診断と治療
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2020年 Vol.108 No.2 2020-02-07
ウイルス肝炎アップデート

定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 柳元伸太郎
◆総論
ウイルス性肝炎の疫学と病態 奥新和也,他
日本肝臓学会B型肝炎治療ガイドライン 田中 篤
日本肝臓学会C型肝炎治療ガイドライン 田中 篤
◆診断
診断のための血液検査 正木尚彦
腹部超音波検査 山田 晃
肝線維化の非侵襲的評価法:エラストグラフィを中心に 伝法秀幸,他
肝疾患評価におけるCT・MRI:NAFLD・NASHを中心として 竹原康雄
◆B型・C型肝炎の治療と予防
B型肝炎の薬物治療 今関文夫
B型肝炎ウイルスの再活性化 梅村武司
B型肝炎ワクチン 四柳 宏
C型肝炎の抗ウイルス薬治療 鈴木文孝
HCV—RNA陰性化後のC型肝炎の管理 茶山一彰
「針刺し事故」の対応 松永直久
◆ウイルス性肝炎のトピックス
A型肝炎 神田達郎,他
E型肝炎 岡野 宏,他
しばしば見かける肝炎ウイルス以外のウイルス感染症による肝機能異常 岡田雄大,他
連 載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
口腔内潰瘍で紹介された70歳女性 蒸野寿紀,他
◎注目の新薬
ビレーズトリ™エアロスフィア®(ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物製剤) 藤野直也,他
臨床例
◎白髪染め使用による過敏性肺炎と考えられた1例 室井貴子,他
B型,C型肝炎ウイルスの今世紀初めのわが国におけるキャリア・慢性肝炎患者は300万人前後とみられている.肝臓癌の原因の約9割はこれらのウイルス肝炎が占めるとされ,いまだに健康上の大きな脅威となっている.1990年前後からインターフェロンを中心とした治療が試みられ,ある程度の効果を示したものの治療の成功率,副作用,適応などさまざまな問題を抱えていた.B型肝炎についてはワクチンも使えるようになり予防の手立ても確立されたが,わが国で定期接種化されたのはつい最近のことである.
2000年代初頭になってB型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス薬が使えるようになり,これまでインターフェロンが使えなかった患者にも新たな治療手段が出現した.C型肝炎については2015年から抗ウイルス薬のみでの治療が可能になり,一定期間の内服を完了することで高率にウイルス学的寛解が得られるようになった.その後,B型,C型肝炎ともいくつかの新規薬剤が処方可能となり,治療の恩恵を受ける患者の裾野は広がっている.ウイルスのキャリアの減少を受けて今後は新規の感染者の発生も減少することが期待され,将来は患者数も大幅に減ることが見込まれている.
今回の特集では,このように進化を続けてきたウイルス肝炎の治療の発展も踏まえ,特にB型,C型肝炎を中心に,病態,検査・診断,治療に関する最新の知見を各分野の専門の先生方にまとめていただいた.改めて診断や病状評価の基本となる検査,経過中発生しうる肝硬変,肝細胞癌などを見据えた画像検査など,B型,C型慢性肝炎患者の診療では欠かせない内容を網羅した.また,抗ウイルス薬による治療実績が積み上がる中で新たに見えてきた薬物療法の特徴や,治療後の管理など,ここに凝縮された情報は肝臓疾患を専門としない臨床医家のみなさまにも有用なものとなることを期待している.
加えて,日常診療でしばしば遭遇する肝機能異常で頭に入れておく必要のある,B型,C型肝炎以外の重要な疾患についても項目を設けた.患者に必要な検査,診断を検討する上で必要となる事項についてまとめられている.
診断や治療,感染予防が進歩した現在においてもなお,ウイルス肝炎はその患者数,患者のQOL,予後などの点で非常に重要な位置を占めている.ウイルス肝炎の診療をしていない診療科でもウイルス肝炎が併存疾患として患者の経過や種々の治療に影響を与えるケースも多々みられる.本特集が幅広い専門の臨床医家読者諸氏の診療の一助となることを願う.
東京大学保健・健康推進本部
柳元伸太郎