診断と治療
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2020年 Vol.108 No.8 2020-08-04
膵疾患の診断・治療の進歩

定価:2,860円(本体価格2,600円+税)
ねらい 今枝博之
◆最新のトピックス
膵炎,膵癌の成因,危険因子と予防 辻前正弘,他
膵癌の早期診断を目指して 花田敬士,他
◆膵疾患の検査
血液検査・バイオマーカー 関根匡成,他
超音波による膵疾患の診断 田中幸子,他
CT,MRI 戸島史仁,他
ERCP,EUSを用いた診断,治療 野口達矢,他
◆各疾患の診断と治療
急性膵炎の診断 真弓俊彦,他
急性膵炎の治療 小嶋啓之,他
慢性膵炎の診断 星 恒輝,他
慢性膵炎の治療 神澤輝実,他
自己免疫性膵炎の診断と治療 岡崎和一,他
膵癌の診断と治療 大川良洋,他
膵癌の手術療法 蘆田 良,他
膵癌の化学療法,放射線療法 坂本康成,他
膵囊胞性腫瘍の診断と治療 中井陽介,他
神経内分泌腫瘍の診断と治療 宮坂義浩,他
連 載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
2日前の嘔吐で近医を受診し胆囊炎疑いで紹介となった82歳,女性 岡田和弘
◎注目の新薬
コララン®錠(イバブラジン) 百村伸一
総 説
リラグルチド1.8 mgの2型糖尿病治療における有用性:海外臨床試験でのエビデンスから 加来浩平
膵癌はわが国での癌死亡数の第4位まで上昇し,5年生存率も7%と他の悪性腫瘍と比べて極めて予後が悪く,現在でもなお増加傾向にあります.いまだに早期発見が難しく,ブレークスルーとなるようなモダリティは登場しておりません.腹部超音波,CT,MRIに加えて超音波内視鏡(EUS)やERCPの有用性が報告されていますが,EUSやERCPは専門医による診療が必要となるため,スクリーニングとしての汎用性の問題や侵襲性の問題があります.バイオマーカーを用いた検出の報告もみられ,近未来での実用化が期待されております.膵囊胞性腫瘍は腹部超音波やCTで偶然に発見されることも多く,診断や治療方針,経過観察などに悩むこともあります.
一方で,急性膵炎も重症化によりいまだに死亡例がみられており,さらにはERCP後膵炎による重症膵炎,死亡例も報告されており,重要な課題となっております.慢性膵炎においても早期慢性膵炎の概念がわが国から提唱され,その段階ならば可逆性であることと,膵癌との高い関連性が指摘され,病態へのアプローチの重要性が報告されています.また,近年では新しい疾患として自己免疫性膵炎の概念がわが国から発信され確立されてきました.
ここ十数年の間に急性膵炎,慢性膵炎,自己免疫性膵炎,膵癌,膵囊胞性腫瘍,神経内分泌腫瘍に関する診療ガイドラインが各学会から作成されて改訂版を重ねることにより,診断,治療が確立されてきております.
そこで今回は膵疾患を特集させていただき,急性膵炎,慢性膵炎,自己免疫性膵炎,膵癌,膵囊胞性腫瘍,神経内分泌腫瘍に関して,成因から診断,治療,さらには今後の展望について,膵臓分野のご専門かつトップランナーの先生がたに,症例をまじえてわかりやすく解説していただきました.本特集が購読していただきます諸先生方の,明日からの日常診療の一助になりましたら幸いに存じます.
埼玉医科大学消化管内科
今枝博之