小児科診療
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2021年 Vol.84 No.11 2021-10-12
小児遺伝子疾患事典
定価:8,250円(本体価格7,500円+税)
序 文 /山岸敬幸・三牧正和・古庄知己
Ⅰ.先天異常症候群
ANOS1 (KAL1)(関連疾患:Kallmann症候群 関連遺伝子:FGFR1,PROKR2,CHD7) /佐藤直子
ARID1B(関連疾患:Coffin-Siris症候群,Nicolaides-Baraiter症候群) /三宅紀子
ATRX(関連疾患:ATR-X症候群) /和田敬仁
CDC42(関連疾患:武内・小崎症候群) /武内俊樹
CHD7(関連疾患:CHARGE症候群) /奥野博庸
CHST14(関連疾患:Ehlers-Danlos症候群) /古庄知己
COL4A5(関連疾患:Alport症候群 関連遺伝子:COL4A3,COL4A4) /野津寛大・他
CREBBP(関連疾患:Rubinstein-Taybi症候群) /高木 豪
EDA(関連疾患:低汗性外胚葉形成不全症) /中野 創
EYA1(関連疾患:鰓耳腎症候群) /森貞直哉
IKBKG(関連疾患:色素失調症) /河合美紀・他
LMNA(関連疾患:Hutchinson-Gliford症候群) /川野奈々江・他
MLL2(KMT2D)(関連疾患:Kabuki症候群 関連遺伝子:KDM6A) /村上博明
NIPBL(関連疾患:Cornelia de Lange症候群) /奥野博庸
PIK3CA(関連疾患:Klippel-Trenaunay症候群) /野澤明史・他
PTPN11(関連疾患:Noonan症候群) /新堀哲也
ZEB2(関連疾患:Mowat-Wilson症候群) /山田憲一郎・他
Ⅱ.神経・筋疾患
CASK(関連疾患:小脳脳幹部低形成を伴う小頭症など) /林 深・他
DMD(関連疾患:Duchenne型・Becker型筋ジストロフィー) /竹下絵里・他
DMPK(関連疾患:筋強直性ジストロフィー) /石山昭彦
FKTN(関連疾患:福山型筋ジストロフィー) /池田真理子
GCH1(関連疾患:瀬川病) /上東雅子・他
MECP2(関連疾患:Rett症候群) /伊藤雅之
NF1(関連疾患:神経線維腫症1型) /松尾宗明
PMP22(関連疾患:Charcot-Marie-Tooth病) /藤井克則
TSC1(関連疾患:結節性硬化症 関連遺伝子:TSC2) /新井田 要
SCN1A(関連疾患:Dravet症候群) /石井敦士
SMN1(関連疾患:脊髄性筋萎縮症) /佐藤孝俊・他
UBE3A(関連疾患:Angelman症候群) /齋藤伸治
WDR45(関連疾患:SENDA/BPAN) /月田貴和子・他
Ⅲ.代謝疾患
ABCD1(関連疾患:副腎白質ジストロフィー) /下澤伸行
ATP7A(関連疾患:Menkes病,occipital horn症候群) /児玉浩子・他
ATP7B(関連疾患:Wilson病) /清水教一
DDC(関連疾患:芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素〈AADC〉欠損症) /小島華林
GAA(関連疾患:Pompe病) /福田冬季子
GBA(関連疾患:Gaucher病) /酒井規夫
GLA(関連疾患:Fabry病) /澤田貴彰・他
HPRT1(関連疾患:Lesch-Nyhan症候群) /星野廣樹
IDS(関連疾患:ムコ多糖症Ⅱ型) /小須賀基通
IDUA(関連疾患:ムコ多糖症Ⅰ型,Hurler症候群,Scheie症候群) /小林博司
LDLR(関連疾患:家族性高コレステロール血症) /斯波真理子
MMUT(関連疾患:メチルマロン酸血症) /伊藤哲哉・他
MTTL1 (関連疾患:MELAS) /森 雅人
NPC1(関連疾患:Niemann-Pick病C型) /武内俊樹
OTC(関連疾患:オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症) /酒井規夫
PAH(関連疾患:フェニルケトン尿症) /石毛美夏
PDHA1(関連疾患:ピルビン酸脱水素酵素複合体欠損症) /内野俊平
RYR1,CACNA1S(関連疾患:悪性高熱症) /向田圭子
SLC22A5(OCTN2)(関連疾患:全身性カルニチン欠損症) /人見敏明・他
SLC2A1(関連疾患:グルコーストランスポーター1欠損症) /青天目 信
SLC6A8(関連疾患:クレアチントランスポーター欠損症) /髙野享子
TPP1(関連疾患:神経セロイドリポフスチン症2型) /衞藤 薫
Ⅳ.循環器疾患
ACTA2(関連疾患:家族性胸部大動脈瘤・解離) /大木寛生
ACTC1(関連疾患:心筋疾患,拡張型心筋症など 関連遺伝子:LMNA,PRKAG2,GLA) /廣野恵一
BMPR2(関連疾患:遺伝性肺高血圧症) /永井礼子
ELN(関連疾患:家族性大動脈弁上狭窄,Williams症候群) /上砂光裕
FBN1(関連疾患:Marfan症候群) /前田 潤
GATA6(関連疾患:総動脈幹異常症,膵無形成) /古道一樹
KCNQ1(関連疾患:QT延長症候群/Brugada症候群 関連遺伝子:KCNH2,SCN5A) /加藤愛章・他
MYH7(関連疾患:心筋症) /石田秀和
NKX2.5(関連疾患:心房中隔欠損症・その他の先天性心疾患 関連遺伝子:GATA4) /内田敬子
PKP2(関連疾患:不整脈原性右室心筋症) /武田充人
RYR2(関連疾患:カテコラミン誘発性多形性心室頻拍) /住友直方
TGFBR1 (関連疾患:Loyes-Dietz症候群 関連遺伝子:TGFBR2,SMAD3) /森崎裕子
TBX1(関連疾患:22q11.2欠失症候群) /山岸敬幸
ZIC3(関連疾患:内臓錯位症候群) /白石 公
Ⅴ.腫瘍性疾患
APC(関連疾患:家族性大腸腺腫症) /母里淑子・他
BRCA1(関連疾患:遺伝性乳がん卵巣がん症候群〈HBOC〉) /本吉 愛・他
MEN1(関連疾患:多発性内分泌腫瘍症1型) /櫻井晃洋
MLH1(関連疾患:Lynch症候群 関連遺伝子:PMS2,MSH2,MSH6,EPCAM) /伊藤徹哉・他
PTEN(関連疾患:PTEN過誤腫症候群) /滝田順子
RB1(関連疾患:網膜芽細胞腫) /鈴木茂伸
RET(関連疾患:多発性内分泌腫瘍症2型) /今井常夫
SDHD(関連疾患:遺伝性パラガングリオーマ,褐色細胞腫症候群) /杜 徳尚
SMAD4(関連疾患:若年性ポリポーシス 関連遺伝子:BMPR1A,STK11) /川崎啓祐・他
TP53(関連疾患:Li-Fraumeni症候群) /山崎文登・他
VHL(関連疾患:von Hippel-Lindau病) /濱田 晋・他
WT1(関連疾患:WT1関連Wilms腫瘍) /大喜多 肇
Ⅵ.免疫疾患
IL2RG(関連疾患:X連鎖重症複合免疫不全症) /今井耕輔
MEFV(関連疾患:家族性地中海熱) /谷内江昭宏
NLRP3(関連疾患:クリオピリン関連周期熱症候群) /宮本尚幸・他
SAMD9(関連疾患:MIRAGE症候群) /中尾佳奈子・他
TNFAIP3(関連疾患:A20ハプロ不全症) /門脇朋範・他
Ⅶ.骨系統疾患
BHLHA9(関連疾患:裂手裂足症) /矢本香織・他
COL1A1・COL1A2(関連疾患:骨形成不全症) /武田良淳
COL2A1(関連疾患:2型コラーゲン異常症) /澤井英明
EXT1(関連疾患:遺伝性多発性外骨腫症) /松本 和
FGFR3(関連疾患:軟骨無形成症) /大薗恵一
PHEX(関連疾患:X染色体顕性(優性)低リン血症性くる病) /窪田拓生
SHOX(関連疾患:Turner症候群) /深見真紀
TGFB1(関連疾患:Camurati-Engelmann病) /木下 晃
ALPL(関連疾患:低ホスファターゼ症) /渡邉 淳
掲載遺伝子参照リスト
山岸敬幸 /慶應義塾大学医学部小児科
三牧正和 /帝京大学医学部小児科
古庄知己 /信州大学医学部遺伝医学教室
近年のゲノム解析技術の進歩は目覚ましく,様々な疾患の原因となる遺伝子の変異が次々と解明されています.この時代の流れを受け,小児科医として知っておきたい疾患遺伝子について事典形式でまとめる特集を企画しました.従来,解説書の『見出し』は「疾患名」や「症候群名」であることが多いですが,本書では『見出し』を「遺伝子名」としてアルファベット順に掲載し,「遺伝子」から「疾患/症候群」を理解する,新たな方向性の解説書として編集したいと考えました.最近の診療では,もともと症候から診断する疾患や症候群についても,遺伝学的検査による診断が必要なケースが増加し,現状・将来に合わせて「小児の疾患/症候群事典」の一歩先に,「小児遺伝子事典」が必要な時代ではないかと思います.本書は症候からのアプローチでなく,遺伝子からのアプローチを解説し,遺伝子名をインデックスとして疾患や症候群を検索するのに役立つ新しいタイプの事典を目指しました.いくつかの遺伝子異常が同一の疾患・症候群に認められる例もあるので,代表的な遺伝子名を『見出し』として,同一疾患・症候群に関連するほかの遺伝子を同じ項目内で解説しました.『見出し』になっていない遺伝子についても,巻末のアルファベット順遺伝子名リストに収載して索引できるようにしました.誌面の都合上,すべての疾患カテゴリーについて網羅することはできませんでしたが,次世代シークエンサーを用いた網羅的全ゲノム・全エクソーム解析の小児科診療への発展および浸透をふまえ,偶発的/二次的に発見された場合に報告すべきであるとAmerican College of Medical Genetics(ACMG)により勧告されている,介入可能な重症疾患・症候群に関与する56遺伝子(24疾患)をカバーしました.加えて小児科診療に関連が深いと考えられる遺伝子を抽出し,合計92遺伝子を『見出し』として,これらの遺伝子/遺伝子異常の十分な理解を主眼としています.
遺伝学的検査は一般的な臨床検査とは異なり,結果が家族や次世代にわたり影響するため,検査精度はもちろんですが,検査前後のプロセス,すなわち検査の意義や結果の解釈をよく理解することが重要です.遺伝学的検査の実施にあたっては,「医療における遺伝的検査・診断に関するガイドライン」(2011年,日本医学会)を遵守し,「遺伝カウンセリング」を含めた総合的な臨床遺伝医療が求められます.全般的には,患者や家族に遺伝学的検査の利点と注意点について十分な説明と同意が必要で,特に小児領域では未成年に対する遺伝子診断を保護者の代諾で実施することが多い点にも配慮を要します.個々の遺伝子の検査やカウンセリングにおいて重要なポイントについては,本文中で解説していただいていますので参考にしてください.各項目をご執筆いただいた第一線の先生方には,決まったフォーマット,限られた誌面で大変ご苦労をおかけしましたが,おかげさまでこれまでにない「事典」が出来上がりました.この場をお借りして,厚く御礼申し上げます.
本書が小児科診療の新たな時代に役立つ,皆様の座右の一冊となれば幸いです.