日本遺伝カウンセリング学会,日本人類遺伝学会の共同運営による認定遺伝カウンセラー制度委員会監修のもと,本邦の医療や社会の現状に即した遺伝カウンセリングを学ぶための明確な里程を示す標準テキスト.改訂「認定遺伝カウンセラー到達目標」に準拠し,基礎理論の理解から診療現場での実践まで系統的に解説.認定遺伝カウンセラーをはじめとする遺伝医療・ゲノム医療の専門職を目指すすべての医療者必携の1冊!
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目次
・発刊にあたって 櫻井晃洋,小崎健次郎
・編集の序:本書のねらいと使い方 山本佳世乃,井本逸勢,山田崇弘,三宅秀彦,甲畑宏子
・本書における用語について
・執筆者一覧
Ⅰ 遺伝カウンセリングの基礎
1 遺伝カウンセリング総論
01 遺伝カウンセリングの定義と歴史 西垣昌和
2 遺伝カウンセリングの背景となる⼼理学的理論
01 心理学的理論の基礎 安齋純子
02 カウンセリングモデル 安齋純子
3 遺伝カウンセリングのための情報収集
01 医学的情報の収集と整理 土屋実央
02 社会的情報の収集 勝元さえこ
4 遺伝カウンセラーの自己研鑽
01 内省的態度(自己省察) 鳥嶋雅子
02 プロフェッショナリズム 福田 令
03 生涯学習 宮﨑幸子
04 スーパービジョン 宮﨑幸子
5 遺伝カウンセリングにおける倫理の基本
01 ゲノム情報の特性とクライエント⼼理 渡辺基子
02 倫理的検討の⽅法 髙橋沙矢子
03 研究倫理 髙橋沙矢子
6 遺伝カウンセリング研究
01 遺伝カウンセリング研究 渡辺基子
Ⅱ 遺伝カウンセリングの実践
1 遺伝カウンセリングの準備と構築
01 遺伝カウンセリングの準備・計画 深野智華
02 遺伝カウンセリングの環境整備 池川敦子
03 クライエント情報の収集 稲葉 慧
04 遺伝カウンセリングのアジェンダ設定 高嶺恵理子
05 遺伝カウンセリングにおけるマネジメント 小川真紀
06 遺伝カウンセリング後のフォローアップ 佐藤友紀
07 遺伝カウンセリングの記録 和泉美希子
2 家族歴の聴取
01 家系図記載法と聴取 金子景香
02 遺伝学的リスク算定 金子景香
3 遺伝カウンセリングにおける情報提供
01 情報提供 松㟢佐和子
02 リスクコミュニケーション 山田 瞳
03 遺伝カウンセリングに⽤いるツール 本田明夏
4 遺伝カウンセリングに必要なコミュニケーション技術
01 カウンセリングの基本態度 仲間美奈
02 質問法とクライエントへの反応 浦川優作
03 言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション 田中敬子
04 クライエントを理解する 有田美和
05 クライエントとの関係構築に影響する要因 井上佳世
5 ⼼理実践技術
01 意思決定⽀援 津幡真理
02 ⾼度な遺伝カウンセリング技法 松川愛未
03 来談者中心療法と医学的推奨事項 金子実基子
6 遺伝学的検査と遺伝カウンセリング
01 遺伝学的検査と遺伝カウンセリング 河村理恵
7 特別な状況の遺伝カウンセリング
01 特別な配慮が必要な状況への対応 山下(井上)沙聡
8 医療における遺伝カウンセリング
01 遺伝カウンセリングの情報管理 池田有美
02 遺伝カウンセリングと⼈間関係 佐藤裕子
03 多職種連携・チーム医療 佐藤裕子
04 地域連携 柳沢佳子
9 遺伝カウンセリング実践におけるELSI
01 遺伝カウンセリングに必要な法律 大磯義一郎
02 遺伝カウンセリングと医療制度・社会保障制度 大下真美
03 遺伝カウンセリングにおけるジレンマ 浄住佳美
10 遺伝カウンセリングにおける教育的アプローチ
01 遺伝医療の教育・啓発 鈴木美慧
Ⅲ 様々な場⾯での遺伝カウンセリング
1 ⽣殖・周産期医療における遺伝カウンセリング
01 NT肥厚・形態異常 武田恵利
02 習慣流産(均衡型転座) 大江瑞恵
2 ⼩児医療における遺伝カウンセリング
01 Down症候群 秋山奈々
02 未診断疾患 伊藤志帆
3 成⼈期疾患における遺伝カウンセリング
01 筋強直性ジストロフィー1型 柴田有花
02 Marfan症候群 伊田和史
4 腫瘍診療における遺伝カウンセリング
01 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC) 渡辺智子
02 家族性大腸腺腫症(FAP) 高津美月
Ⅳ コラム
グループワーク 若井未央
ロールプレイ 阿部歩美
病院実習 原田佳奈
症例検討会 張 香理
GenomicsとGenetics 中國正祥
・遺伝カウンセリングに役立つリンク集
・さらに深く学ぶために
・索引
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序文
発刊にあたって
急速に進展する遺伝医療・ゲノム医療の専門的な担い手として,日本遺伝カウンセリング学会では,日本人類遺伝学会とともに,臨床遺伝専門医制度と認定遺伝カウンセラー制度を運営しています.こうした専門職を目指す人たちのためのテキストは長らく海外の書籍が用いられていましたが,一昨年から臨床遺伝専門医を目指す人のための「臨床遺伝専門医テキスト」が5分冊の形で刊行されました.今回,認定遺伝カウンセラーの到達目標に準拠した「遺伝カウンセリング標準テキスト」が刊行されたことで,遺伝医療の専門職を目指す人のための基本的なテキストが揃いました.
遺伝カウンセリングは決して専門職だけが行うものではなく,すべての医師や看護師がその基本について理解し,実践できることが求められます.専門職を目指す人はもちろん,遺伝医療に関心を持つ多くの人に本書を手にとっていただき,その学びが多くの患者さんやご家族のために役立つことを期待しています.
2023 年9月
一般社団法人日本遺伝カウンセリング学会
理事長 櫻井晃洋
近年のゲノム解析など科学技術の進歩で,難病やがんの診断・治療は大きく進展しました.一方で,出生前診断や着床前診断,網羅的遺伝子診断での二次的所見開示など新たな生命倫理上の課題も生まれています.このため,遺伝医療・ゲノム医療の対象者の一人ひとりに最適な遺伝カウンセリングを提供する機会は様々な領域で増えています.このような医療の担い手である医療者は,専門的な遺伝カウンセリングを実践できることが期待されています.
急速に変わる遺伝医療・ゲノム医療に対応可能な遺伝カウンセリング実践者を育成するには,基礎理論の理解と診療現場での実践を促し,応用力を養う必要があります.本書は,これらの必要性を踏まえて,本邦の医療や社会の現状に即した遺伝カウンセリングを学ぶための明確な里程を示すテキストとして作成されました.本書での学びが,患者さんやご家族のより良い診療と支援につながることを願っています.
2023年9月
一般社団法人日本人類遺伝学会
理事長 小崎健次郎
編集の序:本書のねらいと使い方
本書は,本邦での遺伝医療・ゲノム医療の中で求められる遺伝カウンセリングを学ぶために作成されたテキストである.これまでもこの領域の参考書は国内外に存在していたが,本邦の医療の現状を反映した遺伝カウンセリングの理論から実践応用までを系統的に初学者が学べるテキストはなかった.そこで,認定遺伝カウンセラー制度委員会が,2022年に新たに発表した認定遺伝カウンセラー到達目標に準拠したテキストとして,認定遺伝カウンセラーを中心に本書を作成するに至った.
本書は,個々の学習者が自分自身に必要な情報を発展的に学習していくためのガイドとして利用することを想定して,到達目標に対する記載内容は最小限にしている.そのため,認定遺伝カウンセラー到達目標の「知識,技術(技能),態度」の三本柱のうち,技術,態度を中心に解説を行い,臨床遺伝学の詳細な知識は割愛した.知識面は,本書の姉妹書にあたる「臨床遺伝専門医テキスト①〜⑤」などの成書を参照して補っていただきたい.
全体は3部構成となっており,「I. 遺伝カウンセリングの基礎」,「II. 遺伝カウンセリングの実践」では技術,態度の各項目を解説した.さらに,「III. 様々な場⾯での遺伝カウンセリング」では,臨床遺伝学の基本4領域について,各2事例での遺伝カウンセリングを事例検討の形で紹介した.このように,本書は全体を通読することも,必要な項目を拾い出して読むことも可能である.各項目で共通して参照される基本的な参考図書については,原則として個別の項目で参考文献としては提示せず,巻末にまとめて示した.また,巻末には,さらに深く学ぶために有用なテキストや遺伝カウンセリングに役立つWEBサイトなどをまとめたので,適宜活用して学習の幅を広げてほしい.
医師,看護師,認定遺伝カウンセラー,その他のメディカルスタッフなど遺伝医療・ゲノム医療の担い手にとって,遺伝カウンセリングは日常的な診療の一部となっている.理論から実践的な考え方まで,本書が読者のみなさんの学習のよき道標となれば幸いである.
2023年9月
総編集
山本佳世乃
井本逸勢
山田崇弘
責任編集
三宅秀彦
甲畑宏子