小児科診療
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2018年 Vol.81 No.12 2018-11-13
難しくない 小児腎領域の難病診療

定価:2,970円(本体価格2,700円+税)
序 文 /石倉健司
Ⅰ.難病対策と小児腎疾患
これからの指定難病,小児慢性特定疾病対策 /五十嵐 隆
小児腎領域の小児慢性特定疾病,指定難病 /飯島一誠
小児腎疾患の移行期医療 /本田雅敬
Ⅱ.小児腎領域の難病診療の改善に向けた取り組み
小児の正確な腎機能評価 /上村 治
本邦小児腎臓病の疫学 /濱崎祐子
遺伝学的検査の実態 /森貞直哉
Ⅲ.小児腎領域の小児慢性特定疾病・指定難病
先天性ネフローゼ症候群 /綾 邦彦
バーター(Bartter)症候群・ギッテルマン(Gitelman)症候群 /野津寛大
ネフロン癆 /杉本圭相
ロウ(Lowe)症候群 /薮内智朗・他
先天性腎尿路異常(CAKUT) /原田涼子
鰓弓耳腎(Branchio-oto-renal:BOR)症候群 /稲葉 彩・他
アルポート(Alport)症候群 /中西浩一
ネイルパテラ症候群(爪膝蓋骨症候群)・LMX1B関連腎症 /張田 豊
ギャロウェイ・モワト(Galloway-Mowat)症候群 /佐藤 舞
エプスタイン(Epstein)症候群 /白井陽子・他
小児特発性ネフローゼ症候群 /濱田 陸
原 著
ロタウイルス感染症患児にみられるケトーシスの病態解析 /松永健司・他
症例報告
治療抵抗性喘息との鑑別が困難であったびまん性汎細気管支炎の小児例 /鳥山泰嵩・他
小児科診療/第81巻(2018年)総目次
石倉健司 /国立成育医療研究センター腎臓・リウマチ・膠原病科
小児腎臓病領域の疾患は,多くがいわゆる難病です.個々の患者数は少なく,原因遺伝子が徐々に明らかにされていますが,まだまだ発症機構が明らかではありません.また,治療方法が確立していないものが多く,長期療養を必要とします.したがって,小児腎臓病患者の診療に携わるには,これらの難病への理解が必須です.現在,対象疾患の診療水準の向上と対象疾病の疫学情報,治療情報や研究成果を非専門医,患者および国民に広く普及・周知に資する活動を行うことを目的に,厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)による研究「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」が精力的に行われています.
一方,「難病」という名前があるからか,これらの疾患は医療者にとっても「難しい」というイメージがあるかもしれません.しかしそのようなイメージは,医療者にとっても,そして何よりも患者さんにとっても望ましいものではありません.そこで本特集では,難病であっても,いやむしろ少なくとも小児腎臓病領域においては,難病だからこそ,近年明らかになってきた病態や診療のエビデンスをわかりやすくまとめて共有したいという趣旨から,「難しくない?小児腎領域の難病診療」という企画を立案いたしました.
できるだけ「難しくない」特集号とするために,本特集ではいくつもの工夫があります.総論部分では,本領域の第一人者である五十嵐 隆先生,飯島一誠先生にそれぞれ小児科領域全体,そして小児腎臓病領域の難病医療を俯瞰していただき,現状,課題,今後の展開・方向性を解説いただきました.また,本邦の移行医療を黎明期から牽引されている本田雅敬先生には,これらの疾患を診療するうえで避けて通れない,小児腎疾患患者の成人医療への移行について解説していただきました.また小児における正確な腎機能評価について,小児腎臓病学会の小児CKD対策委員長として長年にわたり日本人小児の腎機能評価方法の確立に取り組んできた,上村 治先生にお願いしました.さらに本邦の疫学を濱崎祐子先生に,遺伝子検査の実態についてを森貞直哉先生にお願いしました.ここまでで,難病を中心とした小児腎臓病領域の診療について,容易に総論的な理解がなされることと思います.
そして各論として,数多くの腎臓領域の難病の中から,先天性ネフローゼ症候群,バーター・ギッテルマン症候群,ネフロン癆,ロウ症候群,先天性腎尿路異常(CAKUT),鰓弓耳腎症候群,アルポート症候群,ネイルパテラ症候群・LMX1B関連腎症,ギャロウェイ・モワト症候群,エプスタイン症候群,小児特発性ネフローゼ症候群について「小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の確立」研究でそれぞれの疾患の担当者である先生方に執筆をお願いしました.したがって,最新の診断基準やガイドラインの情報を盛り込んでいただいています.さらに症例提示を設け,疾患の実際をイメージしやすくしました.
本特集により,「難しくない」小児腎臓病領域の難病診療の最新の情報がひろく共有され,最終的に患者さんに福音がもたらされることを心より願っています.