将来子どもと関わる職を目指す学生や現場で働く人に向け,子どもたちの理解と支援について必要な知識を解説した一冊.2015年の初版発行から8年を経て,今回の改訂第3版では共著者に公認心理師を迎え,公認心理師カリキュラムに準拠することで、心理領域の理解を深めた. “現場で役に立つ”ちょうどよいボリューム感はそのままに,子ども家庭庁の発足や法制度の改正といった前版発行以降の変更点にも触れ、最新情報へとアップデートしている.
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目次
はじめに 古荘純一
執筆者一覧
公認心理師カリキュラムを学ぶ
Ⅰ章 総論 - 子どもの精神発達
1.子ども期の分類
2.乳幼児期の精神保健
3.学童期の精神保健
4.思春期の精神保健
5.青年期,移行期,AYA世代の精神保健
Ⅱ章 総論 - 精神科診断基準と診断手技
1.精神科の2つの診断基準 DSMとICD
2.精神科疾患診断の原則
3.医学用語の変遷について
4.精神医学からみた周産期の親子関係
Ⅲ章 各論 - 神経発達症(発達障害)
1.発達障害 総論
2.ASD(自閉スペクトラム症)
3.ADHD(注意欠如多動症)
4.LD(学習障害)
5.知的障害
6.境界知能,ボーダー,グレーゾーン
7.吃音
8.DCD(発達性強調運動障害)
9.発達障害の二次合併症
Ⅳ章 各論 - その他の精神疾患
1.不安障害(不安症)
2.強迫性障害(強迫症)
3.ストレス関連症(トラウマなど)
4.うつ病とその関連
5.統合失調症
6.食行動障害(食行動症)および摂食障害(摂食症)と排泄症
7.反抗挑戦性障害(反抗挑発症)と素行障害(素行・非社会的行動症)
Ⅴ章 各論 - その他のおもな子どもの精神医学的側面
1.チック症(チック障害)
2.睡眠障害
3.てんかん
4.心身症と神経症
5.性保健の問題
Ⅵ章 各論 - 子どもの心の診療関連の問題
1.子ども虐待
2.不登校とひきこもり
3.自傷・自殺
4.少年非行
5.喫煙,飲酒,物質使用症
6.子どもの攻撃性
7.インターネット依存・ゲーム行為症
Ⅶ章 総論 -支援環境 - どのように対応するか
1.社会資源の理解とその活用
2.環境整備の原則とリエゾン精神医学
3.心理支援
4.家族支援
5.薬物治療
6.虐待防止とトラウマケア
追補 公認心理師カリキュラムに合わせて
1.パーソナリティ症(パーソナリティ障害)
2.認知症
Column
【Column1】小児科・精神科双方向から積極的な連携の構築を
【Column2】心身症の対応にはまず「理解」から
【Column3】コロナ禍と子どものうつ自殺
【Column4】発達障害とQOL研究
【Column5】ADHDと自尊感情
公認心理師試験過去問題Q1~Q21
索 引
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序文
はじめに
このたび,『子どもの精神保健テキスト』改訂第3版を発刊することになりました.本書の目的は,「医療・心理・教育・保育の授業と現場で役に立つ」テキストですが,青山学院大学では,心理で公認心理師カリキュラム「精神疾患とその治療」のテキストとして多くの学生が使用しているため,改訂にあたり,他書にない特徴は残しつつ,心理臨床を目指す人,活動する人にも利用できるような内容も加えました.改訂第3版のおもな変更点は,以下になります.
1)公認心理師で東京学芸大学講師の岩﨑美奈子先生と共著としました.
2)追補で,大人の精神疾患と公認心理師過去問を掲載しました.
3)データを最新のものに変更しました.ただし,虐待の相談対応件数,不登校やいじめの実態など,毎年公表されるデータもありますので,適宜,新しいデータはないか検索してください.
4)文献の割愛.先述したように,精神保健に関係したデータの多くは短い期間で更新されます.文献として出典を示していても,頻回にアップデートや,削除されることもあります.最近はインターネットを利用して,文献検索も普及してきましたので,文献は割愛しました.
5)授業のテキストだけでなく,臨床実習や,教育・福祉機関の設置図書としての活用を目指しました.
6)病名(診断名)は,古いものは置き換えて,普及しているものはそのまま残しました.精神科と心理では,医学用語はアメリカ精神医学会のDSM基準に依拠しますが,そのほかの医療の分野や福祉,保健機関では,WHOのICD病名を使用していることが多く,またWHOの病名は訳語を作成中であり,書籍,文献によって表記が異なっています.多くの分野の方に使っていただくことを目的としていますので,医学分野では置き換えが進んでいても,「発達障害」「知的障害」「学習障害」など,普及しているものはそのまま使用しています.
7)総論を3つ,各論を4つの章に分けました.各論は発達障害,その他の精神疾患,その他の子どもの精神医学的問題,精神保健の問題,に区分しました.
8)子ども家庭庁の発足,公認心理師の過去問題,新薬の認可,などを盛り込みました.
9)加筆した部分が多いため,前版の記述は可能な範囲で取捨選択し,テキストとしての使いやすさは残しました.
コロナ禍は,生活全般に大きな影響を与えました.本書では,コロナ後においても,引き続き役立つ,普遍的な内容が盛り込まれていると思います.
最後に,企画作成の段階からご協力いただいた,診断と治療社編集部の皆さまの協力がなければ,改訂版として発刊できなかったことでしょう.関係の方々に深謝申し上げるとともに,本書が,子どもたちの理解と支援にヒントとなればこのうえない光栄なことです.
2023年10月
古荘純一
青山学院大学教育人間科学部教育学科