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書籍詳細

糖尿病学2021診断と治療社 | 書籍詳細:糖尿病学2021

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院院長

門脇 孝(かどわき たかし) 編集

東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科教授

山内 敏正(やまうち としまさ) 編集

初版 B5判 並製 172頁 2021年05月28日発行

ISBN9784787825070

定価:10,450円(本体価格9,500円+税)
  

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日進月歩の糖尿病学のなかでも特に日本人研究者の研究を取り上げ,専門的に紹介したイヤーブック.今年も基礎研究から臨床・展開研究まで,この1年の進歩が18編の論文に凝縮されている.これに加え,2020年Claude Bernard賞受賞の栄誉を受けた編者による巻頭論文(特別企画)では,そのinnovative leadershipを讃えられた一連の革新的研究のこれまでと現在の課題を解説.糖尿病研究者のみならず一般臨床医にとっても必読の書.

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目次

 口絵
 序文
 執筆者一覧

特別企画:Claude Bernard賞を受賞して
[門脇 孝]
■糖尿病研究を始めたきっかけ
■インスリン受容体とIRS-1/IRS-2を中心とするインスリン作用・インスリン抵抗性の研究
■肥満によるインスリン抵抗性と併発症の発症におけるアディポネクチンとアディポネクチン受容体(AdipoR)の研究
■日本人の2型糖尿病遺伝子の研究
■研究は真実を追い求める長い旅

基礎研究

 1.免疫拒絶に抵抗性をもつ機能的なヒト膵島オルガノイドの作製
[吉原栄治]
■はじめに
■幹細胞より機能的膵島作製
■免疫寛容性の付加
■将来の展望

 2.妊娠中の食物繊維摂取と胎児の代謝
[渡辺啓太,西田朱里,宮本潤基,木村郁夫]
■はじめに
■母体の腸内細菌叢変化が子どもの将来的な健康へ与える影響
■妊娠期の腸内細菌叢が子どもに与える影響
■母体由来短鎖脂肪酸による胎児発達への影響
■母体の食物繊維摂取による胎児への影響
■妊娠中のプロピオン酸摂取による胎児への影響
■おわりに

 3.体内に存在する老化細胞の同定とその動態の解析
[城村由和,大森徳貴,王 徳瑋,中西 真]
■はじめに
■細胞老化とは
■細胞老化と糖尿病
■p16Ink4a陽性老化細胞の可視化マウスの作製
■p16Ink4a陽性老化細胞の体内動態と性質
■p16Ink4a陽性老化細胞除去によるNASH病態の改善
■おわりに

 4.糖尿病患者由来のiPS細胞を用いた動脈硬化抑制因子の発見
[豊原敬文,阿部高明]
■はじめに
■糖尿病患者由来iPS細胞を用いた動脈硬化抑制候補遺伝子AADACの発見
■小胞体内エステラーゼAADACの細胞内脂質代謝における役割の解明
■動脈硬化モデルマウスを用いたAADACのin vivoでの役割の解明
■考察および今後の展望
■おわりに

 5.脂肪細胞におけるインスリン依存性糖代謝の速度論的トランスオミクス解析
[大野 聡,黒田真也]
■はじめに
■インスリン刺激下の脂肪培養細胞に対する速度論的トランスオミクス解析の概要
■おわりに

 6.脂肪細胞のPDK1-FoxO1経路と代謝異常
[細岡哲也,小川 渉]
■はじめに
■脂肪細胞におけるインスリン抵抗性と代謝異常,NAFLD/NASH
■脂肪細胞におけるインスリンシグナルとインスリンの生理作用
■脂肪細胞におけるPDK1経路障害による代謝異常
■脂肪細胞におけるFoxO1活性亢進による代謝異常
■脂肪細胞のPDK1-FoxO1経路異常による全身性インスリン抵抗性のメカニズム
■脂肪細胞のPDK1-FoxO1経路異常によるNASHのメカニズム
■代謝異常の病態における肥満と脂肪萎縮との共通性
■おわりに

 7.腎臓におけるケトン体代謝
[久米真司,富田一聖,前川 聡]
■はじめに
■糖尿病性腎臓病における課題
■腎臓におけるエネルギー代謝の特徴とケトン体代謝
■障害腎におけるエネルギー代謝変容
■ケトン体投与による糖尿病性腎臓病改善効果の可能性
■SGLT2阻害薬の腎保護効果におけるケトン体の役割
■Hmgcs2欠損マウスを用いた検討
■ケトン体のシグナル制御分子としての役割―mTORC1抑制効果―
■ケトン体によるポドサイト保護効果
■その他の腎臓病に対するケトン体の腎保護効果
■全身エネルギー代謝維持における腎ケトン体産生の役割
■臓器局所の組織障害修復におけるケトン体の意義
■おわりに

 8.アディポネクチン受容体の新たな構造
[岩部美紀,岩部真人,山内敏正,門脇 孝]
■はじめに
■AdipoRの同定と機能
■AdipoRの立体構造の解明
■AdipoR1の新しい構造と機能
■おわりに

 9.腸内細菌による食後血糖調節機構の検討
[戸田郷太郎,植木浩二郎,門脇 孝,山内敏正]
■腸内細菌叢の研究
■食後の代謝調節
■インスリン抵抗性の増悪因子としてのdysbiosisと慢性炎症
■マクロファージの細胞内シグナルと代謝
■免疫による食後血糖調節の可能性
■腸管由来のシグナルによる食後血糖調節
■免疫由来のシグナルによる肝糖新生の抑制
■IL-10によるインスリン感受性の変化
■おわりに

臨床研究・展開研究

10.「糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント」について
[荒木栄一]
■はじめに
■本コンセンサスステートメントの意義ならびに構成
■糖代謝異常と循環器疾患の診断
■糖代謝異常と循環器疾患の予防と治療
■紹介基準

11.糖尿病患者の栄養食事指導のコンセンサスステートメント
[庄嶋伸浩,山内敏正]
■はじめに
■目標体重および総エネルギー摂取量の設定
■炭水化物の摂取量
■タンパク質の摂取量
■管理栄養士による栄養食事指導
■おわりに

12.CDEJ発足から20年を迎えて
[寺内康夫]
■はじめに
■日本糖尿病療養指導士認定機構設立まで
■CDEJ発足から20年を迎えて
■糖尿病チーム医療の意義と変遷
■糖尿病療養指導士に求められる役割
■CDEJの未来
■日本における療養指導制度の未来
■おわりに

13.COVID-19と糖尿病
[鈴木 亮]
■はじめに
■糖尿病の有無と感染症全般のリスク
■糖尿病とSARS-CoV-2感染リスク
■糖尿病とCOVID-19重症化リスク
■血糖コントロールとCOVID-19重症化
■インスリンとCOVID-19
■メトホルミンの使用とCOVID-19
■DPP-4とコロナウイルス
■おわりに

14.統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド
[佐倉 宏]
■はじめに
■予防ガイドの構成・概要
■肥 満
■メタボリックシンドローム
■糖尿病
■診療連携
■おわりに

15.劇症1型糖尿病:臨床を中心とした20年のあゆみ
[今川彰久]
■はじめに
■劇症1型糖尿病の提唱
■全国調査と診断基準
■合併症と併発疾患
■疫 学
■重症例の解析
■PD-1抗体薬に関連して発症する劇症1型糖尿病
■劇症1型糖尿病の画像診断
■成因に関する研究
■おわりに

16.GLP-1受容体作動薬アップデート
[藤澤太郎,窪田創大,高見和久,矢部大介]
■はじめに
■GLP-1受容体作動薬の分類と特徴
■GLP-1受容体作動薬の心血管イベントリスクに対する効果
■GLP-1受容体作動薬の腎イベントリスクに対する効果
■GLP-1受容体作動薬の使用上の注意点
■経口投与可能なGLP-1受容体作動薬
■おわりに

17.J-DOIT3腎症サブ解析
[植木浩二郎]
■はじめに
■J-DOIT3の試験デザインと患者背景
■J-DOIT3の腎アウトカムと危険因子コントロールの影響
■J-DOIT3における腎機能と危険因子コントロールの影響
■J-DOIT3から得られた糖尿病性腎症の発症・進展予防の要点

18.日本人DKDの臨床像:JDDM研究を中心として
[横山宏樹,荒木信一]
■はじめに
■NADKDの頻度と動向
■NADKDの生命予後
■NADKDの心血管疾患発症リスク
■NADKDの腎機能低下予後
■rapid declinerの特徴
■おわりに

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序文

序 文

 2021年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により,日本糖尿病学会年次学術集会は完全WEB形式での開催となったが,この時期に合わせ従来通り「糖尿病学」をお届けできる運びとなった.

 さて,この一年も様々なテーマが話題となった.ヒトの膵島と同じ機能をもちながら免疫拒絶に抵抗性をもつ膵島オルガノイドの作製,妊娠中の母親の食物摂取が母体の腸内細菌叢の変化を介して胎児の代謝や将来の健康へ与える影響の研究,その蓄積が糖尿病発症に大きくかかわる老化細胞の同定とその動態の解析,糖尿病患者由来のiPS細胞を用いた動脈硬化抑制因子の発見,など,新しい話題を含め,毎年のことながらそのテーマは多岐にわたる.本書ではこれらのテーマにかかわった日本人による研究の成果を取り上げており,今年は18編の論文をこの一冊に収載することができた.

 『糖尿病学2021』では,上記の話題に加えて,COVID-19と糖尿病に関する時宜にかなった検討,糖尿病性腎臓病におけるケトン体の腎保護機構を含む腎臓におけるケトン体代謝に関する研究,経口投与可能となったGLP-1受容体作動薬とその意義についての考察,等々非常に興味深いテーマも取り上げている.また,新たに公表された「糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント」「糖尿病患者の栄養食事指導のコンセンサスステートメント」の背景や要点,さらに発足から20年を迎えた日本糖尿病療養指導士の認定制度のこれまでの歩みと将来展望についても収載した.そのほか「基礎研究」から「臨床研究・展開研究」まで素晴らしい価値ある成果であり,いずれも研究者の熱意と英知がこめられた論文ばかりである.
 なお昨年,編者の一人である門脇が受賞したClaude Bernard賞についても,この機会に本書のトピックスの一つとして寄稿した.

 最後に,パンデミックのもと医療関係者に大きく負荷のかかる困難な状況にもかかわらず,できるかぎり新しい情報を発信するため非常に短い期間でご執筆をいただいた著者の先生方に深謝申し上げる.

令和3年4月
門脇 孝
山内敏正