産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2023年 Vol.90 No.7 2023-06-16
ここまで進んだ産婦人科領域の検査法
定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 宮城悦子
Ⅰ.周産期・生殖内分泌
1.胎児付属器の機能評価の進歩 / 古谷菜摘・他
2.不妊症の検査―AMHの意義を含めて― / 三井田美樹・他
3.母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT) / 関沢明彦
4.着床前遺伝学的検査 / 榊原秀也
5.周産期感染症の検査の進歩 / 真川祥一・他
6.妊婦の糖代謝異常の評価 / 増山 寿・他
7.妊娠高血圧症候群の予測と重症度の評価 / 小出馨子
Ⅱ.女性医学
8.閉経後骨粗鬆症の新しい画像評価法 / 北島百合子
9.骨粗鬆症における血中25—ヒドロキシビタミンD測定の意義 / 粒来 拓
10.女性のヘルスケア向上のための感染症スクリーニング検査 / 野口靖之・他
Ⅲ.腫 瘍
11.婦人科がんにおけるリキッドバイオプシーの意義 / 吉村明彦・他
12.卵巣腫瘍のMRI診断 / 山下詠子
13.進行婦人科がん治療における相同組換え修復異常検査(HRD),MSI検査,遺伝子変異量(TMB)測定の意義 / 千代田達幸・他
14.HPV検査の特色―検診への導入を視野に― / 髙﨑和樹・他
15.卵巣がん新規腫瘍マーカーTFPI2の開発と臨床応用 / 小河原由貴・他
連 載
弁護士が答えます!法律にまつわるあれこれ
カルテ開示をしていい場合・してはいけない場合 / 水上裕嗣
専門医・認定医をとろう!私の体験記 第4回 漢方専門医(日本東洋医学会) / 鈴木京子
総 説
秋田県内へのプレコンセプションケア周知に向けた活動 / 藤嶋明子・他
近年,先制医療という言葉をたびたび耳にするようになりました.先制医療とは,スクリーニング検査や画像検査,遺伝子検査などにより,将来かかる可能性の高い疾患について発症する前に予測し,あらかじめ介入をするという予防医療のことをいいます.先制医療が進めば,高齢社会に伴い膨れ上がる医療費や介護費を抑えることができ,健康寿命の延長にも寄与するものと期待されています.英語ではpreemptive medicineと称し,バラク・オバマ元大統領の演説で有名になったprecision medicine(日本語では高精度医療)より,さらに踏み込んだprecision medicineを活用してpreemptive medicineを行うことで,科学の進歩が真に患者へ恩恵をもたらす時代になったといえるでしょう.
そのような時代背景のなかで,周産期・生殖内分泌,女性医学,婦人科腫瘍の領域にまたがり,先制医療につながるような検査の話題を本特集でピックアップいたしました.周産期領域の重要疾患の最近の診断モダリティ・着床前診断・画像診断・婦人科腫瘍のバイオマーカーや遺伝子ゲノム検査・骨粗鬆症の診断に至るまで,話題は多岐にわたっています.なかには,まだまだこれから発展の余地がおおいにあるものや,ある程度の実績があり,ガイドラインや取扱い規約のなかで取り上げられている検査の話題などがあり,知識の整理にも役立つ内容が満載となっていると思います.また,特集の最後には,日本で生まれた質量分析の技術を用いた長期の研究によって開発され,2021年に保険収載された卵巣がんの新規腫瘍マーカーTFPI2の解説も加えました.
過去から学び,現在から未来につながるテクノロジーの進化によってもたらされた産婦人科領域のホットな話題に触れ,これからの医療について思いを馳せるとともに,診療に役立てていただければ幸いです.
(横浜市立大学医学部産婦人科学教室 宮城悦子)