産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2023年 Vol.90 No.9 2023-08-18
ウィメンズヘルスと栄養素・サプリメント
定価:3,190円(本体価格2,900円+税)
企画 寺内公一
Ⅰ.生殖医学
1 .メラトニン / 田村博史
2 .ビタミンD / 黒田恵司
Ⅱ.更年期障害
3 .ビタミンB6 / 尾臺珠美・他
4 .クロロゲン酸類の健康機能―血管,自律神経を中心に― / 江野口祐佳・他
5 .カカオポリフェノール / 村上里香・他
6 .イソフラボン / 廣瀬明日香
7 .S—エクオール / 内山成人
8 .更年期からのヘルスケアとしてのブタプラセンタの役割 / 小池浩司・他
9 .女性ヘルスケアにおけるローヤルゼリーの効用 / 松下 宏・他
Ⅲ.アンチエイジング
10.ビタミンE / 寺内公一
11.レスベラトロール / 平池 修
12.プロアントシアニジン / 和泉 亨
13.カシスポリフェノール / 松本 均・他
14.アスタキサンチン / 菊地恵観子・他
15.コラーゲンペプチドの健康寿命延伸における役割―抗動脈硬化作用について― / 伊賀瀬道也
16.DHEA / 満岡孝雄
連 載
弁護士が答えます!法律にまつわるあれこれ
薬剤の適応外使用について法的にはどのように考えられているの? / 山田隆史
専門医・認定医をとろう!私の体験記 第5回
インストラクター[J—CIMELS(日本母体救命システム普及協議会)] / 島岡享生
症 例
臨床経過より骨盤内放線菌症と考えられた1例 / 森内航生・他
「医食同源」―あまりにも人口に膾炙したこの言葉は,いったいどこに語源を求めればよいのであろうか? 中国古典のいずれかであろうと考えてインターネット検索を行うとさにあらず,実は1972年にNHKの料理番組「きょうの料理」の特集「40歳からの食事」のなかで,臨床医である新居裕久先生が発表したもので,中国に古くから伝わる薬膳用語「食薬同源」を,「薬」が化学薬品と誤解されることを避けるために,改変・拡大解釈したものであるという.新居裕久先生のことを失礼ながらくわしくは存じ上げないのであるが,素晴らしい「発明」だと思う.
振り返ってみると,医学部の卒前・卒後教育のなかで体系的に十分な栄養学教育を受けたことは,残念ながら記憶にない.私が不真面目だったせいなのかもしれないが,少なくとも私たちの学生時代に独立した栄養学のコースを設けていた大学は少なかったように思う.今でも生理学や生化学,消化器内科学や内分泌代謝内科学の講義で得た断片的な知識を基に日々の診療をこなしている医師が大半なのではなかろうか.産婦人科医としての臨床研修においても,妊娠・分娩・産褥期や周術期の基本的マネジメントを身につければ概ね用が足りてきたように思う.
その一方で,女性医学あるいは女性医療の領域に足を踏み入れるようになると,「食餌」,食餌に含まれる「栄養素」,栄養素を補助的に摂取するための「サプリメント」等に関する素養が不可欠であることに気がつくようになる(ちなみに「食事」はmeal,「食餌」はdietであり,このような文脈では「食餌」を使うべきであるというのが筆者の立場である).それは,この領域が本質的に治療医学的であるよりも予防医学的であり,予防医学において「食」は「薬」と同等に,あるいはそれ以上に重要だからである.2015年に導入された「機能性表示食品制度(消費者庁)」はさらにこの分野における基礎知識のアップデートをわれわれに要請している.そのような問題意識から,本号の特集を「ウィメンズヘルスと栄養素・サプリメント」とさせていただいた.
生殖可能年齢女性における卵巣機能に対する作用,エビデンスが厚めに存在し臨床的にも使用頻度の高い更年期障害に対する作用,そしてウィメンズヘルスを含みかつこれを超える幅広い領域におけるアンチエイジング作用等について,多くの研究成果を発表され臨床的な経験を豊富に積んでおられる先生方を中心に執筆をお願いした.日々ご多忙な産婦人科の先生方に,「医食同源(+サプリメント)」の世界にしばし身を委ねていただければ幸いである.
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座 寺内公一)