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原発性免疫不全症候群 診療の手引き 改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:原発性免疫不全症候群 診療の手引き 改訂第2版

日本免疫不全・自己炎症学会 編集

改訂第2版 B5判 並製 204頁 2023年10月06日発行

ISBN9784787826305

定価:5,940円(本体価格5,400円+税)
  

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6年ぶりの改訂!研究,診療の進歩が目覚ましい原発性免疫不全症候群から代表的かつ頻度の高い疾患を選び,診療の手引きとして疾患概要から診断基準,重症度分類,診療上注意すべき点,専門医への紹介までの対応など,診療の一助となる内容が満載.各分野のエキスパートにより図表やフローチャートを用いながらわかりやすく解説され,最新の情報を網羅した臨床的・実践的な一冊となった.診察で重要な移行期ガイドラインも掲載.

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目次

改訂第2版 序文  森尾友宏
初版 序文  野々山恵章
執筆者一覧

Ⅰ 総 論
序 章 原発性免疫不全症候群
  原発性免疫不全症候群:総論  森尾友宏

Ⅱ 各 論
第1章 複合免疫不全症
A X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)  關中悠仁
B アデノシン・デアミナーゼ(ADA)欠損症  内山 徹
C その他の複合免疫不全症(CID)  矢田裕太郎,大賀正一

第2章 免疫不全を伴う特徴的な症候群
A ウィスコット・オルドリッチ(Wiskott-Aldrich)症候群(WAS)  笹原洋二
B 毛細血管拡張性運動失調症  髙木正稔
C DNA修復障害  大西秀典
D 胸腺低形成  若松 学,村松秀城
E 免疫不全を伴う無汗性外胚葉形成異常症  高田英俊
F 高IgE症候群  峯岸克行

第3章 抗体産生不全症
A X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)  谷田けい,金兼弘和
B 分類不能型免疫不全症(CVID)  金兼弘和,今井耕輔
C 高IgM症候群(免疫グロブリンクラススイッチ異常症)  森谷邦彦,今井耕輔
D 活性化PI3Kd症候群  關中佳奈子
E IKAROS異常症  山下 基
F NFKB1欠損症  井上健斗,金兼弘和
G NFKB2欠損症  笹原洋二

第4章 免疫調節障害
A チェディアック・東(Chédiak-Higashi)症候群(CHS)  宮澤英恵,和田泰三
B X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)  星野顕宏,金兼弘和
C 自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)  松田裕介,和田泰三
D 家族性血球貪食性リンパ組織球症  八角高裕
E IPEX症候群  木下恵志郎,石村匡崇
F CTLA4ハプロ不全症/LRBA欠損症  仁平寛士,八角高裕
G 腸炎を伴う免疫不全症  笹原洋二

第5章 原発性食細胞機能不全および欠損症 
A 重症先天性好中球減少症(SCN)  溝口洋子,岡田 賢
B 慢性肉芽腫症(CGD)  小野寺雅史
C GATA2欠損症  西小森隆太,満尾美穂

第6章 自然免疫異常
A IRAK4/MyD88欠損症  高田英俊
B メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD)  野間康輔,岡田 賢
C 慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCD)  浅野孝基,岡田 賢

第7章 補体欠損症
A 先天性補体欠損症  辻本 弘,井上德光
B 遺伝性血管性浮腫  日浦惇貴,堀内孝彦

Ⅲ 補 遺
補 遺 移行期ガイドライン
  高IgE症候群  河野正憲,藤尾圭志
  X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)  佐々木広和,保田晋助
  分類不能型免疫不全症(CVID)  佐々木広和,保田晋助
  慢性肉芽腫症(CGD)  河野正憲,藤尾圭志

索 引

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序文

改訂第2版 序文

 平成29(2017)年4月に,日本免疫不全症研究会編集の『原発性免疫不全症候群診療の手引き』が発刊されてからすでに6年が経過しました.この間の原発性免疫不全症候群領域の研究,診療における進歩は目覚ましいものがありました.
 国際免疫学会連合(International Union of Immunological Societies:IUIS)の免疫不全症専門家委員会でもここ数年は毎年,今までの疾患の見直し,新しい疾患の組み入れの議論を行っており,現在までに500近くの疾患が同定されるに至りました.原発性免疫不全症候群との診療状況も変わってきており,より適切な情報を提供するために,改訂を行うこととなりました.
 現在,厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「原発性免疫不全症候群の診療ガイドライン改訂,診療提供体制・移行期医療体制構築,データベースの確立に関する研究」の支援を受けて,同班(以後,原発性免疫不全症研究班)では,経時的に診療ガイドラインの見直し,改訂にあたっています.今回はそれを噛み砕いた形で,第一線で診療に当たる一般医の皆さん,研修医の皆さんなどを対象として,『原発性免疫不全症候群診療の手引き 改訂第2版』を発刊することといたしました.
 すべてを網羅することはできませんので,ここでは日常で遭遇することのある代表的な疾患,見逃してはいけない疾患を中心に,提示しています.エキスパートの先生方がどのような診断・治療をしているか,臨床経験を盛り込みながら紹介することで,日常診療において気をつけるべき点や,専門医に紹介するまでに必要な検査や対応方法などを網羅した,臨床的・実践的な書籍となるようにしております.
 また今回,診療において大切な移行期ガイドラインも掲載させていただいています.皆さんのお役に立てる書籍となることを祈っております.

 2023年9月
 日本免疫不全・自己炎症学会
 理事長 森尾友宏


初版 序文

 原発性免疫不全症候群は稀ではあるが見逃してはならない疾患である.適切な診断,適切な治療により,予後が改善されるからである.しかし日本には診断されていない患者が多数いると考えられる.例えば,欧米で行われている原発性免疫不全症の新生児スクリーニングの結果から,重症複合免疫不全症の発症頻度は,これまで20万人に1人から5万人に1人と,より高いことがわかってきた.逆にいうと,これまで見逃し症例が多く存在したことを示している.すなわち重症複合免疫不全症と診断されないまま,死亡した患者がいると思われる.
 こうした見逃し例を減らすためには,原発性免疫不全症候群の徴候を知っておく必要がある.原発性免疫不全症候群では,まず易感染性が疑うべき徴候である.例えば,中耳炎や肺炎を繰り返す,水痘が重症化する,肺炎球菌ワクチンを接種していても重症の肺炎球菌感染を起こす,感染症への抗菌薬,抗ウイルス薬,抗真菌薬への反応性が不良である,EBウイルス持続感染を起こした,ニューモシスチス肺炎を起こした,BCGの播種性感染症を起こしたなどの患者を診療したときは疑わなくてはならない.一方,免疫調節障害などでは,血球貪食症候群や自己免疫疾患を起こす.悪性腫瘍を合併しやすい原発性免疫不全症候群もある.このように易感染性が多くの原発性免疫不全症の主要徴候であるが,自己免疫疾患,悪性腫瘍も起こしうるため,診断にあたり注意が必要である.また,原発性免疫不全症候群には300程度の多岐にわたる疾患があるため,診断には専門医のアドバイスが必要である.本書では,各疾患の症状,身体所見,検査所見など,本症を疑い診断するために必要な知識を専門医が解説している.
 治療としては,免疫グロブリン定期補充療法,G-CSF定期投与,IFN-c投与,感染症に対する予防的抗微生物薬(抗菌薬,抗ウイルス薬,抗真菌薬など)投与,造血細胞移植,遺伝子治療などがあり,診断後速やかに開始する必要がある疾患もある.また,感染症発症時は通常とは異なる抗微生物薬の投与法も考えなければならない.易感染性以外に免疫調節障害を起こすこともあり,ステロイドやシクロスポリンAなどの免疫抑制薬を投与する場合もある.
 原発性免疫不全症候群を疑った場合は,速やかに専門医に相談し確定診断と治療を進めるべきである.例えば,重症複合免疫不全症は可及的速やかに診断し,治療を開始する必要がある.未治療では2歳までにほぼ100%死亡するが,早期診断すれば造血細胞移植により90%以上の治癒が見込まれるようになってきた.X連鎖無ガンマグロブリン血症は,早期診断と免疫グロブリン定期補充による治療により予後が劇的に改善したが,免疫グロブリン定期補充療法が適切になされないために肺炎などの感染を繰り返し,慢性肺疾患などの臓器障害を起こしている症例がある.X連鎖高IgM症候群は,長期予後が不良で20歳で生存率が25%という報告がある一方,5歳までに造血細胞移植を行うことで100%の無病生存が得られるという報告もある.これらのことから,いかに早期診断,適切な治療が重要であるかがわかる.専門医への相談体制はPIDJ(原発性免疫不全症データベース)で確立しているが,本書にはPIDJの利用法の解説も記載されている.また,治療法の解説がなされていて,例えば専門医への相談後,かかりつけ医が診療し治療する場合も,本書を活用できる.
 本書では,国際免疫学会による分類(IUIS分類)に記載された多数の原発性免疫不全症から,代表的かつ頻度の高い疾患を選び,診療の手引きとして解説した.厚生労働省原発性免疫不全症候群の診断基準・重症度分類および診療ガイドラインの確立に関する研究班分担研究者の各分野の専門医による解説であり,Expert opinionといえる.専門医の先生方が経験した症例の紹介も含まれ,実用的な内容となっている.ぜひ専門外の先生方も,原発性免疫不全症を疑った場合や診療する際に本書を活用していただきたい.

 2017年4月
 日本免疫不全症研究会代表幹事
 野々山恵章