小児科診療
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2019年 Vol.82 No.7 2019-06-13
小児循環器領域の生涯包括遺伝医療

定価:3,080円(本体価格2,800円+税)
序 文 /山岸敬幸
Ⅰ.総 論
小児循環器領域の遺伝疾患 /大木寛生
小児循環器の遺伝学的検査 /上砂光裕
小児循環器疾患における遺伝カウンセリング /吉橋博史
Ⅱ.疾患各論
1-① トリソミーの遺伝学 /古庄知己
1-② トリソミーの生涯医療 /前田 潤
2-① Turner症候群の遺伝学 /深見真紀
2-② Turner症候群の生涯医療 /小川 潔
3-① 22q11.2欠失症候群の遺伝学 /川目 裕
3-② 22q11.2欠失症候群の生涯医療 /山本一希・他
4-① Williams症候群の遺伝学 /山本俊至
4-② Williams症候群の生涯医療 /加藤太一
5-① Noonan症候群の遺伝学 /青木洋子
5-② Noonan症候群の生涯医療 /石田秀和
6-① Marfan症候群の遺伝学 /森崎裕子
6-② Marfan症候群の生涯医療 /犬塚 亮
7 心筋症の遺伝学 /廣野恵一
8 不整脈の遺伝学 /芳本 潤
9 肺高血圧症の遺伝学 /永井礼子
総 説
小児マイコプラズマ肺炎の診断~loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法の有用性~ /角谷不二雄
症例報告
顔面半側の発汗障害,対側顔面の紅潮を契機に診断された後縦隔神経節細胞腫の1例 /藤井喬之・他
山岸敬幸 /慶應義塾大学医学部小児科
今回,「生涯包括遺伝医療」と称して,小児科医が遭遇する症候群・遺伝性疾患の中で,特に小児循環器領域でよく診療する疾患について,臨床遺伝学と生涯にわたる包括的な管理・治療を識ることを目的に企画しました.近年,医療における遺伝情報の取り扱いに関して,おもに個人情報管理の観点と遺伝学的検査法の飛躍的な進歩から,ますます高度な専門性が要求されるようになってきました.日本医学会『医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン』では,遺伝学的検査は事前に適切な遺伝カウンセリングを行った後に実施することとされており,その事前説明と同意の確認は,原則として主治医が行うこと,必要に応じて専門家による遺伝カウンセリングや意思決定のための支援を受けられるように配慮すること,と明記されています.したがって,小児循環器領域の遺伝性疾患に対しては,遺伝学の高度な専門知識を有する臨床遺伝医と,実際に管理する小児循環器医(主治医)の両者の知識と技能を統合して,包括的な診療を実践することが求められています.実際の臨床現場では,先天性ないし遺伝性疾患の正確な診断とそれに基づく情報提供を軸に,主治医が関連診療科と連携しながら疾患に対する深い理解と受容を促し,最善の治療・療育・社会的支援を提供する必要があります.そして,その役割は出生前カウンセリングから,成人期への移行期医療を含み,生涯にわたる包括的医療となってきています.
本特集では,小児循環器医が主治医になることが多い症候群・遺伝性疾患を中心に,最新の臨床遺伝学の知識と,生涯にわたる包括的な管理・治療に必要な知識について,それぞれに詳しい第一線の臨床遺伝医と小児循環器医に,同時に解説していただいています.疾患・症候群ごとに,心血管病変を含めて「生涯包括遺伝医療」に必要な知識を統合して提供することを目指しました.この企画によって主治医(小児循環器医)の診療の質が向上し,臨床遺伝医をはじめとする関連各科との円滑な連携が促進され,ますます患者さんとご家族に貢献することに役立てば,とても嬉しく思います.
注:遺伝形式の用語表記について
遺伝形式における「優性」および「劣性」について,昨今「顕性」および「潜性」と改訂すべきという意見がありますが,まだコンセンサスが確立された状況ではありません.本号では従来通り「優性」および「劣性」で統一させていただきました.