小児科診療
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2019年 Vol.82 No.2 2019-01-11
症例からみた小児集中治療

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /松井彦郎
Ⅰ.総 論
小児集中治療室にかかる日本の現状と課題 /志馬伸朗
小児集中治療と成人集中治療 /小谷匡史・他
Ⅱ.全身性病態
心停止後症候群 /神野眞輔・他
敗血症・播種性血管内凝固 /永渕弘之
急性呼吸促迫症候群 /川村 篤・他
Ⅲ.各臓器別病態
急性壊死性脳症・出血性ショック脳症症候群 /西村奈穂
二相性脳症 /制野勇介・他
溶血性尿毒症症候群・血栓性血小板減少性紫斑病 /林 拓也
重症気管支喘息発作・急性喉頭蓋炎 /伊藤友弥
気道病変 /北村真友
先天性心疾患におけるハイフローショック /黒嵜健一
劇症型心筋炎 /齋藤千徳・他
劇症肝炎・重症急性膵炎 /志村紀彰・他
Ⅳ.術後管理
脳神経外科術後管理の注意点 /林 健一郎
小児外科手術後 /小泉 沢
心臓手術(姑息手術)の術後管理 /元野憲作・他
心臓手術後(心内修復術) /多賀直行
Ⅴ.事 故
気道異物・溺水 /植松悟子
高エネルギー外傷 /賀来典之
院内急変とRRS /冨田健太朗・他
症例報告
黄色ブドウ球菌による左坐骨結節部滑膜炎,右母趾中足趾節関節関節炎を発症した14歳男子 /藤田雄治・他
豆乳によるアナフィラキシーを生じた花粉―食物アレルギー症候群の症例:多種アレルゲンコンポーネントに対する特異的IgE抗体測定の有用性 /湯田貴江・他
松井彦郎 /東京大学医学部小児科 集中治療室(PICU)責任者
小児重症患者は成人重症患者に比して患者数が少なく,重傷者の割合も低いことから患者絶対数がきわめて少ないことが知られています.これに対しては,小児重症患者は専門治療施設に集約化することで,医療資源の効率化・経験の向上・マンパワーの有効利用が要因と考えられており,結果として患者予後が改善するといわれています.一方で,わが国では小児重症患者の集約化は,依然として都市部でも地方部でも整備されておらず,小児集中治療が専門でない多くの施設で診療をせざるを得ない状況にあります.
その一方で,重症患者の頻度が少ないことから,わが国では小児集中治療に関する教育体制・学術研究に関する環境は不十分な状況が続いてきました.1990年代から少しずつ小児病院を中心とした医療機関による臨床医学が発展してきましたが,体系だった医学教育や基礎研究の実践にはいまだに至っていません.古くから少ないながらも社会的ニーズがあったにもかかわらず,小児集中治療の医学的発展はまだまだこれからだと思われます.
小児重症疾患の診療は常に発展途上であり,診断や治療も常に新たな試みや改善が行われています.成人と共通の病態生理を応用する場合もありますが,小児独自の疾患もあり,小児専門施設では様々な疾患に対して常に最新の診療が必要とされています.症例の診断・初期対応や現在の治療,そしてこれから解決しないといけない様々な課題は,いざという時に必要とされる知識であり,それらを共有することは小児診療の発展・普及のために大きな意味があると感じられます.
今回はわが国の専門施設で多くの小児重症患者を診療している先生方に,小児重症疾患で常に注目される疾患の症例を具体的にあげていただくことで,多くの小児重症患者を診療している医療者の方に,少しでも実際の診療の参考にしていただければと考え,「症例からみた小児集中治療」の特集としました.また,小児集中治療に興味のある若い医療者の方にも,具体的なイメージをもってもらうことで,次のステップの参考になればと考えています.