小児科診療
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2022年 Vol.85 No.8 2022-07-12
小児在宅医療をすすめるために
定価:4,950円(本体価格4,500円+税)
序 文 濱田洋通
Ⅰ.小児在宅医療総論
日本の小児在宅医療の現状 /前田浩利
在宅医療に関する診療報酬 /大山昇一
医療的ケア児をめぐる法律,制度と行政の役割 /前田浩利
在宅医療を支える社会福祉制度 /水谷 亮・他
病院小児科における退院支援 /田中亜季
小児の訪問診療を始めるにあたって /戸谷 剛
小児の訪問看護 /堀口亜貴代・他
退院後に病院がかかわる支援 /中村知夫
小児の通所支援事業~現状と課題,今後の展望~ /髙橋昭彦
ショートステイ事業 /山本重則
医療と学校とのよりよい連携をすすめるために
~学校における医療的ケアの現状と方向性について~ /田添敦孝
小児在宅医療における心理面の配慮 /冨田 直
在宅での小児の看取り /大隅朋生
Ⅱ.医療介入,医療的ケアの実際
気管切開,人工呼吸管理 /竹本 潔
非侵襲的陽圧換気(NPPV)と高流量鼻カヌラ酸素療法(HFNC) /本田隆文
在宅酸素療法 /蔀 美季
呼吸理学療法 /松尾 洋
摂食嚥下リハビリテーション /大塚義顕
小児の嚥下障害に対する外科的治療 /三枝英人
誤嚥性肺炎の管理 /石井光子
胃管栄養,十二指腸栄養・空腸栄養 /曹 英樹
胃瘻・腸瘻 /中田光政・他
経腸栄養剤の種類と特徴,注意点 /田附裕子
在宅中心静脈栄養 /柴田涼平・他
自己導尿・腎瘻・膀胱瘻 /本間澄恵
排便管理 /岩井 潤・他
ストマケア /杉山正彦
体幹四肢理学療法 /吉橋 学
筋緊張管理 /田邉 良
Ⅲ.在宅での医行為の指導と管理
成長ホルモンの自己注射 /數川逸郎
1型糖尿病の自己管理 /高谷具純
血液疾患に対する在宅管理 /日野もえ子
免疫異常に対する在宅自己注射 /山出史也
エピペン®の指導と課題 /武藤順子
自己腹膜灌流 /久野正貴
小児在宅医療をすすめるために
濱田洋通 千葉大学大学院医学研究院小児病態学
新型コロナウイルス感染症の世界的流行とそれに伴う社会隔離,感染症の激減はそれまで静かに進行していた小児医療の変化を一気に顕在化させました.内科にならうように専門分化し進化してきた小児医療は,本当のニーズは何か,今,問い直されています.小児救急,集中治療を含めた各領域の専門医療はもちろん大きな柱の1つですが,その他に3つの大きな柱があると感じています.子どものこころの問題や神経発達症とその隣り合わせの家族支援・虐待予防,15歳を超えて医療を必要とする方の移行期医療,そして新生児・小児医療の進化によって救命され医療的ケアを必要とする子どもの在宅医療です.これらが今後の小児医療の大きな4本柱であり,これら領域に広く対応し他職種とのコミュニケーションやリーダーシップをとってゆくのがこれからの小児科医のプライドになるように思います.
今年の特大号では小児在宅医療を特集します.2021年6月に医療的ケア児支援法が成立しました.虐待防止法(2000年),小児慢性特定疾病と指定難病の整備(2015年),成育基本法(2018年),そして医療的ケア児支援法と,前段に論じた大きな柱のいずれにもわが国が国として子どもたちを支えてゆくという意思が明確になったと思います.この時期に改めて小児在宅医療の全体像を俯瞰し,各論を勉強することは意義があることと思い,この企画を提案しました.はじめに,総論ではわが国の小児在宅診療の現状と,社会資源の連携の実際を学びます.第Ⅱ章では医療的ケアの実際を経験豊富な医療者に記載してもらいました.第Ⅲ章は,在宅での医行為の指導と管理と題して,専門的な医療行為の在宅管理について専門医に解説してもらいました.
もちろん,小児在宅医療は小児科医だけが取り組むものではありません.在宅医療に取り組んでいる内科医や訪問看護ステーションにこの特大号を手に取っていただき,読後に小児にも十分対応できること,ハードルは高くないことを感じていただければ嬉しい限りです.本特集が,地域包括ケアを成人だけでなく小児にも広げてゆく助けになれば編集者としてこれ以上の喜びはありません.