診断と治療
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2016年 Vol.104 No.2 2016-02-05
腸内細菌叢からみた臨床の最前線―ベール

定価:本体2,500円+税
focal point――特集のねらい /穂苅量太
◆総論
腸内細菌の形成と変化 /伊藤喜久治
◆トピックス
腸内細菌と老化 /松永佳世子
糖尿病と腸内細菌 /入江潤一郎,他
腸内細菌と肝疾患 /内山 明,他
腸内細菌と精神疾患 自閉症スペクトラム障害とそのモデル動物の腸内細菌 /渡邉邦友,他
腸内細菌と動脈硬化 /山下智也,他
腸内細菌と妊娠・出産 /塩﨑有宏,他
アレルギー,ぜんそくと腸内細菌 /大塚宜一
腸内細菌と多発性硬化症 /山村 隆
ストレスと腸内細菌 /好川謙一,他
◆臨床現場における腸内細菌
細菌感染性腸炎 /大川清孝,他
プロバイオティクスと消化管疾患 /西田淳史,他
偽膜性腸炎と糞便移植 /加藤孝征,他
Campylobacter jejuni腸炎とGuillain-Barré症候群 GBSの診断と治療の概説,CJのGBSとの関連について /荻野美恵子
◆腸内細菌の役割:最新の知見
腸内細菌と腸管免疫系との関わり /大野博司
自然免疫による腸内細菌叢の制御と共生 疾病との接点 /櫻木直也,他
腸内細菌の代謝に果たす役割 /長谷川沙恵,他
◆連載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
嘔吐、下痢を主訴に来院したうつ病の78歳女性 /戒能賢太,他
◎人気の診療科紹介
虎の門病院分院腎センターリウマチ膠原病科 /乳原善文
◎注目の新薬
ソバルディ®(ソフォスブビル) /須田剛生
腸内細菌の研究が急速に進んでいる.興味深いのは科学者にとってだけのテーマではなく,消化器内科医,内分泌内科医,神経内科医,皮膚科医,さらには一般民衆にまでこのテーマが及んでいることである.テレビをつければ腸内細菌だ,ビフィズズ菌だ,悪玉菌だと耳にするし,患者さんからも以前は食べ物の話やサプリメントの話程度だったのが,最近は腸内細菌の質問をされることは皆さんにも経験がおありになるのではないだろうか.
実は最新治療に位置付けられている糞便移植の歴史は古く,中国では4世紀の時代には食中毒治療に試されていたという記録が残っている.変わったのは何かというと,科学が飛躍的に進歩し,その一端が明らかになったのである.腸の中は太古の地中の環境に似ているといわれ,酸素分圧が極めて低い.そこで従来の方法では解析できなかった,膨大な種類,数,遺伝子数をもつ腸内細菌の働きを明らかにしつつあるのは分子生物学である.その先導をしているのは米国の研究者たちである.今回,ご紹介するテーマは最新の知見であるが,わかっているのは氷山の一角に過ぎない.おそらく数年すればもっと色々なことが解き明かされるであろう.しかし,現時点でも各領域の医師が異口同音に腸内細菌の重要性を訴えている.腸内細菌は決して一過性の流行ではなく,この働きは体の中の大切な仕組みであることに間違いないだろう.このような見地から,今回このような特集を組ませていただいた.
本号では,一般内科医の先生方を対象に,腸内細菌と内科疾患の関わりをめぐる最新の進歩を特集した.最新の知見を第一線の専門家に解説していただいた,たいへん興味溢れる内容となっており,本特集が日々の診療のために必ず役に立つことを祈念して巻頭の辞としたい.
防衛医科大学内科学(消化器)
穂苅量太