小児科診療
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2017年 Vol.80 No.2 2017-01-13
抗菌薬療法UP-TO-DATE

定価:本体2,700円+税
序 文 /星野 直
Ⅰ.抗菌薬療法の基礎知識
小児感染症における抗菌薬療法の基本的概念 /尾内一信
作用機序-抗菌薬のPK/PDの特徴と投与方法 /岡田賢二・他
副作用 /佐藤吉壮
Ⅱ.Hibワクチン,結合型肺炎球菌ワクチンのインパクト
侵襲性感染症 /西 順一郎
非侵襲性感染症 /内藤幸子
Ⅲ.抗菌薬療法の実際
急性咽頭扁桃炎 /黒木春郎
細菌性肺炎 /阿部克昭
非定型肺炎 /山崎 勉
中耳炎・副鼻腔炎 /保富宗城
細菌性腸炎 /松原啓太
尿路感染症 /古市宗弘・他
皮膚感染症 /大塚岳人
敗血症・菌血症 /大日方 薫
細菌性髄膜炎 /新庄正宜
感染性心内膜炎 /丹羽公一郎
骨髄炎・関節炎 /深沢千絵
小児結核 /徳永 修
新生児感染症に対する抗菌薬投与の考え方と背景 /戸石悟司
症例報告
ワクチン株による麻疹を発症した1例 /横山宏司・他
星野 直 /千葉県こども病院感染症科
2008年にインフルエンザ菌b型ワクチン,2010年に肺炎球菌結合型ワクチンが導入され,2013年の定期接種化を経て接種率が大きく向上しました.両ワクチンの普及により,侵襲性感染症を中心にわが国の小児感染症の疫学に大きな変化が生じ,ワクチン導入前に重症感染症に苦しんできた子どもたち,そして治療に携わる医師に恩恵をもたらしました.しかし,ワクチンでは予防できない数多くの細菌感染症が存在するため,今後も抗菌薬療法が細菌感染症の治療における中心的役割を担う点に変わりはありません.
ペニシリン耐性肺炎球菌,βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌が増加し,肺炎や中耳炎などの小児科医にとって身近な感染症の難治化が問題となってから20年ほどが経過しました.その後も,市中感染症におけるマクロライド耐性肺炎マイコプラズマや市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,医療施設関連感染症における基質特異的拡張型βラクタマーゼ産生菌,AmpC型βラクタマーゼ過剰産生菌,カルバペネム耐性腸内細菌など,様々な耐性菌の出現,増加がみられています.2016年4月に厚生労働省により薬剤耐性対策アクションプランが策定されたことも記憶に新しく,耐性菌が社会問題化しつつあります.
一方で,新規抗菌薬の開発状況に目を向けると,最近10年間で発売された抗菌薬は少なく,特に小児適応を有するものとなると数えるほどしかありません.これは,小児科医が限られた抗菌薬を効率的かつ効果的に用いて,耐性菌感染症に対峙していかなくてはならないことを意味しています.また,抗菌薬を末長く使用していくためには,原因菌の耐性化を防ぐような使い方の工夫も必要です.
このような現状において,抗菌薬療法に関する理解を深めることを目的に本特集を企画しました.特集の中では,抗菌薬に関する基本的な知識から原因菌の疫学動向をふまえた治療の実際まで,up-to-dateな情報を織り交ぜながらご専門の先生方にご解説いただきました.本書を通読することで,多くの小児科医が自信をもって感染症治療に臨むことができるようになることを期待しています.
最後に,お忙しいなか貴重な原稿をご執筆いただいた著者の先生方に深く感謝申し上げます.