小児科診療
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連載「Photo Quiz」ではビジュアルに画像診断のポイントを解説.
2017年 Vol.80 No.11 2017-10-12
小児科エコー活用術

定価:本体7,500円+税
序 文 /堤 義之,山岸敬幸
Ⅰ.超音波検査を始めるにあたって
知っておきたい超音波技術の基本 /浜田聡明
病変と間違えやすい正常変異について /佐藤通洋
日常診療で遭遇するアーティファクト /大熊 潔
知っておきたい超音波のサイン /金川公夫
小児超音波検査の基準値(いわゆる正常値)と正常像 /北見昌広
Ⅱ.体幹・表在
肝の解剖と超音波検査法 /渡邉浩美・他
肝ARFI /富田紘史・他
小児肝疾患(胆道閉鎖症・胆道拡張症・肝炎など) /余田 篤
虫垂炎と腸重積 /田波 穣
腸回転異常と中腸軸捻転 /島貫義久
Meckel憩室・消化管重複・腸管ポリープ /西川正則
その他の腸管疾患 /細川崇洋・他
尿路奇形 /宮坂実木子
腎囊胞性疾患 /岡本礼子・他
停留精巣・移動性精巣,陰囊水腫・精索水腫,鼠径ヘルニア /青木英和・他
女児生殖器 /髙谷あゆみ
腹部腫瘤の超音波診断 /小熊栄二
肥厚性幽門狭窄症 /山口善道
頸部腫瘤 /佐藤宏朗
脳 /有光威志
脊 髄 /堤 義之
骨・軟部 /宮嵜 治
胸水・腹水・後腹膜液体貯留 /野坂俊介
Ⅲ.心 臓
心臓の解剖と心臓構造異常のエコー:初級編 /安原 潤・他
心臓の解剖と心臓構造異常のエコー:上級編 /前田 潤・他
心エコーの基本的計測と心機能 /齋木宏文・他
小児心エコーのスペックルトラッキング法 /高橋 健
3D心エコー:先天性心疾患の臨床にどのように用いるか? /瀧聞浄宏
胎児心エコー検査の基礎 /河津由紀子
各種心疾患
①心室中隔欠損症 /黒嵜健一
②心房中隔欠損症 /上田秀明
③動脈管開存症 /星野健司
④房室中隔欠損 /齋藤美香・他
⑤Fallot四徴症・肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損 /森 善樹
⑥両大血管右室起始 /鎌田政博
⑦完全大血管転位症・修正大血管転位症 /大木寛生
⑧三尖弁閉鎖症 /上田知実
⑨純型肺動脈閉鎖症 /片山博視・他
⑩総肺静脈還流異常症・部分肺静脈還流異常症 /増谷 聡
⑪大動脈縮窄症・大動脈弓離断症 /小野 博
⑫左心低形成症候群 /新居正基
⑬僧帽弁疾患 /豊野学朋
⑭三尖弁疾患・Ebstein病 /島田衣里子・他
⑮肺動脈弁狭窄症・閉鎖不全症 /桃井伸緒
⑯大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症 /籠手田雄介・他
⑰感染性心内膜炎と心膜炎 /塩野淳子
⑱心筋症 /加藤雅崇・他
⑲冠動脈エコーと川崎病 /宮田功一・他
堤 義之 /国立成育医療研究センター放射線診療部
山岸敬幸 /慶應義塾大学医学部小児科
超音波検査は,小児科診療では成人領域以上に有用です.他の画像診断法と比較して,骨や空気などの存在により観察可能範囲が制限されるといった短所はあるものの,電離放射線被曝を伴わないこと,空間分解能が高いこと,脂肪が少ない小児でも臓器の輪郭が明瞭に認識できること,鎮静を行わなくても検査が可能であることなど多くの長所があり,小児救急疾患の診断の際にも非常に有用です.検査装置としては,画像診断機器の中では比較的低価格なものもあり,ランニングコストも低く,個人で開業されている,もしくは開業を考えておられる先生方にも,長期にわたり役に立つ技術として魅力のあるものとなっています.そのためか,画像診断法の中で最も勉強したいモダリティーに,超音波検査をあげる小児科医が多いのが現状です.
平成16年に初期臨床研修制度が始まってからは,初期研修の間に超音波検査を経験する先生が増えてきました.しかし,苦手分野や自信がない領域があったり,初期研修ではなかなか経験できない意外なピットフォールがあったり,診断に対する一抹の不安をもってプローブを握っていらっしゃる先生も多いようです.比較的基本的なことであるフォーカスやSTC(sensitivity time control)を適正に調整したり,ドプラを行う際の注意事項,体位変化の重要性などについては,教わる機会が少ないようで,これらの調整を行うことによって,より診断に有用な画像が得られることに驚かれる先生もたくさんいらっしゃいます.
そこで今回の特集では,基礎的な事項を含め,多くの先生方に役立つ,ハンディーで検査の合間にすぐ参照できるような参考書があるとよいと思い,企画させていただきました.小児科医が知っておいたほうがよいと考える,超音波についての全般的な基礎知識をはじめにまとめ,各臓器の検査に必要な基礎知識と代表的な疾患については,腹部エコーを中心とした「体幹・表在」の項と,今や超音波検査が診断の中心となっている「心臓」の項に分けて,それぞれ第一線の先生方からわかりやすくご解説いただきました.技術面で有用な知識や,正常か異常か迷うようなアーティファクトや正常変異など,ピットフォールについても,随所に含めていただきました.また,近年,進歩が著しい「心臓」の項では,基本事項に加えて,最新の技術や知見についても含めていただきました.
本号は,小児科医が超音波検査を実施・活用するためのエッセンスが凝縮した1冊として完成しました.皆様の日常臨床に,この1冊が役立つことを心から願っています.