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看護師・医療スタッフのための発達障害傾向のある子どもの診療サポートブック診断と治療社 | 書籍詳細:看護師・医療スタッフのための発達障害傾向のある子どもの診療サポートブック

筑波大学医学医療系 教授

徳田 克己(とくだ かつみ) 監修

浜松医科大学医学部看護学科 准教授

坪見 利香(つぼみ りか) 著

筑波大学医学医療系 准教授

水野 智美(みずの ともみ) 著

初版 B5判 並製 120頁 2020年12月25日発行

ISBN9784787824967

定価:本体2,800円+税
  

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病院でパニックを起こす子どもには,それなりの理由がありますが,医療の現場ではその子どもたちへの適切な対応方法が知られておらず,子どもや保護者にとって苦しい状況が続き,医師や看護師,医療スタッフも困惑し疲弊しています.本書は小児科だけでなく,すべての診療科の看護師・医療スタッフにむけて,大勢で押さえつけるその場しのぎの方法ではなく,子どもたちの特性を理解し,少しの工夫でスムーズに診療ができる技術を具体的に解説.

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目次

はじめに

第1章 発達障害傾向のある子どもとは
① 診療場面でよくみる「発達障害傾向のある子ども」
 1) 待合室や診察室でじっとしていることができないケース
 2) 診察や処置をするときに大声で泣いて暴れるケース
 3) 成長するにしたがって診療できなくなったケース
 4) 保護者が “育てにくさ” を感じているケース

② 「発達障害傾向のある子ども」の主な特性
 1) 自閉症スペクトラム障害
 2) 注意欠如・多動性障害
 3) 知的障害
 4) 学習障害

③ 実際はいろいろな特性が重なり合っています
 1) Aくんの特性
 2) Bちゃんの特性
 3) Cさんの特性
 4) Dくんの特性

第2章 医療スタッフが知っておくべきサポートの心構え
① 子どもの「とまどい」を減らし,わかったを実感できるかかわり
 1) 診療場面における子どものとまどい
 2) 保護者の気づきや困り感
 3) 発達障害と診断されているかどうか

②診察や処置が受けやすくなるための言葉かけや工夫
 1) 子どもが理解しやすい言葉とは
 2) 一般的な小児科診療場面における基本テクニック

③ 診察や処置が終わったら
 1) 服薬
 2) 次回の診察への工夫

第3章 子どもが安心できる診療環境を整える
① 診療前の環境について見直してみましょう
 1) 駐車場
 2) 待合室
 3) トイレ

② 診察室・処置室の環境を見直してみましょう

第4章 明日からできる具体的な診療サポート
① 一般的な小児科診療
 1) 口の中を診察する
 2) 首周りの診察
 3) 胸や背中の聴診
 4) 鼻腔や咽頭粘膜のぬぐい液採取(減菌綿棒 〈スワブ〉 を用いた感染症の検査キット)
 5) 採尿
 6) 血圧を測る
 7) 注射・採血・輸液などの針を刺す行為
 8) X線検査
 9) 心電図検査
 10) CT・MRI検査

② 耳鼻咽喉科
 1) 耳鼻咽喉科の診療上の特徴と子どもがとまどうこと
 2) とまどいを減らすための工夫

③ 眼科
 1) 眼科の診療上の特徴と子どもがとまどうこと
 2) とまどいを減らすための工夫

④ 外科・整形外科
 1) 外科・整形外科の診療上の特徴と子どもがとまどうこと
 2) とまどいを減らすための工夫

⑤ 歯科・口腔外科
 1) 歯科・口腔外科の診療上の特徴と子どもがとまどうこと
 2) とまどいを減らすための工夫

⑥ うまく対応できなくても,次の診療サポートに役立つヒントがある
 1) 子どもが大暴れしたら(パニックを起こしたら)
 2) 子どもの体験を振り返り,要因を探る
 3) 次回の診療について保護者・医療者間で相談する
 4) それでもうまく対応できなかったら

第5章 保護者への対応
① 子どもを病院へ連れてきた保護者の気持ちを考えましょう
 1) 他の病院で診療を断られた経験がある
 2) 子どもの行動を注意されたことがある
 3) 子どもとのかかわり方がわからない

② 保護者の態度や様子を把握したうえで対応しましょう
 1) 子どもの状況を保護者がどこまで把握しているのかを理解する
 2) 保護者が医療者に何を求めているのかを把握する
 3) 子どもと同様に保護者にもこまめに声をかける
 4) 保護者に子どもの診療内容をわかりやすく伝える

③ 保護者が子どもとのかかわり方がわからない場合もあります
 1) 子どもの反応を共有して保護者の受け止め方を確認する
 2) 子どもの 「できた」 を認め,保護者に伝える
 3) 子どもが受ける診療・処置のお手本を示してもらう
 4) 子どもと同じ発達障害傾向のある保護者への対応

第6章 まわりの患者さんや保護者, 医療スタッフへの対応
① 具体的な対応について考えてみましょう
 1) 待合室での配慮
 2) 医師との連携
 3) 受付スタッフや他の医療スタッフとの連携

② 入院する場合の対応について考えましょう
 1) 子どもへの伝え方
 2) 保護者との協力
 3) 入院する医療機関(病棟)に伝えること

第7章 発達障害の診断後の支援
① 診断に至るまでの検査の流れ
② 保護者の気持ちと障害受容への過程
③ 診断を受けたときの保護者への対応
④ 看護師としての役割

著者・監修者紹介


 コラム
① 「ほめる」と「認める」
② 看護師の経験談─適切ではない対応から,どのように対応すべきかを説明する
③ 駐車場での事故例
④ 子どもにとって安全な環境の提案
⑤ 看護師の失敗談
⑥ 子どもの診断結果を保育者や家族にどう伝えればよいのかについて悩む保護者への対応

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序文

はじめに

 「子どもが泣き止まないことに怒った医師は,目の前で子どものカルテを破り,『連れて帰れ』と怒鳴りました.」
 これは,4歳の自閉症の男児を育てている母親が私に相談してきた際の言葉です.何らかの理由から,この子はパニックを起こしたのでしょう.その子どもに対して,医師が苛立っている様子が目に浮かびます.この出来事は15年前のことでしたが,しかし,発達障害のある子どもを育てている保護者は,今でも,「医療機関を受診することにとても困っている」と言います.子どもが騒いだり,物を壊したりして,二度と行けない病院やクリニックがあると言う保護者も大勢います.
 私は医療現場で,このような子どもたちがどのように対応されているかを知りたくて,さまざまな職種の医療スタッフに尋ねてきました.先日,あるベテランの小児科看護師が「じっとしていない子どもは数人で押さえつける」と当たり前のように言いました.そのことは私にはとても衝撃でした.ベテランで,多くの小児科看護師を育ててきた実績のある人でさえ,発達障害の子どもへの対応が間違っているのかと…….
 これまで私の研究室では,幼稚園や保育園の保育者が発達障害児をどのように導けばよいか,家庭で家族がどのように対応すればよいかについて研究し,それらをわかりやすい表現で書籍にしてきました.おかげさまで,多くの保育者や保護者が本や絵カードを手にしてくれました.多少ですが,発達障害のある子どもたちが「わかる生活」をおくっていけるサポートができました.
 しかし,子どもであれば必ずかかわる医療の現場では,まだまだ適切な対応方法が知られておらず,子どもや保護者が「困っている状況」「苦しい状況」が続いています.もちろん,それによって医師や看護師,医療スタッフも困惑しています.医療現場に来て,泣き叫ぶ子どもたち,動きまわる子どもたち,逃げ出す子どもたち,口を開かない子どもたちは,それなりの理由があります.その理由をふまえたうえでの対応が望まれます.
 とにかく,看護師をはじめとして,多くの医療スタッフに知ってほしいと思っています.その思いで,この本をつくりました.本書は,発達障害のある子どもの受診に関して研究を進め,筑波大学で博士号を取得した浜松医科大学医学部看護学科の坪見利香先生の研究成果が基礎になっています.それに,発達障害児の保育と家族支援のスペシャリストである筑波大学医学医療系の水野智美先生の知見が加わり,全体が構成されています.
 本書はかわいいイラストがたくさん使われており,とても平易な言葉で書かれています.つまり,読む人に親切に,わかりやすく書かれています.わかりやすくするために「はっきり,短く,具体的に」という方針で構成してあります.この「はっきり,短く,具体的に」こそが,発達障害のある子どもに対するかかわり方の基本中の基本なのです.この本を読めば,わかった気持ちになるのではなく,看護師や医療スタッフがどうしたらいいかが本当にわかります.それは,どういう気持ちで接すればいいかという精神論や観念論が書かれているのではなく,発達障害のある子どもとのかかわりに必要な知識と技術が具体的に書かれているからです.
 看護師をはじめとする,多くの医療スタッフがこの本を読んでくださり,医療の現場での対応が変化していくことを願っています.
 最後になりましたが,株式会社診断と治療社の編集部の皆さんには,本の企画,構成,編集の段階でたいへんお世話になりました.心より感謝申し上げます.

2020年12月
監修者 徳田克己