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ムコ多糖症(MPS)Ⅱ型診療ガイドライン2019診断と治療社 | 書籍詳細:ムコ多糖症(MPS)Ⅱ型診療ガイドライン2019

日本先天代謝異常学会(にほんせんてんたいしゃいじょうがっかい) 編集

初版 B5判 並製 40頁 2019年07月01日発行

ISBN9784787823922

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定価:本体2,800円+税
  

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厚労省研究班と日本先天代謝異常学会の協働によるエビデンスに基づくガイドライン.2007 年にわが国でも酵素補充療法が導入され,疾患認知度が向上し,新規診断例が増えている.一方,MPSを専門とする医師は多くなく,また地域的にも偏在している.今後は非専門医も本症の診断,治療に関わる機会が増えるであろう.難病指定医,さらには一般診療医の先生方,医療従事者の方々にお役立ていただきたい.

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目次

CONTENTS
序文
診療ガイドラインの刊行にあたって
診療ガイドラインの編集にあたって
診療ガイドラインの作成方法に関して
本ガイドラインの使用上の注意
作成組織
I  酵素補充療法(ERT)と造血幹細胞移植のメリット・デメリット(益と害)について
II 治療に関するクリニカルクエスチョン(CQ)
 CQ1       酵素補充療法(ERT)により,歩行障害は改善するか?
 CQ2       酵素補充療法(ERT)により,呼吸機能は改善するか?
 CQ3       酵素補充療法(ERT)により,生命予後は改善するか?
 CQ4-1     酵素補充療法(ERT)により,身長の伸びは改善するか?
 CQ4-2     酵素補充療法(ERT)により,関節症状は改善するか?
 CQ5-1     酵素補充療法(ERT)により,心機能は改善するか?
 CQ5-2     酵素補充療法(ERT)により,心弁膜症の改善や進行予防が可能となるか?
 CQ6       酵素補充療法(ERT)により,中枢神経症状の改善や進行予防が可能となるか?
 CQ7       造血幹細胞移植により,歩行障害は改善するか?
 CQ8       造血幹細胞移植により,呼吸障害の進行は予防できるか?
 CQ9       造血幹細胞移植により,生命予後は改善するか?
 CQ10-1  造血幹細胞移植により,身長の伸びは改善するか?
 CQ10-2  造血幹細胞移植により,関節症状は改善するか?
 CQ11-1  造血幹細胞移植により,心機能は改善するか?
 CQ11-2  造血幹細胞移植により,心弁膜症の改善や進行予防が可能となるか?
 CQ12    造血幹細胞移植により,中枢神経症状の改善や進行予防が可能となるか?
引用文献
結語
索引

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序文

序文
  この度,『ムコ多糖症(MPS)II型診療ガイドライン2019』が,厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班」と日本先天代謝異常学会の協力のもとで刊行されましたことは大変喜ばしいことです.
  ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis;MPS)II型はライソゾーム病の1つであり,日本においてはMPSのなかで最も頻度の高い疾患です.MPS II型は骨・関節症状を主症状とする疾患ですが,稀少疾患のため,一般臨床の場で早期に診断することは容易ではありません.本症は精神運動発達遅滞,骨病変,臓器症状の程度をもとに重症型,中間型,軽症型に分類され,臨床的異質性が存在しています.本症に対しては酵素補充療法(enzyme replacement therapy;ERT)と造血幹細胞移植が治療法として健康保険収載されています.したがって,各症例においてどちらの治療を選択するかを考える必要があります.そして,これら治療法の効果や限界について現在,データが集積されつつあります.
  以上のような観点からMPS II型の診断・治療に関する科学的エビデンスに基づく診療ガイドラインが必要とされたため,ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班が作成した『MPS II型診療ガイドライン2017』(非売品)を日本先天代謝異常学会診断基準・診療ガイドライン委員会による検討と,日本先天代謝異常学会理事会の審査・承認を経て,『ムコ多糖症(MPS)II型診療ガイドライン2019』として刊行し,医療従事者の方々にお届けすることができるようにいたしました.
  このガイドラインはMindsの手法によって作成されています.MPS II型は先述したように稀少疾患であり,症例数が少ないため可能なかぎりMindsの手法により作成されていますが,一部エビデンスの少ない領域においては専門家の経験に基づく意見(エキスパートオピニオン)が収載されています.しかしながら,エキスパートオピニオンは経験豊富な専門家の意見をベースに記載されていますので,実際の医療現場では有用であることを強調したいと思います.
  最後になりましたが,本ガイドラインの作成に多大なご尽力をいただきました「ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班」研究代表者の衞藤義勝先生,同研究班MPS II型診療ガイドライン作成委員会の奥山虎之委員長,日本先天代謝異常学会診断基準・診療ガイドライン委員会の大竹 明委員長,同学会事務局長の櫻井 謙先生をはじめ,ご協力いただいた多くの方々に深謝いたします.
  本ガイドラインが実地臨床の現場で役立つことを願っています.

 2019年5月吉日
日本先天代謝異常学会
理事長 井田博幸(東京慈恵会医科大学)



診療ガイドラインの刊行にあたって
  ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis;MPS)II型[ハンター症候群(Hunter syndrome)]は,ライソゾーム酵素であるイズロネート2-スルファターゼの遺伝子異常により発症するX連鎖性遺伝形式の先天代謝異常症です.精神運動発達遅滞の程度や生存期間により重症型,中間型,軽症型に分類され,発症すると成長障害,骨関節症状,心臓弁膜症,中枢神経障害などの全身症状を呈します.また,II型はMPS全体の過半数を占める病型であり,わが国における発症頻度は男児53,000人当たり1人と推測されています.
  厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班」(研究代表者 衞藤義勝)では,ライソゾーム病31疾患,ALD,ペルオキシソーム病の診療ガイドライン作成事業の一貫として,平成27年度6月の班会議において奥山虎之先生(国立成育医療研究センター)をMPS II型診療ガイドライン作成委員会の委員長に指名し,本分野の専門家12名に執筆・編集委員,システマティックレビュー(SR)委員,担当委員として加わっていただき,「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」(以下,Minds)に示された手法に基づく,わが国初のMPS II型の診療ガイドラインである『ムコ多糖症(MPS)II型診療ガイドライン2017』(非売品.当研究班ホームページにて公開中)』を約1年6か月の歳月をかけて作成しました.同ガイドラインの刊行目的は,科学的根拠に基づき,系統的な手法により作成された推奨をもとに患者と医療者を支援し,臨床現場における意思決定の判断材料の1つとして日常診療にお役立ていただくことです.MPS II型という疾患の性質上,Mindsの手法に則って診療ガイドラインを作成することは,文献数,症例数の少なさから評価,選定がむずかしいところもありましたが,可能なかぎりMinds の精神に沿うように努めました.
  今回,同ガイドラインは日本先天代謝異常学会による学会審査を経て,装いも新たに『ムコ多糖症(MPS)II型診療ガイドライン2019』として書店に並ぶことになりました.『ムコ多糖症(MPS)II型診療ガイドライン2017』から内容の変更はありませんが,より多くの先生方にMPS II型を知っていただく機会が増えたことを大変嬉しく思います.
  最後に,本ガイドラインの作成を主導していただいた当研究班MPS II診療ガイドライン作成委員会の奥山虎之委員長,学会審査における過程でご尽力いただいた日本先天代謝異常学会の井田博幸理事長,診断基準・診療ガイドライン委員会の大竹 明委員長,中村公俊副委員長,深尾敏幸副委員長,事務局長の櫻井 謙先生をはじめ,多くの皆様に感謝申し上げます.
  本ガイドラインが,難病診療に携わる難病指定医,さらには一般診療医の先生方,医療従事者の方々のお役に立つことを祈念いたします.

 2019年5月吉日
厚生労働省難治性疾患等政策研究事業
「ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班」
研究代表者 衞藤義勝(東京慈恵会医科大学)



診療ガイドラインの編集にあたって
  ムコ多糖症(mucopolysaccharidosis;MPS)II 型は,ライソゾーム酵素の1 つであるイズロネート2- スルファターゼの先天的欠損が原因で,細胞内に未分解のデルマタン硫酸とヘパラン硫酸というムコ多糖の過剰蓄積が生じ,その結果複数の臓器が同時に障害される進行性疾患である.国内の小児期に発症するライソゾーム病のなかで最も頻度が高い疾患である.
  MPS II 型の治療は,個々の症状に対応した対症療法と侵襲臓器にイズロネート2- スルファターゼを供給することを目的とした原因療法に分けられる.後者の治療法として,酵素補充療法(enzyme replacement therapy;ERT)と造血幹細胞移植がある.ERT は,製剤化したイズロネート2- スルファターゼを週1 回点滴静注する治療法である.造血幹細胞移植は,イズロネート2- スルファターゼを産生・分泌できる細胞を患者の体内に生着させ,侵襲臓器に対して恒常的にイズロネート2- スルファターゼを供給することを目的とした治療法である.
  わが国でMPS II 型に対する酵素製剤が承認され使用可能となってから10年以上が経過している.通常,多くの薬剤では欧米の承認からわが国での承認までに3 ? 5 年を要するが,MPS II 型に対する酵素製剤の場合は欧米の承認から約1 年という異例のスピードで承認された.これは,厚生労働省の未承認薬使用問題検討会議において,国内で新たな治験を行わず,欧米で実施された第III 相国際共同治験の結果に基づき承認申請をすることが製薬企業に認められたことによる.当時としては類例をみない厚生労働省の画期的な対応により早期承認が実現した.現在,ERT はMPS II 型に対する標準的な治療として世界的に用いられている.国内では現在120 名以上の患者がERT を受けていることもあり,ERT については,効果とともにその限界も次第に明確になってきている.一方,造血幹細胞移植は,わが国ではERT が承認される以前からMPS II 型の治療として定着している.しかし,世界的には造血幹細胞移植は適応外とされる国が多く,造血幹細胞移植の効果と限界については,評価に耐えうる報告が少ないのが現状である.
  以上のことをふまえ,全国の患者さんが等しくレベルの確保された医療を受けられるように『ムコ多糖症(MPS)II診療ガイドライン2017』の作成を行った.原則的にはMindsの手法に準拠しエビデンスレベルの高い報告を重視して作成したが,エビデンスレベルの高い論文が少ない造血幹細胞移植については特に移植医療の専門家に作成委員に加わっていただき,専門家の経験に基づく意見(エキスパートオピニオン)も十分に反映した.その結果,2 つの異なる治療法の効果と限界を適切に評価したわが国の医療現場に即したバランスのとれたガイドラインとなった.同ガイドラインは完成後,当研究班より全国の小児科教授などに無償配布され,また当研究班のホームページでも公開されている.しかしながら,これまで「冊子を購入したい」という声にはこたえることができなかった.今回,日本先天代謝異常学会との協働のもと,学会審査を受けたうえで『ムコ多糖症(MPS)II診療ガイドライン2019』として上梓されたことにより,より多くの医療従事者の皆様に周知されることを期待したい.
  本ガイドラインがMPS のような超稀少疾患のガイドライン作成におけるプロトタイプになることを期待する.

 2019年5月吉日
厚生労働省難治性疾患等政策研究事業
「ライソゾーム病(ファブリー病含む)に関する調査研究班」
ムコ多糖症(MPS)II 型診療ガイドライン作成委員会
委員長 奧山虎之(国立成育医療研究センター