小児科診療
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2022年 Vol.85 No.2 2022-01-12
子どもの事故(傷害)いかに防ぐか
定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /井上信明
Ⅰ.子どもの事故を予防するための取り組み
小児科医が子どもの事故予防にかかわる意義 /長村敏生
小児科医が変えた米国の事故予防の歴史と事故予防教育 /伊藤太一
Injury Alert(傷害速報)の子どもの事故予防における役割 /安 炳文
小児科外来で取り組む子どもの事故予防 /植松悟子・他
保育園・幼稚園で取り組む子どもの事故予防 /掛札逸美
子どもの事故防止に関する消費者庁・関係府省庁の取り組み /飯島孝史
地域協働で子どもが安全安心に生活できるまちを育てるセーフコミュニティ /白石陽子
Ⅱ.子どもの事故予防 指導実践
anticipatory guidance(月齢に応じた外来での予防指導)について /安田 幹
子どもの交通事故・自転車事故の予防指導 /池山由紀
子どもの転倒・転落事故の予防指導 /岸部 峻
子どもの窒息・溺水の予防指導 /大平智子
子どもの熱傷の予防指導 /竹井寛和
子どもの誤飲の予防指導 /杉中見和
Ⅲ.子どもの事故予防 最近のトピック
世界の子どもの事故予防~モンゴルの取り組みを事例に~ /市川政雄
子どもの事故を予防する 人間工学の考え方 /小松原明哲
メディアを通じた子どもの事故予防 /坂本昌彦
子どもの事故を予防する―小児科医へのメッセージ― /山中龍宏
症例報告
SLEにおけるTAC,MMF併用中の下痢と急性腎障害 /奥村美紗・他
急性腹症の鑑別診断で見つかった呼吸器感染症 /皆川 光・他
子どもの事故(傷害)いかに防ぐか
井上信明 /国立国際医療研究センター国際医療協力局人材開発部
いまだに子どもの死因の上位にある不慮の事故ですが,多くの人たちの努力の結果,年々その数は減少傾向にあります.しかし,一方で様々な新たな事故(傷害)が発生していることも事実です.
また最近は,小児科医や小児科研修医を対象にした子どもの外傷診療に関する書籍が出てきていることからもわかるように,小児科医が事故(傷害)による子どもの外傷の診療にかかわることも増えてきています.
しかし,子どもの事故(傷害)予防について,われわれ小児科医が系統的に学ぶ機会は限られていました.またどのように保護者や子どもにかかわる養育者に指導すればよいのかについても,学ぶ機会はなかったのではないかと思います.
そこで今回の企画では,子どもの事故(傷害)を取り巻く様々な取り組みをご紹介するとともに,臨床の現場でどのように保護者に予防策を指導すればよいのか,また加えて最近の子どもの事故(傷害)予防に関するトピックについて,学ぶ機会を設けました.
まず事故(傷害)予防の取り組みとして,アドボカシーや虐待予防の観点から小児科医が事故(傷害)予防に取り組む意義や日本小児科学会雑誌で長年取り組まれている傷害予防について解説し,小児科外来や保育所や幼稚園で行われている事故(傷害)予防活動,さらに行政がかかわる子どもにとっての安全な社会づくりの取り組みをご紹介しています.
次に子どもの事故(傷害)予防指導の実践として,米国の小児科外来で日常的に行われている保護者指導の内容をご紹介したうえで,交通事故・自転車事故,転落・転倒,窒息・溺水,熱傷,誤飲をテーマに,それぞれ保護者が取り組むことができる予防行動について解説いただきました.
最後の最新のトピックでは,少し広い視野で子どもの事故(傷害)予防をとらえ,諸外国,特に低中所得国における子どもの事故(傷害)予防に関する現状について話題を提供いただき,さらに子どもの特性に配慮したデザイン,またソーシャルメディアの利用という情報の受け手の特性に合わせた予防活動についてもご紹介いただきました.そして最後に,子どもの事故(傷害)予防活動の先駆者である山中龍宏先生に,小児科医のアドボカシー実践活動としての事故(傷害)予防活動について総括していただきました.
医療界だけではなく,保育や行政,また研究者など,様々な立場にある方々が,「防ぐことができる子どもの事故(傷害)をいかに防ぐか,予防行動をどう伝えるか」という1つのテーマのもと,それぞれの観点で論じてくださっています.小児科医に求められるアドボカシーを実践し,子どもによりよい環境を提供したいと考える小児科医にとって,とても魅力的な内容になったのではないかと思います.ぜひ各項目をご一読いただき,日々の診療に役立てていただき,先生がおかれている環境において,子どもの事故(傷害)予防活動にご参加いただけましたら幸いです.
最後に,本企画を立案し,子どもの事故(傷害)予防活動をさらに一歩すすめる機会を提供してくださった本誌編集委員会の皆様に心から感謝申し上げます.