診断と治療
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2015年 Vol.103 No.9 2015-09-07
内科が使う自己注射薬

定価:本体2,500円+税
focal point――特集のねらい /鈴木 亮
◆代謝・内分泌疾患の自己注射薬
インスリン療法の現在 /野見山 崇,他
GLP-1受容体作動薬による2型糖尿病治療 /大西由希子
重症低血糖時のグルカゴン注射 /村田 敬
ヒト副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド)による骨粗鬆症治療 /竹内靖博
成人成長ホルモン分泌不全症の診断とその治療 /高野幸路
◆膠原病・アレルギーの自己注射薬
関節リウマチ治療における生物学的製剤の現在 /金子祐子,他
アナフィラキシーに対するアドレナリン自己注射 /浅海智之,他
◆神経疾患の自己注射薬
インターフェロンβによる多発性硬化症の再発予防 /中原 仁,他
片頭痛,群発頭痛に対するスマトリプタン自己注射 /工藤雅子
Parkinson病のアポモルヒネ自己注射によるレスキュー療法 /高橋一司
◆消化器疾患の自己注射薬
炎症性腸疾患に対する抗TNFα抗体療法 /穂苅量太,他
肝炎治療における在宅自己注射の位置づけ―インターフェロン少量長期投与 /八橋 弘
◆血液に作用する自己注射薬
血友病に対する凝固因子製剤自己注射 /日笠 聡,他
G-CSF製剤の在宅自己注射 /平林真介,他
血栓症予防のためのヘパリン在宅自己注射 /朝倉英策
◆連載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
多発脊椎腫瘍,直腸癌の治療中に急性腎不全を認めた53歳男性 /川人瑠衣,他
◎人気の診療科紹介
聖路加国際病院Immuno-Rheumatology Center /岡田正人
◎注目の新薬
テノゼット®(テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩) /相澤良夫
◆原著
循環器疾患を有する消化器外科術後患者の離床状況―離床阻害理由と術前併存疾患について― /吉村香映,他
内科医が薬局を通じて処方する薬はおおむね内服薬で,注射薬というと病院や診療所のベッドで横たわる患者に点滴ないし静注するものというイメージがあるかもしれない.しかし近年は,医療の高度化や長期予後の改善と軌を一にして,慢性疾患に対する注射薬の種類が一段と増えてきた.そして注射をする主体は,病院における医師や看護師から,家庭における患者自身へと徐々に,かつ着実に拡大しつつある.
1981 年に自己注射が保険適用となったインスリンを考えれば明白であるように,不足した生理活性物質の補充や半減期の短い薬剤投与を安定的に継続して行おうとする場合,在宅での管理を実現することが患者の QOL 向上と予後改善に直結する.システム成立の背景には,薬剤開発の進歩のみならず,制度実現のための関係者の多大な努力があり,現在に至っている.使用対象の裾野が広がれば注射器などのデバイスが進歩する.道具が洗練されれば,日常的に使用する薬剤に加えて,緊急時の対応に用いる薬剤も付随的に使いやすくなり,患者や家族による即時対応がより容易になることが期待できる.さらに近年の抗体医薬の進歩はめざましく,これまで難治とされた疾患の治療に新たな道を開いている.こうした新薬と並んで,従来から存在する薬剤にも,在宅自己注射によってさらにポテンシャルを発揮できるようになったものがある.
本特集では,専門的治療として扱われることの多い注射薬治療を,外来患者自身が家庭で行う「自己注射」という切り口で横断して,各分野の第一人者の先生方に,非専門の内科医に向けたわかりやすい解説をお願いした.治療の場が病院から在宅へ移行する流れにおいて,一般診療を実践する際にも,自己注射を行っているケースに遭遇する機会が今後増えてくるものと思われる.本特集によって,在宅自己注射療法に対する理解が深まり,専門医とかかりつけ医の連携がさらに深化するきっかけとなれば幸いである.
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 鈴木 亮