命は母の子宮のなかで急速に,劇的に姿を変えて,出生に至ります.そして出生後は母親,父親,家族に見守られて,健康的なからだとなり,さまざまな能力を身につけて,社会へと羽ばたいていきます.その姿はとても美しく,気高いものであると私は日々,感じています.しかし,このようなプロセスは時に内的・外的な要因により乱れが生じることもあります.そのような乱れに出会わないことが最優先事項であり,次に重要なのは早期に乱れを発見することではないでしょうか.
ここで中心的な役割を果たすのは医師だけではありません.乳幼児期の健診では保健師や栄養士が,幼稚園や保育所では幼稚園教諭や保育士,学校では教諭,養護教諭や栄養教諭などのさまざまな専門職種が親・保護者とともに子どもを見守ります.見守る際には専門家としての知識や経験が重要ですが,これまでに蓄積された小児医療・小児保健の知見を基にして,さまざまな補助的な道具が開発されてきました.その中でも重要な一つが成長曲線です.
成長曲線は身長や体重を測定し,グラフに表されるものです.文字の発明は紀元前3200年頃とされ,その後さまざまな科学が発展して現代に至りました.このような経緯を考えると,成長曲線も昔から存在していたのではないかと思われるかもしれません.しかし,実際に現在使用されているような成長曲線が誕生したのは19世紀後半です.事象の変化をグラフに表し,集団の分布をパーセンタイルや標準偏差で示すという科学の基盤の上で,ついに,そしてようやく成長曲線が生まれたのです.
しかし,ひとりひとりの子どもの成長を見守るために成長曲線が使われるようになるまでにはまだまだ時間がかかりました.日本の母子健康手帳の歴史を辿ると,昭和17年に妊産婦手帳として始まり,昭和23年の改正で発育平均値のグラフが掲載されました.さらに,昭和51年の改正により身体発育パーセンタイルがようやく導入されたのです.これが日本の歴史です.
さらに現在,社会はデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により,さまざまな分野のあり方が変わりつつあります.成長曲線に関連することについても例外ではありません.今後,小児保健分野もDX化し,成長曲線は今まで以上に私たちの生活に身近な存在となっていくことでしょう.成長曲線はまさに成長の途上にあるのです.
本書ではこの成長曲線について,ひとりひとりの子どもをどのような観点から見守るべきかを7人の専門家がまとめています.ひとりひとりの親や保護者に,そして子ども自身に対して,成長曲線を正しく活用していただくために,小児保健の関係者の皆様には成長曲線について学んでいただきたいと思います.そして本書がそのお役に立てることを願って,筆を置かせていただきます.
2023年7月
伊藤善也