産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2019年 Vol.86 No.10 2019-09-19
どうする 再発婦人科がん

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
企画 渡部 洋
1.子宮頸癌(化学)放射線療法後再発 / 石川光也
2.子宮体癌ホルモン療法後再発 / 山上 亘・他
3.子宮体癌化学療法後再発 / 大亀真一・他
4.卵巣癌プラチナ抵抗性再発 / 温泉川真由
5.卵巣癌ベバシズマブ投与後再発 / 庄子忠宏・他
6.卵巣顆粒膜細胞腫再発 / 須藤 毅
7.外陰癌再発 / 有吉和也
8.高齢者再発 / 吉田好雄
9.がん性腹膜炎 / 喜多川 亮・他
10.肺再発 / 水野美香
11.婦人科がん肝転移に対するカテーテル治療 / 関 明彦
12.骨再発 / 高橋俊二
13.婦人科がん脳転移に対する定位放射線治療 / 松永成生・他
14.婦人科がんの髄膜癌腫症(髄膜再発) / 高橋英明
15.再発婦人科がんに対する骨盤内臓全摘術 / 向井俊貴・他
連載
働き方改革がはじまる! 第2回
宿日直許可基準と産婦人科勤務医師の就労状況 / 中井章人
若手の最新研究紹介コーナー
EEG changes and sleep/wakefulness behaviors in Pregnancy Associated Hypertensive mice / 小宮(阿部)春奈
来たれ! 私たちの産婦人科 第34回
高知大学医学部産科婦人科学講座 / 樋口やよい
原著
当院における子宮頸癌に対する初回放射線単独治療の成績 / 國島温志・他
症例
外陰に生じたlipomatous angiomyofibroblastomaの1例 / 萬代彩人・他
子宮筋腫治療既往を有する婦人において9年後に子宮平滑筋肉腫と診断された1例 / 伊東孝晃・他
異なる経過をたどった卵巣漿液性境界悪性腫瘍2症例の検討 / 佐藤友里恵・他
がん治療の最終目標は長期生存の達成であり,この点から婦人科腫瘍医に課せられた最大の難題は再発がんへの有効な対応であろう.ひと昔前までの「再発」とは,がん患者にとって絶望的な意味合いをもつ宣告であったが,近年は手術機器の進歩に伴う安全な拡大手術手技の確立,分子標的薬を主とする新規抗悪性腫瘍薬の登場,画像診断の進歩による安全性かつ有効性の担保された新規放射線治療法の登場,さらには侵襲性が軽減された効果的なインターベンション治療の進歩などによって,再発がんの治療は新たな展開を迎えている.また,近年はevidence—based medicineの概念が広く普及し,婦人科がんにおいても科学的にデザインされた臨床研究成績に基づいた治療適用が行われているものの,初発から再発さらに再々発と病態が変化するにしたがって,治療有効性に関する高グレードのevidenceが認められなくなるため,結果的に臨床経験に則った治療選択を余儀なくされる場合も多い.さらに希少婦人科がんおよび再発病態においては,治療有効性の科学的検証のための設定症例数が担保されないため,臨床研究すら行われていない.一定の既往治療歴をもつ再発がんにおいては,積極的な治療適用を行うよりも,全身状態の効果的な管理を目的としたbest supportive careが予後を改善することは臨床研究によって科学的に実証されているが,日常臨床では患者や患者家族は可能な限りの治療介入を希望されることが多いのも事実である.
そこで本号では,再発婦人科がんの臨床対応に焦点を絞り,婦人科腫瘍医が日々治療に苦慮される再発病態の治療と管理について,evidenceのみでなくご自身の治療経験を含めて総合的に解説をいただく特集を企画した.また,読者に再発婦人科がん治療に対しての理解を深めていただくために,種々の再発条件に応じた婦人科がんの治療と管理については婦人科腫瘍医の先生方に解説をお願いし,婦人科がんに限定されない固形がんの再発病態である,がん性腹膜炎,肺,肝,骨,脳および髄膜といった諸臓器への転移・再発病巣への治療と管理については,一般的に産婦人科医が行っている治療以外の治療オプションを主体に,他科スペシャリストの先生方を交えて産婦人科医にもわかりやすい解説をいただくようお願いした.
本特集号が,再発婦人科がんと日々向き合う産婦人科医の道標となり,さらには再発がんと闘う婦人科がん患者のquality of lifeの維持と長期予後改善の手助けとなれば幸いである.
(東北医科薬科大学産婦人科 渡部 洋)