専門外なので,どのような検査をすればよいかわからない・・.そんな声におこたえし,甲状腺疾患の診断から治療,管理までをわかりやすく解説した“かかりつけ医”のための書籍です.日常臨床で甲状腺疾患を疑い,必要な検査をして治療につなげられるよう,甲状腺機能検査や抗体検査など診断に必要な検査の理解,治療法の選択肢,選択基準,治療の終了の中止時期と方法,経過観察の対象,治療中での検査法とその時期,投与薬剤の相互作用や副作用,適正投与のための投与量の決定,抗甲状腺薬の副作用対処法などが書かれ,コンパクトながら盛りだくさんの内容です.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
はじめに
甲状腺疾患を疑うポイント
1 全身症状(局所症状)
2 各科別にみられる症状-日常臨床での重要性:特に甲状腺機能異常と
循環器疾患・糖尿病・CKD・生殖機能との関係性-
3 甲状腺ホルモンの作用と分泌調節機能について知っておいて
欲しい基礎知識
甲状腺機能をみるのに必要な検査とピットフォール
甲状腺自己抗体の測定
その他の甲状腺血液検査
甲状腺に結節をみたらどうするか
1 甲状腺超音波検査でどこまでわかる? 他の画像診断は必要か?
2 甲状腺分化癌(乳頭癌および濾胞癌)の手術・放射線治療後のフォロー
-何をどのくらいの間隔で調べるか?-
甲状腺疾患治療のポイント
1 甲状腺機能亢進症の治療 1)バセドウ病の治療
2 甲状腺機能亢進症の治療 2)無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎,
機能性結節の治療
3 甲状腺機能低下症の治療
甲状腺疾患治療のリスクマネージメント
-特に甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に対する抗甲状腺薬の投与について-
甲状腺専門医への紹介のポイント-どのタイミングでどこへ紹介するか?-
1 甲状腺結節
2 広義の甲状腺機能亢進症
3 甲状腺機能低下症
患者指導
1 乳幼児・小児
2 高齢者
3 留意すべき疾患に発症したケース
おわりに
ページの先頭へ戻る
序文
日本甲状腺協会は,かかりつけ医や薬剤師などの非専門医の方と国民へ,甲状腺疾患の啓発活動や治療支援,疫学調査などを主な目的として,2022 年5 月に一般社団法人として設立いたしました.
この協会の最初の仕事として,甲状腺疾患とその治療法の基礎知識をまとめた本書「かかりつけ医のための甲状腺疾患治療ガイドガイドラインに沿った甲状腺診療の普及に向けて」を発刊することとなりました.
甲状腺疾患は,潜在的な疾患を入れますと我が国の1,000 万人以上が罹患しており,さらに甲状腺薬は実臨床の場で最も処方されている薬剤の一つです.しかし,甲状腺疾患の適切な診断や甲状腺薬の処方を続けるのに必要な検査法,バセドウ病などへの抗甲状腺剤の使用法や中止方法など,個々の症例に応じて難しい場合もあります.
また,甲状腺は,栄養素のヨウ素を原料として,甲状腺ホルモンをつくる唯一の臓器です.わが国は,海に囲まれ,海産物に恵まれヨウ素が十分にとられており,他の大陸の内地でのヨウ素不足とはまったく異なる甲状腺疾患の病態があります.したがって海外のガイドラインなどをそのまま適応することができない場合もあります.さらに,治療時におけるヨウ素の適切な取り方など,医療関係者の中でも誤解されたまま患者指導されている場合もあります.これまで日本甲状腺学会や日本内分泌外科学会(旧日本甲状腺外科学会),アメリカ甲状腺学会などから甲状腺疾患には多くのガイドラインや手引きが発刊されてきました.また,日本で甲状腺専門医を目指す方には,日本甲状腺学会から「甲状腺専門医ガイドブック改訂第2 版」が発刊されています.
本書はかかりつけ医や薬剤師など,非専門医の方々の実臨床において教科書となるように基本的な内容で構成する予定でした.ただ,嬉しいことに,執筆者はいずれもがその領域のエキスパートの方ばかりで,一般的な著書やガイドブックでは,触れられないエッセンスも数多くご執筆していただき,専門医の先生方にもご一読いただくと参考になるような点が多くあると思われます.
本書が,甲状腺疾患の適切な診断や治療,そしてマネージメント(療養)の手助けとなり,一人でも多くの国民が安心して甲状腺疾患の診療や治療支援が受けられるようになれば幸甚です.
令和5 年5 月吉日
一般社団法人 日本甲状腺協会 理事長
山田正信