小児科診療
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2023年 Vol.86 No.3 2023-02-10
これでよくわかる自己炎症性疾患
定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /金兼弘和
Ⅰ.自己炎症性疾患の診断
自己炎症性疾患の発見の歴史 /西小森隆太・他
自己炎症性疾患をどのように診断するか /大西秀典
Ⅱ.知っておきたい自己炎症性疾患
PFAPA症候群 /横山忠史
家族性地中海熱と類縁疾患 /八角高裕
クリオピリン関連周期熱症候群 /津村茉那・他
TNF受容体関連周期性症候群 /楠原浩一
A20ハプロ不全症 /門脇紗織・他
Aicardi-Goutieres症候群とinterferonopathy /宮本尚幸・他
Blau症候群 /松田智子・他
乳児期発症STING関連血管炎 /土居岳彦・他
アデノシンデアミナーゼ2(ADA2)欠損症 /仁平寛士・他
遺伝性自己炎症性疾患にみられるマクロファージ活性化症候群 /清水正樹
プロテアソーム関連自己炎症性症候群 /金澤伸雄
Ⅲ.自己炎症性疾患に対する治療をどうするか
自己炎症性疾患に対する分子標的薬 /西村謙一
造血細胞移植の可能性 /白木真由香・他
金兼弘和 /東京医科歯科大学小児地域成育医療学講座
自己炎症性疾患が世に知られるようになってまだ20年余りの歴史しかない.1999年に米国国立衛生研究所のKastnerらは従来家族性アイルランド熱などとよばれていた周期性発熱を呈する患者の原因遺伝子TNFRSF1を同定し,TNF受容体関連周期性症候群(TNF receptor-associated periodic syndrome:TRAPS)と提唱した際の論文のなかで“autoinflammatory”(自己炎症)と言葉を使った.ここに家族性地中海熱や高IgD症候群などとともに自己炎症性疾患という疾患概念が形成された.自己炎症性疾患とは自然免疫系の細胞やタンパクが関与する炎症を主病態とする非感染性疾患であり,単球,マクロファージ,好中球などの過剰活性化がみられる.一方,自己抗体や自己反応性T細胞は検出されず,自己免疫疾患とは区別される.臨床像は周期性発熱を特徴とすることが多い.狭義には前述したように遺伝子変異に基づくものであるが,痛風,2型糖尿病,動脈硬化,Alzheimer病なども広義に自己炎症性疾患と捉えられている.昨今の分子遺伝学的解析技術の進歩によって自己炎症性疾患にかかわる多くの遺伝子が同定されており,毎年のように新規疾患が追加されている.われわれ小児科医も多くの自己炎症性疾患あるいはその類縁疾患を診療する機会が増えていると思われる.
まずは家族性地中海熱に始まる自己炎症性疾患の発見の歴史から疾患概念の拡がりを理解し,臨床の現場において自己炎症性疾患をどのような場合に疑い,どのように診断していくかを解説してもらった.
自己炎症性疾患は現時点で50以上存在するが,世界で数例しか報告がなく,わが国で未報告の疾患も多く含まれる.そこで日常診療のなかで遭遇するかもしれない疾患として,PFAPA症候群,家族性地中海熱,クリオピリン関連周期熱症候群,TRAPS,A20ハプロ不全症,Aicardi-Goutieres症候群,Blau症候群,乳児期発症STING関連血管炎,ADA2欠損症を取り上げて,各疾患のエキスパートに解説していただいた.またリウマチ性疾患に限らず,遺伝性自己炎症性疾患に伴うマクロファージ活性化症候群と最近わが国から報告された新しい自己炎症性疾患であるプロテアソーム関連自己炎症性疾患について紹介している.
さらに自己炎症性疾患の治療は古典的にステロイドなどの免疫抑制薬を中心に行われてきたが,昨今は様々な生物学的製剤や分子標的薬が開発され,投与されるようになっており,なかには劇的効果を示す薬剤もある.また従来の治療法で治療困難な自己炎症性疾患に対しては造血細胞移植による根治療法も試みられている.昨今の治療の進歩についても解説していただいた.
本特集を読むことで自己炎症性疾患を理解していただき,まれでよくわからない疾患とあきらめずに,明日からの診療に役立ててもらえれば幸いである.