初学者や若手臨床家向けに,初期スクリーニングと診断の基礎力を養うために2016年に刊行された書籍の第2版.診断が難しい障害の注目症状や評価項目の解説を比較方式で追加し,実習用スライドも導入.見出しデザインと内容の再構成でわかりやすさが向上しました.『小児編』と併せて幅広い年代に対応.養成校の講義のみならず臨床の現場で役立つ一冊です.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
改訂第2版 序
監修のことば
言語聴覚障害診断学への思い
第1章 言語聴覚障害診断とは
●1.評価とは
●2.発症経過ごとの評価の目的
急性期
回復期
維持期
第2章 コミュニケーション訓練までの臨床的な流れ
●1.評価
情報収集
面接・スクリーニング
検査
●2.訓練
訓練の流れ
第3章 対象者観察の方法
(初回面接・スクリーニングを中心に)
●1.対象者の観察
対象者の初回面接、スクリーニングのポイント
対象者の初回面接、スクリーニングの実践
対象者の初回面接・スクリーニング検査の問題点
●2.面接の項目と技法
一般的な面接態度の基本
一般的に面接の質問で気をつけること
家族、対象者からの質問の対応方法
第4章 対象者の検査
●1.言語検査
総合(的)検査
(1)標準失語症検査(SLTA)
(2)WAB失語症検査日本語版
(3)老研版失語症鑑別診断検査
掘り下げ検査
(1)SALA失語症検査
(2)失語症構文検査
(3)失語症語彙検査
(4)トークン検査
(5)標準失語症検査補助テスト
(6)重度失語症検査
(7)実用コミュニケーション能力検査
●2.知能検査
(1)日本版WAIS-R成人知能検査
(2)コース立方体組み合わせ検査
(3)レーヴン色彩マトリックス検査
●3.その他の検査
失認の検査
(1)標準高次視知覚検査
(2)BIT行動性無視検査日本版
(3)線分二等分線検査
(4)線分抹消検査
(5)花模写検査
失行の検査
(1)標準動作性検査
記憶の検査
(1)日本版ウェクスラー記憶検査
(2)リバミード行動記憶検査
(3)三宅式記銘力検査
(4)ベントン視覚記銘検査
第5章 対象者の記録
●1.観察レポートの書き方
記録時の基本的重要ポイント
(1)逸話記録
(2)頻度
(3)時間
(4)行動の評定
第6章 対象者の報告書
●1.臨床場面
言語障害初期報告書例
他施設への依頼状例
他施設への紹介状例
●2.実習面
観察レポート例
症例報告書(ケースレポート)の書き方
臨床実習報告書例
(1)失語症
(2)運動性構音障害
(3)摂食嚥下障害
臨床実習報告スライド例(養成校報告用)
(1)失語症
(2)運動性構音障害
(3)摂食嚥下障害
症例報告用スライド例(学会・勉強会報告用)
(1)失語症訓練(その1)
(2)摂食嚥下障害対応
(3)失語症訓練(その2)
実習日誌例
付録1 言語聴覚士医学用語(医学用語の成り立ち)
付録2 スクリーニング用紙
参考文献
索引
監修者・著者プロフィール
ページの先頭へ戻る
序文
言語聴覚障害診断学を執筆してから5年が経過しました.おかげさまで,多くの養成校で利用していただいていると聞き及んでいます.言語聴覚士の養成課程を取り巻く教育環境は養成校もかなり増え,多くの教科書が出版され,我々の時代とは大きく変わりました.評価や訓練に関する新しい考えやその方法,しいては学生の実習スタイルなど……日進月歩で様々な情報が教育現場にももたらされています.その中で我々も学生も常に新しい情報を学び,技術を習得し,日々変化する医療福祉の現場に対応できるように学び続けておかねばなりません.しかしながら,そこには新しい知識や技術の学びや習得のみならず,従来から変化していない本質的な考えや技術の学び習得も同様に必要であることは言うまでもありません.
この著はその点を踏まえ,言語聴覚士の言語病理学的診断をくだすという行為に対して,今まで私が都筑澄夫先生より指導を受けた本質的な考えと技術を習得してもらいたいという思いで執筆しました.しかしながら,5年経過したことにより徐々に,あの内容を加えればよかった,ここは別の表現がわかりやすかったかも……など,見直したいという思いも強くなってきました.今回,その思いを編集長である大寺さんに相談したところ快く内容改訂に応じていただきました.本当に心より感謝いたします.
さて,今回,改訂版を執筆するにあたり改変した内容を紹介したいと思います.
・診断が難しい障害の,注目すべき症状の解説を比較方式で加えた
・診断が難しい障害での診断の際,どの評価項目に注意すべきかを加えた
・実習生の実習報告会で参考にできるようなスライドを加えた
・見出し項目をデザイン化して,わかりやすくした
・内容の順番の入れ替え等を行い,よりわかりやすい流れにした
以上です.今回の改訂により,以前にもまして症状を分析するうえで,症状のどのような点に着目すればよいのか,診断をくだす場合,どの評価項目に着目し意識して観察すればよいかがわかりやすくなったのではと思います.また表題も~成人編~とし,以前に出版された井﨑先生の~小児編~と並べることで言語聴覚障害診断の対象とする年代が,すべて網羅していることが理解していただけるような表題に変更しました.今後も,これまで同様に,いやこれまで以上の速さで医療福祉分野の変化は続くと思います.その中で私も言語聴覚士にとって言語聴覚障害診断の本質とは……を常に意識しながら日々過ごしていきたいと考えています.
令和2年12月
熊本保健科学大学 大塚 裕一