小児科診療
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「増刊号」・「特大号」を年各1冊発行.読者の厚い信頼に応える内容で日常診療に不可欠な情報満載.
連載「Photo Quiz」ではビジュアルに画像診断のポイントを解説.
2016年 Vol.79 No.8 2016-07-12
小児救急で求められる単純X線写真

定価:本体2,700円+税
序 文 /河野達夫
Ⅰ 総 論
適した撮影法と指示オーダー /河野達夫
Ⅱ 頸部・上気道
上気道狭窄・閉塞 /近藤睦子・他
気管,気管支異物の単純写真所見 /藤川あつ子・他
副鼻腔の単純写真 /谷 千尋
Ⅲ 胸 部
肺炎の見つけ方 /河野達夫
エア・トラッピングと合併症 /武藤絢子・他
正常胸腺の見分け方 /齊藤美穂子
胸水貯留 /市田和香子・他
縦隔陰影の拡大と,縦隔に重なる異常陰影 /中川基生・他
Ⅳ 腹 部
腹部単純X線写真の限界を知る /河野達夫
小腸閉塞・イレウス /河野達夫
腹膜気腫(気腹)と消化管穿孔 /山口善道
腹部の石灰化病変 /細川崇洋・他
Ⅴ 骨軟部・その他
虐待を疑わせる所見 /古川理恵子
小児科医が知るべき骨折 /森田有香・他
悪性疾患と単純写真 /半田淳比古・他
論 説
なぜ,論文を書くのか? /石和田稔彦
症例報告
出生後早期の吐血の遷延から新生児期に先天性第Ⅶ因子欠乏症と診断した1例 /小林久人・他
症例報告
Guillain-Barré 症候群との鑑別に苦慮した身体表現性障害の1例 /千葉浩介・他
河野達夫 /東京都立小児総合医療センター放射線科
先哲たちは「子どもはよくなるのも早いが,悪くなるのも早いから気をつけろ」と,若き研修医たちを戒めてきたものである.これは医療が進んだ現在でも,小児医療を担う医療者にとっては,今なお普遍的な教訓として認識され続けている.そのため小児臨床医療では,慢性疾患の管理が大きな役割を占める成人医療と比較して,コンビニ外来などと揶揄されながらも,救急医療が担う役割は非常に大きいと考えられている.
小児救急医療を担う医療施設は,小児病院を筆頭として大学病院,標榜科として小児科を有する地域の中核病院,小児科常勤医が不在の小規模病院,そして市中の医院など多岐にわたる.その中で中規模以上の病院においては,画像診断は欠くことのできないものである.一方,これらの中で小児画像診断を専門とする放射線科医が常勤している施設はごく限られる.特に時間外に施行された画像検査を放射線科医が読影する施設は例外的であり,大部分は小児科臨床医や救急医に委ねられているのが現状である.
本特集の主題は「小児救急で求められる単純X線写真」である.内容は「小児救急医療の現場で遭遇する頻度が高い疾患」において,「小児科臨床医や救急医が知っていると役立つ画像所見」で構成されている.小児病院に籍を置く筆者が,日頃小児ERの画像診断を担う中で,また研修中の小児科医に指導する中で必要性を痛感した項目を集めている.日常診療で用いられる画像診断のモダリティーは多岐にわたるが,今回は施行される頻度が高い単純写真に限定し,小児放射線科医に解説を依頼した.本特集の読者対象としては,実際に小児救急医療を第一線で担う若手小児科臨床医,後期研修医,開業医を想定している.
本特集は,従来の教科書にみられるような臓器別の系統だった構成や,症状・症候別に画像診断の要点を記載する方式は採用していない.小児科臨床医が必要とする内容に限定し,それらを胸部・腹部・骨軟部の順に配列しただけである.一見無秩序な構成に見えるが,最初から最後まで読み通すことにより,小児救急医療の現場で役立つ知識が自然と頭に入ってくるように工夫している.また,画像診断としては重要な項目であっても,小児科臨床医にとって不要と思われる内容は,あえて大胆に割愛している.臨床医の利便性を最優先に考えての対応である.
各項目は,小児画像診断を第一線で担っておられ,小児科医が知るべき内容や陥りやすい盲点などを熟知している小児放射線科医の先生方に執筆をお願いした.日頃から多忙をきわめるところ,無理な依頼に快く承諾していただいた先生方に,この場をお借りして感謝申し上げる次第である.いずれも力作揃いの内容に仕上がっており,明日からの診療の現場にすぐに役立つ内容であると自負している.
読者が本特集で学んだ内容が小児救急医療現場で役立ち,子どもたちの健やかな成長に寄与することができれば,言外の喜びである.