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2018年 Vol.106 No.11 2018-11-06
一般臨床医のための渡航医学講座

定価:本体2,500円+税
ねらい 濱田篤郎
◆国際化社会と渡航医学
社会の国際化と渡航医学 濱田篤郎
◆海外渡航者の診療
~外来で担当する患者が海外渡航することになったら
海外渡航者の健康問題と対策 近 利雄
海外の医療機関を紹介するには 宮城 啓
海外に薬を持参する際の注意点 櫻井眞理子
海外渡航者の感染症対策 氏家無限
海外渡航者のためのワクチン接種 菊池 均
海外の高地滞在にともなう健康問題と対策 栗田 直,他
航空機旅行にともなう健康問題と対策 飯田里菜子,他
慢性疾患のある渡航者の対策 清水靖仁
海外での妊娠,出産と不妊治療 多賀昌江,他
小児渡航者,留学生の健康問題と対策 福島慎二
◆外国人患者の診療
~外国人の患者が外来を受診したら
外国人の医療機関への受診状況 岡村世里奈
外国人診療の実際 南谷かおり
医療通訳の現状と利用方法 森田直美
外国人患者の医療費対策 山田秀臣,他
訪日外国人増加時代の感染症対策 和田耕治,他
◆渡航医学の現場から
国際医療搬送の現場からみた21世紀の“ボーダレス”地球村 葵 佳宏
トラベルクリニックと海外勤務者の健康管理 大越裕文
海外での邦人診療 菊地宏久
海外医療支援協会 五味秀穂
検疫所の役割 渡邉顕一郎,他
海外で子どもを育てるということ―英国での子育て体験― 髙山裕子
連載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
体動困難,食欲不振を主訴に救急搬送された80歳女性 大串昭彦,他
◎人気の診療科紹介
那須赤十字病院放射線科 水沼仁孝
◎注目の新薬
マヴィレット(グレカプレビル/ピブレンタスビル) 茶山一彰
◎医療裁判の現場から
心房細動カテーテルアブレーション実施前検査における左心耳内血栓の画像所見をめぐって 松村武志
一般臨床医のための渡航医学講座
社会のグローバル化にともない,日本から海外渡航する者や日本に滞在する外国人の数が増加している.法務省の出入国管理統計によれば,日本からの海外出国者数は年間1,700万人前後で,これは国民の7人に1人が,毎年,海外渡航している数になる.特に最近は,アジアなどの開発途上国に滞在する渡航者が増加しており,滞在先で体調不良を起こす者も少なくない.
また,日本に滞在する外国人の数は,ここ数年急速に増加している.日本に旅行などで入国する外国人数は,2017年に2,800万人と過去最高を記録した(出入国管理統計).日本政府は2020年までに,この数を4,000万人にすることを目標にしている.さらに,外国人労働者数も近年増加しており,この数が2017年は127万人にのぼった.今後の日本での高齢化社会を考えると,外国人労働者数はさらに増加することが予想される.こうした外国人が日本滞在中に体調を崩し,日本の医療機関を受診するケースも増加傾向にある.さらに,日本に入国する外国人が感染症を持ち込み,国内流行を起こすことも懸念されている.
こうした国際間の人の移動にともなう健康問題を扱う医療分野として,欧米諸国では渡航医学(トラベルメディスン)が広く普及しており,専門医療機関であるトラベルクリニックが各地に設置されている.さらに,一般医(General Practitioner)の間でも渡航医学は基礎的な医学知識として浸透しており,担当する患者が海外渡航するときや,外国人患者が受診した際の医療対応に活用されている.
ひるがえって日本では,最近になりトラベルクリニックの数が増加しているが,一般臨床医の間に渡航医学の知識が広まっていないのが現状である.そこで,本特集では,一般臨床医が日常診療において海外渡航者や外国人患者を診察する場面を想定し,それに対応できるような知識を提供することを目的としている.あわせて,渡航医学の専門医が行っている特殊な診療も,コラム形式で紹介する.
本特集を契機に,日本の一般臨床医の間に渡航医学の知識が普及するとともに,渡航医学への関心が高まっていくことを期待している.
東京医科大学病院渡航者医療センター
濱田篤郎