小児科診療
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2016年 Vol.79 No.10 2016-09-12
日本発アレルギー研究最新情報

定価:本体2,700円+税
序 文 /斎藤博久
Ⅰ 食物アレルギー・薬物アレルギー
小麦アナフィラキシーに対する経口免疫療法 /佐藤さくら・他
インフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシーはワクチン成分に対するIgE抗体が原因であった /長尾みづほ
好酸球性消化管疾患の白人とアジア人の間にみる人種差 /伊藤 淳・他
経皮感作による食物アレルギー:成人例の特徴 /猪又直子
Ⅱ アトピー性皮膚炎
マイクロバイオームの異常と黄色ブドウ球菌の増殖がアトピー性皮膚炎を誘導する /小林哲郎
JAK阻害薬のアトピー性皮膚炎への効果の検証 /天野 渉・他
アレルギー性結膜炎の診断における涙液ペリオスチン測定の有用性 /岡田直子・他
アトピー性皮膚炎患者から非侵襲的に採取した角層のタンパク質網羅的解析 /戸倉新樹
新生児期からの保湿剤定期塗布はアトピー性皮膚炎を予防する /堀向健太
ピキア酵母を用いて作製した組換え汗抗原の汗アレルギーにおける評価 /菅 崇暢・他
Ⅲ 喘息・鼻炎
好酸球性副鼻腔炎における黄色ブドウ球菌プロテインAの新しい役割 /岡野光博
呼気NOと血清ペリオスチン測定によりステロイド低感受性喘息を同定する /長崎忠雄・他
スギ花粉症に対する新規経口免疫療法の安全性と有効性 /村上大輔
初回喘鳴乳幼児における反復喘鳴,喘息の予測因子 /菅井和子・他
Ⅳ 基礎研究
重症慢性蕁麻疹患者においてはMas-related gene X2を発現している皮膚マスト細胞数が増加している /岡山吉道・他
マスト細胞による新規気道炎症抑制機構 /森田英明・他
体内時計を標的としてアレルギー症状を緩和する /中尾篤人
論 説
育児の変遷 /松尾宣武
原 著
味覚障害,性腺機能低下症を呈する小児2例への亜鉛製剤の投与の検討 /西山宗六・他
斎藤博久 /国立成育医療研究センター副研究所長
「最近は,日本人でも英文で論文を発表することが多いので,和文学会雑誌を読んで最新情報を把握することができず,といって,英文原著をスラスラ読むほどの英語力がないので困っている」という実地医家からのご意見をいただく機会があった.そこで,本特集においては,編集者がAssociate Editorを務めている米国アレルギー学会雑誌,Journal of Allergy and Clinical Immunology(アレルギー専門の医師・研究者以外にはあまり知られていないが,インパクトファクターは12.485で,Journal of Experimental Medicineよりも上位である)ほか,一流英文誌に最近,発表されたアレルギー学に関する論文の著者に対して,あまり英文論文を読み慣れていない実地医家の先生方に向けて,その論文をなるべくわかりやすく記載して紹介していただくよう依頼した.
その結果,17の最新英文論文についての紹介記事原稿が寄せられた.それらの原稿を拝読して感じたことは,これらの論文紹介記事は,編集者の期待をはるかに上回る,充実した内容になっているということであった.直訳記事ではないので,かみ砕いて解説していただいていることはもちろん予想していたが,著者以外にはわからないであろう研究を始めるに至った背景,動機,論文の作成に至るまでの経緯,サイドストーリーなどが記載されており,読んでいて大変興味深かった.あまり英文論文を読み慣れていない実地医家の先生方のみならず,これから英文論文投稿を目指す若い先生方にとっても(アレルギー専門でなくとも)大変有益な情報であり,ぜひ,熟読いただければと願う.
わが国の医師の臨床力や研究者の能力は欧米と比較して決して劣っているわけではないが,また,少しずつ改善傾向はあるが,例えば,上記の米国アレルギー学会雑誌の日本発の掲載論文数は,北アメリカ,欧州,豪州と比較してまだまだ著しく少ない.英語力の問題は大きいが,それ以上に英文論文で成果を発表しようとするモチベーションがあまり大きくないことのほうが問題であるように思う.若い小児科医には,身近な先生方による本特集を読んで,勇気をもらい,モチベーションを高め,世界に成果を発表するよう心がけるようにしていただきたいと切望する.